経営品質活動Quality Management Activities

2005年度
三重県経営品質賞申請書三重県経営品質賞奨励賞受賞

2005年度
三重県経営品質賞申請書

万協製薬株式会社

目 次

Ⅰ 組織プロフィール ・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅱ 8つのカテゴリー

1.経営幹部のリーダーシップ・・・・・・・・・・・・・11
1.1 経営幹部のリーダーシップ

2.経営における社会的責任・・・・・・・・・・・・・・12
2.1 社会要請への対応
2.2 社会への貢献

3.顧客・市場の理解と対応・・・・・・・・・・・・・・14
3.1 顧客・市場の理解
3.2 顧客からの意見や苦情への対応
3.3 顧客満足の明確化

4.戦略の策定と展開・・・・・・・・・・・・・・・・・17
4.1 戦略の策定と形成
4.2 戦略の展開

5.個人と組織の能力向上・・・・・・・・・・・・・・・20
5.1 組織的能力
5.2 社員の能力開発
5.3 社員満足と職場環境

6.顧客価値創造のプロセス・・・・・・・・・・・・・・24
6.1 基幹プロセス
6.2 支援プロセス
6.3 ビジネスパートナーとの協力関係

7.情報マネジメント・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
7.1 経営情報の選択と分析
7.2 情報システムのマネジメント

組織プロフィール

(1)組織価値観

①大切にしている価値観

弊社は1960年3月に神戸市にて創業しました。2005年で46年の歴史を持つ、スキンケア商品専門の企画・開発・製造メーカーです。万協製薬の社名の由来は「万人が協力して、良い製品作りを行う。」という創業時のスローガンからです。現在、資本金は4,000万円、従業員数は約70名です。

本社・工場は当初神戸市長田区にありましたが、いずれも創業35年目の1995年1月の阪神大震災にて全壊しました。震災後1年間は、他社に製品を作ってもらうことでブランドを維持し、翌年の1996年11月に三重県多気町に新工場を建設して本社・工場ともに移転しました。このときの経験が現在のスタイルのビジネスを始めるきっかけになりました。現在の敷地面積は20,000m2,延べ床面積は8,000m2です。2004年度に第一工場の隣接地に第二工場を新設し工場面積を拡張しました。弊社の行っている事業は、他社からの依頼を受けて、スキンケア製品の企画、開発、製造を行い、人々に「美と健康」を迅速、確実、安価、快適に提供することです。簡単な言葉に言い換えれば、「スキンケア製品のアウトソーシングサービス業」といえます。

日本における品目業の区分でいうと、弊社の区分は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、雑貨品の5つになります。弊社の業務の特長は、それら5つの区分のなかで、肌につける製品(スキンケア製品)のみを企画、開発、製造をしているところです。

スキンケアの製品を製造している会社は多くありますが、弊社のように医薬品から雑貨品まで多くの区分においてそのサービスを提供している会社は、全国でも数社を数えるほどです。特に、医薬品では、内服剤(かぜ薬、胃腸薬、栄養剤)が売り上げの中心であり多くの企業は、それらの需要が多く、販売価格帯も高価な製品が売り上げの中心です。そのため、国内メーカーは内服剤の製造を手がけるメーカーがほとんどです。そのため、弊社がスキンケア製品を提供することによって、他社は製品の充実を図ることが出来ます。現在、弊社は事業内容として、顧客や商品の種類によって4つのジャンルに分けて仕事に取り組んでいます。

医薬品の自社企画・開発・製造・販売
他の企業が開発した製品を弊社で製造する受託製造
自社開発による相手先メーカーブランドへの弊社技術供与のOEM製造
(この中には最近日本で増加しているチエーンドラックストア向けのストアブランドの開発・製造品も含まれます。)
化粧品・医療機器・雑貨品の企画・開発・製造

以下にそれぞれについて、ジャンルの区分けの意味を表記します。

1については、おもに弊社が神戸時代に取引のあった販売会社の販路での自社製品を表しています。弊社の歴史において、創業から35年目の阪神大震災までは、この1社の販売会社としか取引を行っていなかったことと、限定された市場での取引という点から、この販社との取引のみは、別のジャンルとしています。

2については、弊社が三重県に移転してから積極的におこなっている事業です。

現在、日本は薬事法の改正によって開発と製造が分離する傾向が進んでいます。特に2005年4月に改正法が施行になり、他社が開発した製品の受託製造が完全に解禁(2005年4月までは、1工程のみは、委託側が製造し最終製品試験も行わなければならなかった。)になりました。厚生労働省が管轄するこの業界においてもようやく他の産業と同じくファブレス化の波が、押し寄せようとしています。弊社はいち早くこの時代を予見しており、三重県立地の当初よりアウトソーシングサービス事業を事業のひとつの柱とすべく努力してきましたので、業界ではこのジャンルの先駆者となっています。治験薬、医療用医薬品、一般用医薬品の3つの区分でこのサービスを実施しています。

3については、現在、弊社の最大の売り上げ(総売上の約5割)を出しているメインジャンルです。弊社は中小企業であり創業以来長く、限定された市場(ジャンル1)にのみ製品を提供してきました。そののち阪神大震災において本社・工場・全設備の壊滅という、壊滅的打撃を受け2年間の自社開発・製造ができませんでした。その間既存のシェアは下がり続けました。また三重県での再創業も当初は、顧客・インフラ整備・従業員育成などに集中せざるを得ませんでした。よって限られた予算のなかでは、弊社が直接最終消費者に製品を届けることは賢明ではないと判断しました。それよりもお客様の声を聞き、そのニーズにあった製品を企画・開発・製造し、それをもっとも上手に販売できる先に販売していただく「技術供与型OEM製造」が、もっとも弊社の強みを活かせるジャンルと考えています。

また、日本のドラックストアがチェーンストア化の一途を辿っており、ストアブランドが求められる傾向がありますので、メーカー様だけでなくそういった新しい顧客への製品の提供を始めました。これは弊社手がけている仕事の中でも新しいものですが最終顧客に近いこれらのチェーンストアの製品を手がけることでよりニーズにあった製品の提供が可能と考えています。2004年まではメーカーOEMとストアOEMを別ジャンルとしていましたが、取引先においては、この複合ケースも増えてきたことから、2005年度からはひとつのジャンルとすることにしました。

4は、弊社で最も新しいジャンルといえます。従来弊社では、どちらかというと社名のとおり、薬の仕事が大半でした。しかしながら、数年前からそれ以外の区分でのスキンケア製品の開発依頼、特に機能性化粧品を医薬品レベルの環境で開発・製造を行なってほしいという依頼が増えてきました。これらの機能性化粧品は、現在のところ少量多品種生産品で、弊社に大量に注文がくるところまでいっていませんが、1品あたりの販売価格が高いため、確実な利益が確保できます。また、医薬品の新規開発が年々コスト高になるにくらべ、その販売単価は主要の販売先がチェーンディスカウントドラックストアであるために、年々1品目あたりの販売金額が減少しています。医療用医薬品も国民医療費の増大のため、年々コスト減をせまられています。そのためこれからは医薬品のみをターゲットとするのではなく、これらの機能性化粧品群を利益確保製品として、弊社の1つのジャンルとして独立させることとなりました。数年後にはこのジャンルが、弊社の数十パーセントの売り上げを占めるジャンルになることが、予想されています。

こういった4つのテーマを追求することにより弊社は三重県立地の9年間で約23倍の売り上げ規模を達成しています。これは、スキンケアという特定のニッチ分野に「選択と集中」を行い、顧客に対して迅速、安価、確実、快適なサービスを提供し続けてきた結果であると、思います。

弊社では顧客・市場・自社組織のニーズ変化に柔軟に対応するため、従業員一人一人が会社としての共通認識をもつ必要から企業理念を以下のように掲げています。

万協製薬株式会社企業理念

  1. 万協製薬株式会社は、社業を通じお客様と社会に貢献する。
  2. 万協製薬株式会社は、会社の発展と共に従業員の心物両面の向上を追求する。
  3. 万協製薬株式会社は、お客様のニーズにお応えする最高水準の技術と製品の提供により、業界ナンバーワンカンパニーを目指す。
  4. 万協製薬株式会社は常に誠実を旨とし、地域社会の信頼を得るよう努める。
  5. 万協製薬株式会社は独創性を持ち迅速・確実・安価・快適であることを最高の価値基準とする。

上記の経営理念は弊社の最も上位に属する考えとして、全従業員共通の誓いとして重要なポリシーとなっており弊社の行動のあらゆる礎と位置づけられています。

以上のように述べてきたなかで、弊社がもっとも大事にしている価値観は、「万協製薬は、その存在と仕事、作り出すサービスによって、本当に社会から必要とされる会社を目指す。」というものです。

②経営の変遷

万協製薬株式会社の創業のきっかけは創業者である松浦太一が昭和20年代にはじめた「薬局皮膚病研究会」です。この研究会は兵庫県の阪神地区の開局薬剤師がはじめたものです。同じ販売業にたずさわる薬剤師が経営上の悩みや販売の効果的な方法について定期的に集まり意見を交換するといったところが始まりの趣旨でした。そのうちにメーカーがつくった製品を販売するだけでなく会員で自分たちが考えた製品を製造しようという気運になりました。 これらの製品は「薬局製剤」と呼ばれ薬剤師が自らの店舗の調剤室においてのみ製造・販売することが可能な品目です。

薬局製剤の研究は月日を追うごとに熱をおび、数々の医薬品が開発・製造されそれぞれの会員の店舗で製造販売されるようになりました。

次第に販売量が増えていく中で、一カ所でまとめて製造してはどうかという話が持ち上がり神戸市長田区の旧保健所の建物を買い取り、万協製薬株式会社として新たなスタートをすることになりました。創業社長である松浦太一は年齢が一番若かったことと、建物の購入費用を自分で出したことから初代経営者となりました。

創業当初より万協製薬株式会社は製造のみに徹して販売はそれぞれの会員が属していた開局薬剤師組合の「日本薬局協励会」に一括して任せることになりました。順調に出発した万協製薬株式会社は日本の高度成長にあわせて順調に製薬会社として売り上げをのばしていきました。しかしながら呉越同舟として集まった経営者たちですのでそれぞれの薬局の経営を優先するという方針のなかで統一した企業運営に問題が出るようになり創業20年を数えるころには実質、松浦太一のみが経営の舵取りを行うようになりました。

二代目社長である松浦信男の入社は創業22年目の1982年でした。松浦信男は入社当初より販売会社一社のみに依存した経営は危険であると指摘し続けましたが、長年かかって作られた方式を変えることは難しいものでした。

創業35年目の1995年1月17日に神戸は阪神大震災という戦後最大の巨大地震に遭遇しました。長田区は特に被害がひどく万協製薬株式会社の3階建て本社・工場は1階部分が挫骨して2階以降の建物が南側に約3メートル移動するという未曾有の被害を受け書類以外のすべてのインフラを一瞬のうちに失いました。同地での再開が絶望的となるのを知った2代目経営者の松浦信男は失意に沈んだ松浦太一を説得し実質的な経営権を委譲してもらい友人であった永井達夫氏の薦めもあり自ら、氏が経営する大阪の「東洋漢方製薬株式会社」の経営者となり、設備を修復し人員を移すことで地震後半年を待たずして再開を果たしました。

翌年の1996年には神戸の跡地が神戸市の買い上げとなり資金のメドがついたことから、松浦信男が万協製薬株式会社の代表取締役社長になると共に、三重県多気町にて単独独立の工場を立ち上げることができ現在に至っています。

(3)顧客認識

①主要な顧客・市場とその特長

弊社の業務のジャンルは前記のように大きく4つに区分けされます。次にこれらのジャンルを顧客の側から分けて表記します。それぞれの顧客は、弊社からスキンケア製品の供給を求める企業といえますが、顧客は大きく分けて2つあります。

ア.委託先企業
(ジャンル2)
弊社のように工場を持ち、製品の製造権を維持しながら、その一部の工程を弊社に委託している。
イ.発売元企業
(ジャンル1,3,4)
製造権を持たず、またはスキンケアの工程を持たず、完成品として弊社の製品を仕入れて販売している。

それぞれの特長としては、ア.の企業の場合はあくまで弊社は、製造工程の一部を受託しているという認識から主導権は相手先企業にあります。もともと、相手先が製造していた製品を弊社が手がけるわけですから弊社は、この相手先企業と入念なコンサルティングを行い、あたかもお客様が自社で製造を行っているかのようなレスポンスのいいサポーターであることを常に求められています。また、製造受託という業務の性質上、納期、価格、品質については大変厳しく要求されています。このサービスは弊社が震災時に工場を失った際になかなか製造を受託してくれる企業がなかったことから考えたサービスです。日本の薬事法の複雑さによるものや製薬会社の閉鎖性がこれらの業務の進展を阻害してきました。しかし、2005年4月の薬事法改正によって全工程委託が可能になり、工場を持たなくても製造依頼が可能になったことから、いままでになかった研究所やベンチャー研究企業からの弊社への問い合わせが、増加しています。今後はますますこれらの企業からの仕事の依頼が増加することが予想されます。

イ.の発売元企業の場合は、弊社が製造販売元となりますので100パーセント弊社の企画、製造、となりますのでア.の場合と同じくコンサルティングは重要ですが、それに加えて弊社の提供するトータルのサービスレベルの高さや製品の完成度をよりいっそう強く求められています。こちらの売り上げが全体の6割以上を占める理由としては、企画・開発自体を弊社が先導するため相手先企業に積極的に働きかけることが可能だからです。

②提供している製品・サービスのもたらす価値、利便性

従来日本の製薬会社では企画、開発、製造、販売までを一貫して行うことのできる「フルラインメーカー」が主流でした。この理由としては2つあります。

A.  製薬会社を統轄管理している厚生労働省が開発と製造の分離を認めなかったこと。

B.薬の販売店が高利益率商品である薬を他店に販売されないように販売会社と契約してエリア限定販売を行ってきたこと からです。

しかしながら、Aについては1994年から製造工程のうち、1工程を委託先企業が自ら行うことで他の受託先企業に製造を委託することのできる「製造委受託法」ができたことによって大きく変化しました。

また、2005年4月からは全工程を製造委託することができるようになりました。これによってこの傾向はいっそう加速していきます。すなわち全工程を委託することで極端にいうと、工場を持つ必要が無くなりますので、製品開発行為に会社の資本を集中できることで国際競争力のある医薬品の開発が可能となるのです。本来の国が目指している方向はこのような会社の育成です。

また、Bについては全国をカバーする販売店をもつメガドラックストアーが誕生したことにより製造メーカーによる地域限定販売や価格維持販売が難しくなってきています。また、化粧品においても同じ法改正が適用されますので、A,Bともどもの理由にあるとおり日本の薬・化粧品業界は大きな変化の時代を迎えており弊社は、現在のところスキンケアという特定の分野のみですが、お客様にあわせた幅広い、個別対応を行うことで満足を頂いております。

③顧客・市場の要求・期待

弊社では、現在行うサービスの範囲をスキンケア製品と限定しています。これは製薬市場では全製造金額の1割にも満たない小さな市場です。しかしながら、お客様は専業メーカーであるがゆえの「期待」を弊社に持っています。これは、外用剤専門企業ならではの開発力、品質管理能力、製造能力、顧客対応能力などです。 また、2004年度から始めた、機能性化粧品部門においては、従来弊社が出会うことのなかった新規顧客、手がけてこなかった、原料、製品への要求が高まっています。またこれに伴って、スキンケア製品関連品で弊社では、開発・製造ができない品目がでてきており、これらを解決するために、新たなビジネスパートナーとの関係が必要となってきています。すべてのジャンルにおいてお客様が今、弊社に求められているのは、対応スピード、価格の安さ、製品やサービスの信頼度、商売においての対応の心地よさであると弊社では考えています。このすべてにおいて弊社はよりいっそうの加速度で応えていかなければなりません。

(3)競争認識

①競合他社とその特長

弊社は主要サービスであるアウトソーシングに特化して9年になります。当初1996年の売り上げは3,700万円であったものが2005年には8億7,800万円と2,373パーセントという驚異的な伸びを示しています。取引会社も当初の1社から現在は40社と年間約5社のペースで新規顧客が増加しています。このことは弊社の提供している製剤に特化したアウトソーシングサービスが、従来にはなかったもので、いかに顧客に支持されているかといった証拠といえます。

日本には弊社と同じようにスキンケア製品のみを製造している製薬会社は、数十社です。

その多くは自社専門のブランドを持ち自社開発、自社製造をおこなっており弊社のように受託製造を主力と考えている企業はそのうち数社です。しかしながら2005年の法律改正にともなって新規の参入企業が増えつつあるのが現状です。

②顧客・市場における競合他社との位置づけ

他社の具体的なデータが公表されていないので詳しく書くことは出来ませんが、受託製造はこの10年で現在の2,000億規模から4,000億規模に増加することがシンクタンクなどの分析で明らかとなっており、今後弊社のように、ア、医薬品企業のなかで受託業務を新設する会社、イ、化粧品企業のなかで受託業務を新設する会社、ウ、国内であらたに受託業務専門として起業する会社、エ、海外に工場を持ち日本の医薬品を安価で加工するサービスを行う会社の4種類が競合となりますます競争は激化していくものと思われます。しかしながら弊社のように医薬品から化粧品までのラインナップをもつ企業はまれであり、今後もそれほど増えないものと考えられます。この理由としては、医薬品会社についてスキンケアは、ニッチでありながら独特の技術が必要であるためにリスクが発生して開発に対しての利益の確保がむずかしいこと、化粧品会社においては、医薬品レベルの製造環境をもつことは技術的にまだ難しいと考えます。その理由としては、医薬品製造においては業許可の必須条件となっているGMP(グッドマニュファクチャリングプラクティス)と呼ばれる世界基準の規格が化粧品製造にはまだ必須ではないからです。医薬品メーカーには他社を上回る質感の高い製品の提供を行い差別化が可能です。化粧品メーカーにはより高いGMPによる開発・品質管理・製造環境の提供によって差別化が可能です。こういったことには、多くの資金と技術が必要なためそのことに特化している弊社に依頼したほうが、よいビジネスモデルがえがけるものと、顧客に理解していただきやすい状況になってきたといえますよって、今後、弊社の優位性はより高くなるものと考えられます。

③現在の競争力の源泉

弊社の競争力の原泉となっている重要な要因は、阪神大震災で全壊した医薬品製造工場を他府県において短期間に再建したノウハウ、行動力、実行力であると考えています。具体的には、日本有数のスキンケア専門工場と短期間に優れた製品を企画・開発・製造・品質保証をGMPを遵守しながら短期間で、実現できるシステムをもっていることです。

多くの企業は実際の行動において、変革について後ろ向きです。規制に守られ閉鎖的な製薬業界においては、それがより顕著であるのが現状です。特に弊社のような売り上げが10億円に満たない中小企業のレベルにおいては、経営者に変革への意識や問題づけが希薄であることから、旧態依然の経営方針の会社が多いのではないかと、思われます。弊社ではこの状態を「成功した焼酎メーカー」と比較して「失敗している地酒屋商売」と呼んでいます。この「失敗している地酒屋商売」の特長は、優れている点を他社と比較せず、お客様の意見を取り入れず、旧来の販売方式にのっとって商売をおこなっている点です。 弊社は震災において既存の工場・人材・商圏すべてを失いました。そのため、三重県における再建において、それらの既存のありかたをすべて見直すことにしました。弊社は、「成功している焼酎メーカー」の戦略に学ぼうと考え、実践しました。焼酎は従来、日本酒に比べ,雑酒として低い地位にありました。しかし、飲み方、販売ルートなど、あらゆる工夫をすることで、ブランドによっては日本酒の販売を超える地方メーカーが存在するようになっています。すべての製造ラインを失った限定された工場の再建、地域や法律の変化・適用によって右往左往した本社の再構築、新規の顧客の要求を確実につかみ製品化する開発・製造力、このすべては倒産せずに会社を存続させるための行為でしたが、実はこれらの問題を短期間でクリアした構想力・努力・根性・執念・実現力こそが、万協製薬株式会社が他社に提供することの出来るダイナミズムであると考えます。

現在の弊社には、「学園祭の前日」のようなダイナミズムが社内に充満しています。この熱気を持続していくことこそが、他社に負けない最大の競争力の源泉となっています。

④顧客・市場をめぐる競争環境の変化

2005年4月の法律改正によって日本における同業メーカーは

  • ア、開発行為を主要業務とするもの
  • イ、 製造行為を主要業務とするもの
  • ウ、販売行為を主要業務とするもの

に大きく分かれることが予想されます。なぜならば、この法律はもっとも開発力、製造力、営業力に長けた企業のみが生き残る仕組みです。この変化は従来あいまいであった業界の再編につながる大きなものであると考えられます。世界的規模で、市場に供給できる新製品を作るメーカーまたは、安価で加工できるメーカー、この2つの会社が今後、日本政府が予想している二分化です。このなかでア、イ、ウ、はそれぞれ弊社の顧客となりますが、同時にあらたに出現する競合相手になる可能性がある顧客であるともいえます。いずれにしても弊社は、従来の競争相手にないスピードを兼ね備えていることが特長といえます。また、最近では、弊社にエステ市場からの依頼も来ています。

(4)経営資源認識

①人的資源に関する主要な特長

弊社の人的資源は大きく5つに分けられます。ア、製造部門 イ、開発部門 ウ、品質保証部門 エ、営業部門 オ、総務・経理部門の5部門です。

ア.の製造部門は全従業員の7割を占めるもっとも大きな部です。ここでは、おもに製品の製造から出荷、原料資材の入出庫を担当しています。イ.の開発部門は弊社の戦略を実現する上で、もっとも重要な部門です。この部門は、現在品質管理部に属しています。営業からのニーズを吸い上げ、製品開発から行政への許認可の申請、実製造の開始までを担当します。ウ.の品質保証部門は、すべての原料・資材・完成品の品質を保証するために、製造工程の各部署において、分析機器を用いた試験を行い、品質を保証します。また、製造環境が規格内に収まっているかなどの各種環境試験も行っています。いわば、顧客側に立った視点での正確な判断が求められる部門です。この部門は直接利益を上げる部門ではありませんが、弊社の顧客からの信頼を維持するためにはとても重要な役割を担っています。エ.の営業部門は顧客との最初の接点となる部門です。宣伝広告、展示会の出展、DMの発送、顧客との直接面接や個々の仕事のマッチング等を行い、弊社の他部門と顧客とのパイプをつなぐ役割といえます。オ.の総務・経理部門は会社全体の商取引の実務、納税業務、従業員の給与や金銭出納、また従業員の福利厚生などを行っています。 企業は人なりという言葉のとおり弊社でもっとも重要と考えているのが人的資源です。弊社では、人材を負債や消耗品として考えるのではなく、財産と考えています。そのため教育訓練には、社内外の施設、スタッフを使って積極的に行っています。

各業務の振り分けは9年前に3人で再起業したときの仕組みを、現在の70名の規模にブローアップした仕組みになっています。他企業に比べて特徴的なのはア、イ、ウ部門に比べてエ、オ部門は全従業員の1割程度という人員比率です。これは弊社の完全受注生産方式によりエ、オの部門が省力化出来ている点にあります。業務についても既製品を売り込むのではなくひとつひとつ弊社工場・研究室にてオーダーメイド開発をしていますので、お客様が直接弊社を訪ねられることが多く、すべての部門がエ、オの部門をサポートする仕組みをとりやすいのです。2003年度には社員にノートパソコンを支給し社内LANを構築して情報のデジタル化の一歩を踏み出しました。サブリーダー以上のスタッフは毎日グループウェアに書き込むことで、社内の情報、コミュニケーションの向上を図るようにしています。またそこから得られたエッセンスはホームページを通じて顧客に発信されるしくみを模索しています。

②主要なノウハウ、知的権利、設備、施設の特長

弊社のコアコンピタンスは「高分子基剤を使用したゲル乳化技術による高品位のクリームの製造」です。そのため開発部門はこのノウハウを利用した新しいスキンケア製品の開発を行い、製造部門はこの製造を生産する設備に特化しています。各分野とも全国から優秀な技量をもった人材を年齢、学歴、性別にこだわることなく募集して採用しています。

特に品質保証・開発部門では科学・工学系大学卒の専門職をできるだけ求人して採用しています。製造部については、特に専門職としての指定をしているわけではありません。しかしながら、最近は製造部においても大学卒の社員が増えています。三重県が工業において多くの企業があることから実経験を積んだ優秀な人材を集めやすいです。また、受託製造という業務ゆえに製造設備を自社効率のみに考えることなく顧客の求める量で作ることの出来る各種のサイズの生産機種をそろえています。この点は委託企業から、不要な在庫をもつことが減ると、大変喜ばれています。他社で開発された製品にはこのノウハウを利用できないこともありますが、高品位のクリーム剤の開発・製造でつちかわれた技術・製造方法が受託企業からの厳しい要求に応えられる潜在的ポテンシャルとなっています。工場設備は現在、2カ所存在し、それぞれ開発した処方を実現できる最新の製造設備を備えています。とくに製品の調合・充填についてはクリ-ンルーム(クラス100,000で規定していますが、実際はクラス1,000で管理出来ています。)を使用して空気、塵埃にいたるまで徹底的な環境管理を行っています。また、製造で使用する水もほぼ無菌の精製水を自社で製造して使用しています。これらは、すべて定期的の検査を受けて管理範囲内であることを保証しています。工場の設備すべてが、導入して10年未満のものばかりであり、この10年の技術進歩を表すように、弊社の強みとなっています。自社開発のコアコンピタンス技術は各製品ごとに厚生労働省に申請され審査され日本国の承認書として国際的に権利が認められています。弊社はこの製造承認を約130品目取得しています。また、2004年3月には弊社の提出した改善経営計画書により三重県より経営革新企業の認定を受けました。また、2004年10月、2005年9月に計画の前倒しによって変更申請を行っています。

③財務状況や財務活動の主要な特長

弊社の資金はおもに政府系金融機関である中小企業金融公庫と商工中金、都市銀行であるみずほ銀行、地方銀行である百五銀行から調達しています。おもに、設備投資の長期借り入れは、中小公庫から、短期借り入れを、民間銀行から行っています。順調な業績を反映して、金融機関との関係は良好で、資金調達は現在のところ円滑に出来ています。弊社はその資金を製造設備、開発・品質保証設備に特化して投資しています。2005年3月の決算では総資本が10億から15億と1年間で1.5倍となりました。増加した資産の多くは新工場建設のためです。資本は増え、設備も増強されましたが、新工場スペースの全稼働はまだ順次ですので、しっかり利益を出し今後の設備投資が可能な健全な経営状態を維持し、より財務体質の強化が必要です。

④主要ビジネスパートナーの特徴とお互いに求める要求・期待について

弊社のビジネスパートナーは現在約40社あります。この特徴はやはりスキンケアビジネス独特の原料、資材メーカーです。弊社がどのように努力しても使用する原材料に問題があってはいけませんので、仕入れ先については十分吟味を行い品質を互いに確認するとともに必要な場合は年間1回程度の製造所査察を行っています。これらのビジネスパートナーに弊社の考えや基準を理解してもらうため担当者を通じて弊社の理念の徹底をはかっています。

また、最近では弊社が業務を委託するメーカーも出てきており、それぞれにあった管理体制の構築が必要と考えています。

(5)変革認識

①組織価値観から見た変革認識

弊社の価値観は二代目経営者である松浦信男が作ってきた物が多くあります。その中には、やはり阪神大震災から立ち上がった不屈の闘志と、いつまでも顧客に支持される企業でいたいという二つの思いを持続させることを全従業員の共通のモチベーションとしたいという想いが一番にあります。この二つは弊社にとって最も変えてはいけない想いです。現在も松浦信男を中心とした経営幹部の判断によって、基本的意志の継続がおこなわれています。しかしながら経営品質活動が軌道にのり近年はリーダー制の採用によって育った社員によって少しずつエンパワーメントが実行されるようになってきました。今後は、全員経営革新参加企業として従業員の意識変革を行なって行こうと考えています。これによって、「文化祭の前日」のようなダイナミズムを持続させます。

②現在策定している戦略課題と目標

ア.年率10パーセントの売り上げ成長と税引き前利益5パーセントの確保

このことは、利益率のみが現在達成出来ていない年度があります。弊社はまだ売上成長率が、年率10%を超える成長期の会社です。また、21世紀の業界標準を達成するために設備投資を継続して行なう必要があります。毎年売り上げの20%に匹敵する減価償却費を計上していますが、これを継続するためにも利益の確保は重要です。これは今期以降、毎年実現していきたいと考えています。

イ.社内情報のデジタル変換の推進およびコンピュータ業務システムの統合化

これにはセキュリティや変換にかかるコストなど勘案しなければいけない問題が多くありますが、2005年度内の実現を目指しています。また、2005年度は基幹コンピュータ業務システムをオーダーメイドにて一新しました。これにより業務のよりいっそうの効率化を目指します。

ウ.お客様とのより緊密な連携

弊社は専門の営業職従業員がいない状態で、本社の4名のスタッフと経営者自らが行っています。このことは、弊社がコンサルティングサービスとして成立しているから可能なことといえますが、よりより顧客との緊密な関係がもっと重要とされます。全社営業体制の実現にはまだ、課題が残されています。このことはお客様相談センターのよりいっそうの充実、現在も行っている顧客との打ち合わせに他部門が参加するなどの連携の強化を続けて行なっていきたいと考えています。

エ.社内工程の作業モジュール化

現在、弊社では、すべての従業員の目指すべき目標を明確にするために、全従業員が意見を持ち寄り、全仕事工程の作業モジュール化を行っています。従業員と決めたこのモジュールを多くの従業員が、学ぶことができるように、それぞれに呼応するマニュアルを作成し充実していきます。

1 経営幹部のリーダーシップ

1.1    経営幹部のリーダーシップ

弊社の大切にしている価値観は、経営理念に表れています。この経営理念策定にあたり経営幹部は、我が社のメインビジネスである「スキンケア製品のアウトソーシングサービス業 」を体現するにふさわしい言葉を模索しました。

この経営理念の中では、顧客満足、従業員満足、社会貢献、独自技術による市場の獲得、経営の効率性を重視しています。また、策定した経営理念は会社の各事務所、会社案内および従業員が携帯し、朝礼、会議などの際には全員で唱和をして、組織内外の関係者との意思統一を図っています。 月1回おこなわれる全体集会では、価値観の共有化のための対話を小集団のグループ討議で、行っています。

各部門長の下には「リーダー」と呼ばれる10名以下で少人数単位のチームを統括する責任者を作りエンパワーメントを効率的に行えるようにしています。また、リーダーの下に最低3名単位のチームをつくり、そこにサブリーダーを置くことによって、よりエンパワーメントを行ないやすい状態をつくっています。対話の機会を増やすため、随時研修会議を行っています。

この会議は各部門長、リーダーが一堂に集まり、社内の種々の問題を協議する場です。多くの仕事は部門ごとに進行していて、他部門の意見を聞く機会が少なくなりがちです。弊社では、それぞれの部門の気づきを高めるためには、他部門との対話が重要だと考えています。また、発言の機会を増やすために、司会や書記を持ち回りで行ったり、対話をうながす工夫をしています。この結果は社長に報告され、改善が必要な場合の決断スピードを高めるようにしています。

また、「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」という提案制度を設けています。これは従業員ひとりひとりから、提案書を自由に出してもらい社長自らが一週間以内に回答しています。出された提案については、社長自らが提案者と話し合い、お互いの気づきが得られるまで対話を続けます。経営者と社員が個別に一つの案件について話し合うこと、これは一見、会社組織を飛び越えたやり方に見えるかもしれません。しかし実際行ってみると、このことはお互いの理解を深めるのと同時に日本語によるコミュニケーションの訓練となり、改善内容と同時に最大の経営理念の伝達方法となっています。この結果は、提案書と共に社員全員に公開され、一度で解決できなかった場合には何度も効果の確認を行ってその結果も随時公表しています。

毎年1年に1回行なわれる成果発表会では事前に選ばれた候補作品のなかから従業員の投票によって「提案書大賞」を決め、表彰しています。

また、社内には「バンキョウ コミュニケーションボード」を各工場に設け、全従業員向けに会社と顧客の対話の結果、各種情報、従業員提案などのコミュニケーションの成果を逐次、掲示しています。このボードには仕事の改善のみならず、会社のあらゆる情報を公開することで、業務の改善につとめようとする目的で設けられています。このスペースは年々拡大し、掲示件数も増大しています。

これらの制度は、全社員が経営品質の改善の進行に直接参加できることから、弊社では、大変重要なツールと考えています。経営幹部が、このような種々の手段をとることにより組織の価値実現にむけた改善・革新のための体制、制度づくりを行っています。

2.経営における社会的責任

2.1 社会要請への対応

弊社の行っている事業は、スキンケア製品の製造ですが、その中でもっとも製造比率が高いのが現在は、社名のとおり医薬品の製造です。またその中で弊社は、外用薬に特化しています。外用薬とは医薬品の中でも皮膚の表皮に塗布することで、経皮から薬剤を吸収させて、薬効を体内に届ける薬のことです。剤形としてクリーム、軟膏、液剤を指します。医薬品は日本においては、大変消費者の要求が高い分野の市場です。製品だけでなく工場周囲への環境へも他の企業より厳しい目が注がれています。よって弊社では、まず製品作り、製造工場環境において、「安心、安全、信頼」で、社会への信頼を高めようと努力しています。

自社での製造工程は、製造部の3つの課が他社より仕入れた原料・資材を自社の製造装置にて調合・混合し、目的の形態の容器に充填したのち、最終包装をして仕上げます。これらの製造工程は製造・検査機械を含めてすべてバリデート(実製造規模での化学的検証)されており、それをもとに品目ごとに作成された製品標準書に集約され、関係者に公開されています。出来上がった製品は、製造単位ごとに品質管理部によって第三者の立場で、厳密なる製品試験を行った後に、適合となったものだけが出荷されるシステムを採用しています。またすべての製品に3年間の品質保証を設けています。

製造ならびに品質管理業務については、すべての工程の指示および記録が製造単位ごとに書類として指図・記録されており弊社が設定した使用期限+1年の保管をしています。これは、弊社の製造している医薬品が国民の健康に直結しており、万が一不良品が製造され出荷されることは、社会に与える影響が大きいからです。これらの工程はGMP(グッドマニュファクチャリングプロダクト)と呼ばれるWHOが制定した国際基準の管理下にあり、行政機関・他社との査察において世界中同様の運用がなされています。弊社はこの基準を遵守することで、社会からの信頼に応えています。

製造された製品にはすべて弊社の相談窓口の電話番号が記載されており、市場に出回った後は弊社のお客様相談センターを通じてあらゆるお客様の相談に答えています。また、この結果は製品ごとにデータベース化されており、随時更新してより深いお客様対応に努めています。

製造することで生じる排水、廃棄物については、地域環境を損なうことのないように管理値を定めて管理をし、弊社と多気町行政ともども定期的検査を行い結果については地元住民のかたにも公開しています。また、会社周辺の環境整備についても随時、地元と話し合い美化運動に協賛しています。2004年度からは多気町の教育機関に対して一定額の寄付事業を行い事業で得た利益の一部を地元に還元しています。

また、社長自身の震災を克服して三重県で第二創業を成し遂げた経験を、話して欲しいという依頼が、三重県の人々から多いことから、できるだけスケジュールを工面しながら、多くの人を元気にする企業講演会を隔月1回程度、要請に応じて社長自らが、それぞれの会場に出かけて行っています。最近では、商工会議所での講演、小学校、高校、大学などでの授業などにも応えています。

各事業につきましては現在、具体的な目標は、あらかじめ設定された数値をクリアしています。また、文書保存が必要なものは、文書ならびにサーバー上に構築されたLANの中に整理され公開されています。また、講演などは、CDやDVDに記録され、要請に応じて配布しています。改善につきましては、順次、経営幹部やリーダーとの会議のなかで随時話し合いを持つようにしています。

2.2  社会への貢献

弊社では、社会への貢献を高める方法については、まず社員それぞれの考え方を、弊社の提唱する「安心、安全、信頼」の方向に向けることが大切であると考えています。経営幹部は、いつも「人の体を幸せにするものを作っている私たちは、仕事自体が社会貢献なのだ。」といって仕事に対する責任や自覚を高めるようにしています。特に社長は、数多くの苦闘の末に三重県で第二創業をした、経験から自社が、日本やその地域に住む人の役に立たなければ存在意義がない。と考えています。

また、自社の進出を引き受けてくれた多気町の行政、住民の方々にも大変感謝しています。 2002年、自社工場の隣地に存在する物流工場が移転することになり、地元からは全く知らない環境を悪化する企業が次にやって来られたらどうしょう!と不安を抱えていました。そこで、弊社社長は、地元住民や多気町行政と協議して敷地3,000坪の工場を4億円で買収して、自社工場とすることに決めました。今すぐに、その工場が必要なわけではありませんし、専用の工場に改装する費用もかかるのですが、社長は地域のためになるならば、と悩み抜いた末に2005年3月に購入しました。これも地域を愛する気持ちから出た行動です。

このことに賛同した企業と共同で新工場を運営することで、費用の軽減も現在では行われ、同年11月には万協製薬第二工場として完成することになりました。しかしながら、地域の五桂、前村地区の方々の理解なしにこの立地は実現できませんでした。そのため、地域の方々へ弊社に対する理解を深めていただくことが必要です。

化学工場といっても弊社は、環境を汚しません。すべての有機溶媒を100%回収し、排水の量も少なく、すべて日本最高のレベルでの浄化を行なっています。また、動力すべてを電気で工場を操業しており,有毒な排気は一切出していません。また、廃棄物はすべて可能な限りリサイクル業者に出してゴミの低減をおこなっています。創業以来9年間、1度も地域からのクレームは受けていません。それだけでなく、積極的に地域活動に協力しています。

まず、弊社の社会や地域からの要求については、年1回程度の地域との話し合いを行っています。その中では、やはり、安心・安全という言葉がでます。製薬会社という言葉から来るイメージは環境に良くない公害を発生させているのではないかという不安が多いようです。そのためには、工場を見学いただき、製品を実際に使用して頂くなどの努力をしています。

平成17年からは、自社で開発した化粧品を使って、地元の老人ホームにスキンケアのボランテイアをはじめました。 また、弊社開発の無添加化粧品の販売を地域の方々にお手伝いをいただき、それに対して、報酬をお支払いする化粧品ネットワークシステムを始めました。これは弊社の従業員と地域の方々が一緒になって行なう事業で、いままで、理解されにくい製薬会社という業態をより、安心で安全な製品作りを行なっている会社であるとの理解を地域のみな様にしていただくためのものです。地域の方々により愛される企業となるべく、今後もさまざまな取り組みを行なっていきます。

3.顧客・市場の理解と対応

3.1  顧客・市場の理解

弊社のお客様は、スキンケア製品の開発・試作・実製造を求める約40社の日本の会社です。弊社は、現在、自社での企業行為をスキンケアにまつわる製品についてのサービスと限定しています。人体に用いる薬のなかでスキンケアというのは実はニッチな分野です。では、弊社がなぜこの分野に特化している理由は、阪神大震災以前弊社は、たった一つの販売会社に供給を目的として設立された会社であるという点が上げられます。

当時の販売会社は、弊社の業務を規定し他社への販売を禁じていました。そのため、割り当てられた外用薬のカテゴリーにのみ特化して、外用剤製品の開発行為を繰り返していました。ところが震災の後、弊社の神戸工場の再建が難しいと見るや販売会社は、弊社の再建支援は、しない方針を打ち出しました。当時その販売会社以外には、他社との関係を一切持たない弊社は、事実上、再開は不可能となりました。

その渦中にあって二代目経営者となった松浦信男は、大きく方針を転換して、一社のみの販売から日本中の会社をビジネスパートナーとする決断をしました。震災の経験により一社のみの販売による経営、自社の強みを生かさない製品作りは顧客から相手にされないと痛感したからです。

このとき中心となった技術は、創業以来35年間一社のために開発を続けていた数々の医薬品でした。その中にはスキンケア以外の製品も含まれていましたが、もっとも多くがそのカテゴリーの製品であったこと、震災によってスキンケア以外の製造設備を失ったことの二つの理由によりビジネスの分野は確定しました。

このことによって創業35年目において、はじめて日本市場をターゲットとした顧客の創造に始めて乗り出したのです。 しかしながら全く他社との取引がない状況からのスタートは困難をきわめました。そのため弊社では、以前からのビジネスパートナーに「どのような仕事でも引き受けますので、お客様をご紹介ください。」と願い続けました。 その中で少しずつ話があった企画に試作品を出すという形で、他社との関係がスタートしました。従来の営業は、一社の販売会社に決まった商品を提案するルート販売といったものでしたので、新しい顧客との出会いには、製品・サービスへの工夫が必要でした。

まず、既存ビジネスパートナーに万協製薬の新しい業務スタイルを理解してもらうよう直接対話し、顧客の紹介を頼みました。また、ホームページを作成して、弊社の事業内容を明らかにするとともに、自社自ら行うサービスをスキンケア製品に限定することで、顧客の限定を行いました。いずれの場合も「アウトソーシング」が弊社サービスのキーワードでした。剤型の特化、サービスの新規性に興味を示された顧客が少しづつ増えて今約40社の顧客との取引に拡大しています。

現在は、ビジネスパートナー、ホームページ、各種広告、弊社が市場に提供している商品を見てメーカー、販社、直接顧客からの問い合わせ等によってビジネスの出会いは、年々増加し続けています。また、2005年4月の薬事法の法律の改正が(委受託製造の完全自由化)、顧客からの問い合わせを増やすことに繋がっています。

また、国内だけでなく海外へも市場を広げようとしています。2005年には中国の上海において見本市に参加し、今後の東アジア戦略への手ごたえをつかみました。今後は、国内の見本市やフェアへの積極的な参加をつづけて、顧客との接点を増加させていきます。

弊社の顧客は大きく分けて4つになります。

  1. 弊社の製品を消費者に販売する目的で完成品を購入いただける顧客
  2. 顧客側で自らが開発した製品の加工を弊社に希望する顧客
  3. 弊社の製品を使用される直接の消費者
  4. まだ弊社の製品やサービスを知らない潜在顧客

これらの区分は、弊社のかかわる仕事の範囲によって分けています。この4つの顧客を選定した理由は、弊社が中心的に製品を提供している一般薬局向けの薬(OTCドラッグ)市場が、縮小する傾向があることです。またスキンケア部門は医薬品のなかでもニッチ分野であり、新規設備をして製造をしようとする企業が少ないので、製品を供給して欲しい企業や中間加工サービスのみを委託し簡単な業務のみを自社工場で行う企業が増えるようにになると弊社は、考えたからです。また、直接の消費者は、弊社の製品を使用される方であり、最終的に本当の価値を判断される方であるからです。

このような4つの種類の顧客の要求・期待を理解することは、弊社の仕事を進化させる上で大変重要なことです。このため、弊社では、定期的に既存顧客に自社開発品の選考提案を行っています。これらの開発品は市販前のものが多いことから、これを行うことにより、弊社では顧客のニーズが掴みやすくなると同時に、顧客の求める製品への改良が容易になっています。

また、企業側の顧客には定期的に会社や工場を査察していただくことにより、より弊社への安心と理解を高めるようにしています。 直接の消費者については「お客様相談窓口」を設け、すべての製品のパッケージに連絡先を印刷してコミュニケーションを図っています。ここでは、製品の使い方のみならず、販売店、健康アドバイスまで消費者の要求にあわせて無料で行っています。またこの相談窓口から得た、情報の伝達・フィードバックを丁寧に行うことを目標としています。消費者を待たせないようにするため既存相談での応対をコンピュータ上で、データベース化を行っています。

潜在顧客については、専門誌に企業紹介の広告を掲載することで認識を高める努力を行っています。2005年度からは、医薬品雑誌だけでなく化粧品専門誌にも広告の掲載を始めました。また、各種展示会に出展することで、潜在顧客の開拓を進めています。

これらの活動を行うことにより、縮小していく市場であっても弊社の製品やサービスを差別化して選択していただける顧客との関係をより深く創造してゆきたいと弊社は考えています。顧客・市場の理解という点につきましては、毎回の仕事のなかで顧客からいただく要望を一つずつ実現していくという点を大事にしています。また、新規提案へ寄せられた声の実現なども重要と考えています。

3.2 顧客からの意見や苦情への対応

弊社が顧客からいただく声には、既存顧客からは主に製品の納期、弊社が請け負った作業の進行状況、納入した製品に対するお客様のクレーム、消費者である顧客からは、お客様相談窓口に寄せられる商品の疑問、クレーム、質問などです。潜在顧客からは弊社のサービスについての問い合わせや工場見学への要求などがあります。

これらの企業顧客からの声について対応の方法ですが、これには「顧客別苦情対応の手順書」を作成しています。これはその目的や趣旨にあわせた手順書にしたがって記録が文書化されています。このルールは、顧客へ迅速に情報の伝達を行うこととその記録を後にいたっても検索できるという目的のために定められています。すべての問い合わせが顧客別のファイルとなっており発生時系列でファイルされているので、後検索も容易となっています。こちらは発生後2週間以内の解決を目標としています。

また、消費者顧客に対しては「万協お客様相談窓口」を月曜日から金曜日までの午前9時から午後6時まで開設しています。ここでは、自社製品だけでなく、広くスキンケアの質問を顧客から直接受けて、担当の職員ならびに弊社の薬剤師が回答しています。このサービスはすぐにお客様が、答えを受け取れることから好評を得ています。ここでの結果はすべて、文書化され、製品別に既存の対応方法がすぐに検索できるようになっています。そのため、回答がしやすく、専門家以外でも対応することができるようになっています。ここでの対応はスピードが大切で、ここでの処理の迅速さがクレームの拡大を防ぐ重要な防護網となっています。当日のお客様回答100パーセントが、目標です。

日常の顧客接点においては、弊社の各担当部署の責任者が直接、顧客と対話・連絡を密にすることで問題解決の手法を学び、日々に顧客対応への人材育成も行われています。この際、弊社では旅館やホテルの客室担当者のように、自分の意見を主張するのではなくあくまで顧客の立場になっての考え方や発言ができるよう日常から指導しています。それぞれの責任者の下した判断は、可能な限り尊重されています。その分、各担当者の責任も大きいと言えます。

弊社の顧客との信頼関係を確認する方法について、顧客満足度調査を行っています。その中で、弊社は対応が早い、情報の公開性が高いとの評価をいただいています。顧客との信頼性を構築する方法については、相手の会社の内部だけで検討される方法より、弊社と検討することのほうが「快適だ」という状況を目指しています。いわゆるコンサルティングセールスを重要視しています。

顧客が自社以外のビジネスパートナーに仕事の解決を求める際には、快適さという言葉が重要であると考えます。また、この取り組みの見直し、改善・革新については常にお客様からの声を直接受け取る努力をすることで、行っています。

3.3 顧客満足の明確化

弊社では、一つ一つの仕事においてクレームが0%になるよう全社で努力しています。弊社は製造メーカーであり、まず、日々製造されている製品の納期・品質が守られているかが、最も顧客満足への道であると考えています。このことをすすめるために従業員研修会と呼ばれる経営幹部とリーダーが話し合う会議を行っています。また、問題のあるたびに、リーダーは話し合いの機会を持つようにしています。

ここでは、起こった仕事上の出来事をみんなで持ち寄り話し合う時間としています。現在は工場が2カ所あり、それぞれが毎日顔を合わせる状況ではないことから、この会議は大変重要です。総務、製造、品質管理の3部署が、同時に顧客満足の最適化を考えることが、重要な目線と位置づけています。そのため、お客様の声を一堂に会して聞く機会はなにより重要と考えます。これらの結果は翌週、全従業員が文書にて閲覧できるようにバンキョーコミュニケーションボードとそれぞれのパソコンに開示されています。また、クレームの報告書は全従業員が回覧して情報を共有しています。

また、各部門が毎日行っている朝礼とは別に月1回、経営者自らが全社員を集めておこなう全社集会を行っています。ここでは経営者自らが、顧客満足の重要性を従業員に伝える場となっています。このような経営者との対話こそが中小企業ならではの教育と、弊社では考えています。また、経営者に直接提案できる方法も実践されておりさまざまな形での顧客満足への取り組みが行われています。また、年数回既存顧客に対して、新規提案を行っており、その際の声を集計しています。目標の設定と達成状況の把握については、新規提案について全社よりの回答を目標にしています。

 

4.戦略の策定と展開

4.1 戦略の策定と形成

弊社では毎年、期首に会計事務所のコンサルタントと社長が5年間の長期計画と1年間の短期計画を設定しています。5年間の長期計画は全体的な売り上げ目標や主に工場などの設備計画や製品開発の品目の策定やスケジューリングなどです。毎年立てられる短期計画は、社長、コンサルタント、経営幹部が月1回集まって開かれる経営会議で話し合われ、状況をみながら更新しています。この短期計画では、取引先別目標を製品別売り上げ、開発年度計画を設定しています。これは既存のデータをもとに社長と経営幹部との話し合いで作成されるものです。

計画の策定には社長と経営幹部の判断が多くを占めています。これには弊社業務のうち社長と3名の経営幹部が開発・製造・経理を熟知しており特に弊社では、専属のお客様担当の営業員がいないことから、社長、経営幹部が中心となって各種戦略を決めています。

弊社の短年度計画は、新規製品の既存売り上げ比率10%以上という目標を設定します。つまり、1割は毎年、新しい製品で業績をのばすことを是としています。

また、組織プロフィールで区分けした4つカテゴリーが弊社の規模の中小企業で維持可能であるかが、今後の重要な戦略であると考えています。

現在、弊社では、医薬品中心の開発・製造からより幅広い化粧品も含めた開発・製造の会社へと転換の時期を迎えています。弊社の中心市場である0TC薬(一般小売店での販売薬)は90年代バブル期の1兆3千億円から2005年度では7,000億円と急速に売上のパイが小さくなっています。それに変わって増え続けているのが、サプリメント市場です。こちらは、従来、健康食品と呼ばれていたものです。これらの食品は、近年特定機能性食品など国が定めたあらたな食品の基準によって、より健康や長寿を求めるひとのアンチエイジング志向をとらえ、急速に市場が拡大しています。病気になってから薬を飲むのではなく、健康を維持するために、自分にあったサプリメントを毎日、服用するという積極的な健康志向は21世紀の先進国の国民に一貫して現れている現象です。

弊社は数年前から、年齢より若く見られたいという中高年層の特に女性に注目していました。

こういった女性は、ある程度、出費をしても本当に自分にあったスキンケアを望んでいます。弊社は、以前よりクリーム剤製造で、日本一を目指す!と言ってきました。しかし以前はこのクリーム剤は大半が医薬品を指すものでした。しかしながら、成功している同業他社動向を見ても明らかに治療医薬品から未病スキンケアへと市場の移行が見られます。また、販売方法も従来の店頭販売から、通信販売の市場が増大しています。

弊社では、2004年度から開発し、発売してきた機能性化粧品の売上げが好調です。内服薬がサプリメントに市場が移行するように、外用薬も機能性化粧品に移行することが考えられます。外用医薬品では大メーカーとなった企業は数社ですが、機能性化粧品のメーカーでは近年大きく成長している企業がたくさんあります。弊社では、この現象に大きく注目しています。開発に最長10年近くもかかる医薬品と違って、化粧品の開発は1年以内の製品化が多く発売のスケジュールも短いことから、企画・開発・製造とあらゆる分野で、さまざまな改革が弊社に必要です。

また、弊社は2005年、関東のメーカーと協力して、あらたな機能性化粧品を通信販売で流通させる事業を始めました。会員性のオートシップと呼ばれるこの販売方法は使用者が販売も手がけられる販売方法ともあいまって画期的な取り組みとなっています。このスキンケア製品の売れ行きが将来弊社の工場分社化を促す可能性となるかもしれません。現在のサービス内容事態は、多種多様の顧客に答えきれなくなる可能性を秘めています。医薬品と化粧品の目指す価値は今後、もっとそれぞれ進化していきます。製造環境もそれにあわせて専業化が必要になるのではないかと想像されます。しかし現在の売上げ規模では、まだ製造分社化はコストがかかりすぎ実現できません。しかし、近い将来においてはそれぞれのカテゴリーにふさわしい分社工場が必要となるでしょう。この時期をいまからシュミレーションしていくことも重要な戦略です。

目標設定や開発品についてはそれぞれの工程の責任者と社長が毎日膝をつきあわせた環境下で話し合われています。実際主要幹部は同じフロアで目線が感じられる位置にいます。社長室はありますが、社長は、ほとんどそこに入ることはありません。最近竣工した第二工場では社長室自体をなくしてしまいました。これは従業員と同じ目線で考えたいという社長の気持ちの現れです。実際このスタイルで成長を続けているために、いまのところ変える予定はありません。現場第一主義を社長みずからが、実践することで、従業員にひとつの仕事をいかに大切にするかを伝えています。

製品開発が数年にわたることから開発業務の管理はある意味、売り上げ管理より重要といえます。スキンケアは季節的変動のある商品であり、1年に1度しか新製品の発売のチャンスがない製品も多くあります。そのため、経営幹部は開発を最重要の部署と位置づけ、自ら,毎日開発部員とのやりとりを欠かしません。ここでの遅れが会社の成長に大きく影響するからです。弊社では、既存顧客に開発中の製品情報を開示して、意見を求めることが、大変重要と考えています。弊社はこの開発法を旅行社のパッケージツアーの方式を真似て、「開発提案ツアー方式」と呼んでいます。開発中の時点で、顧客からの声を重視して、既存顧客の意見を取り入れています。逆に既存顧客の2社以上の会社の採用予定のない製品は、開発が中止され上市されません。あらかじめ、守秘義務を結んだ、限定された顧客以外に情報を流しませんので、他社に情報が漏れる恐れがありません。

また、自社提案医薬品については、市販先発品を自社で改良し安価に提供するということに徹しており、まったく世の中にない新しい製品を市場に発売することは、ありません。なぜなら、中小企業の器で新しいニーズをつくることは資本的に、難しいからです。それよりは大手が開発した製品のリニューアルのほうが市場からの要望が明確であると考えています。これは弊社なりのベンチマーキングといえましょう。あらかじめ顧客の要求を開発品に盛り込むことにより製品化された際の成功率・成熟度を上げるもっとも効果的な方法と考えています。しかし2004年度から始めた機能性化粧品の業務ではこれまでと違って製品にオリジナリティが多く求められるようになりました。開発は製造を見越した設計でありますので、開発に用する複数年の間に実製産化までの検討を行います。「量産化技術は金で買え」というのが社長の口癖でありもともとの開発をスキンケアに限定することで開発・製造も選択集中が、可能であり弊社の強みとなっています。製造ラインも専門業者と弊社とで共同開発したものが多く、製造設備も弊社の独自技術となっています。事業で得られた利益はよりスマートな量産技術を実現するための製造設備投資に使用されますので、専業化の強みがここで発揮されるわけです。

また、顧客の開発した製品の受託加工ビジネスでは、顧客の価格要求の実現が最重要課題となります。受託加工といっても、他社の工場で開発・製造されていた製品を弊社で作る訳ですので、実は新規開発と工程は同じです。そのため、既存の製造から作り出された標準工程原価表を毎年作成することで、素早い見積もりの作成を実現しています。

このビジネスでは工場管理についても顧客の厳しい目が注がれます。いわば工場そのものが商品といえます。そのため、常に工程管理、衛生管理、従業員管理などの向上が、求められます。弊社では、そのために各ラインごとの緻密な製造スケジュールが立てられます。これらは、6ヶ月先までの細かな工程まで入れたものであり、弊社の製造管理にかかせないものです。弊社ではこれを「バンキョー製造管理スケジュールシステム」と呼んでいます。弊社の製品のすべてが受注生産品でありそれぞれに納期が設定されていることから、最適なスケジューリングこそが弊社の製造業務にとって必須条件なのです。最も効率的な生産とは、出荷前日に製造・品質管理試験が終了することであり、これによって不良在庫を減らし原料・資材在庫の最適化が図れます。このスケジュールは各部門の責任者が参加して作成され従業員すべてがいつも閲覧できるようになっています。そのため、全員で物作りに参加できるのです。スケジューリングこそが弊社の最も大切な生産管理・利益管理手法といえます。顧客の急な仕様・納期変更要求にもこのシステムを活用することでフレキシブルに対応できています。これは、弊社が顧客に支持される大きな要因です。

加えて各製造ラインの品目ごとの変更のスピード化も利益確保に欠かせません。予定どおりの進行を行えるための設備導入・マニュアル化・作業者教育も重要な戦略です。弊社の理念にある顧客への迅速・安価・確実・快適なサービス実現をお客様に実感していただけること、このことこそが、重要と考えます。この成果を確認していただくため新規顧客はもちろん既存顧客には、年1回の工場査察をしていただき、指導・改善を行うようにしています。また、他工場の見学を行うことで、それらを進化させる努力をしています。

上記で掲げた戦略には具体的目標のあるものとないものがあります。 まず、スケジューリングには6ヶ月先まで作成することを目標としています。各製造の工程は不良の内訳を明確にしてそれぞれに目標値の設定を行っています。また、それぞれの標準工程時間を設定して、生産最適化を目指しています。

開発業務はその性質から1年単位でのスケジューリングしかできていません。 各指標についての評価・改善については日々行っております。最大の課題は最適納期を実現することです。納期にあわせて以前から製造するということで現在は対応していますが、よりジャストインタイム製造ができるような改善が必要です。開発業務も製造に近づけるような工程管理が望まれています。

4.2 戦略の展開

戦略の展開には、話し合いが欠かせません。各部門代表の3名の経営幹部はそれぞれ机を並べて仕事をしています。以前は別々の部屋で仕事をしていましたが、話し合いや情報の伝達に支障をきたすようになり、平成16年の6月よりワイガヤな井戸端会議システムをとることにしました。大企業であれば不可能なことですが、全従業員70名の中小企業ならではの方法です。また社長自らが、各作業に深く精通していることもワイガヤが運営しやすい理由です。最近では、これがリーダーを交えたリーダー会議に発展していっています。また、戦略の展開には、各従業員の認識・能力の向上が欠かせません。年度ごとの戦略での単年度計画の数値目標は、経営コンサルタントとの月1回の話し合いで現状確認が行われています。この作業はコンサルタントと社長、専務の3名で行われることが多いですが、その会議の中で必要に応じて従業員との直接面談も行って戦略計画の実効性を向上させるようにつとめています。 戦略の実行展開ではビジネスパートナーとの連携も重要です。6ヶ月先のスケジューリングをパートナーと共有することで、その整合性をはかっています。これは、パートナーと同じ情報で考えるという点で好評を得ています。旅館であれば、満室になれば宿泊を断ることが出来るのですが、健康創造産業の弊社は基本的に品切れや納期遅れを起こすと、メーカー、流通、小売店、最終消費者まで図りきれない損害を与えてしまいます。

策定された計画についてのリスクは、それぞれに存在しています。もっとも大きいリスクは予定された納期に製造ができないというものです。これは宅配ピザの配達時間と同じく弊社のサービスに重大な影響を及ぼします。これの把握については6ヶ月単位でのスケジューリングに加えて1週間単位の人員配置を含めた細密スケジュールを作成して対応しています。また、万が一の製造設備の故障に対応するため、予備機を準備することを怠りません。これは弊社の工程が、クリーム剤、軟膏剤、液剤の数種類の製造工程に集約されることから機械に兌換性を持たせていることで実現できています。

また定期的な機械のメンテナンスや作業室の環境試験を行うことでこのようなリスクを回避する努力を行っています。また、これらの設備を売上げにあわせて、増床、増築していくことも弊社の重要な戦略の展開として必要です。 それぞれの評価は定期的に行われ、そのたびに改善が行われています。課題の取り組みは毎週の従業員研修会で話し合われ、それぞれに達成時期の確認を行っています。

5.個人と組織の能力向上

5.1 組織的能力

弊社では、組織の価値観やビジョンに共感しやる気を出すために朝礼の推奨をしています。朝礼は全従業員が集合する月1回のものとグループごとに行われるものがあり、いずれの場合も経営理念の斉唱を最初に取り入れ価値観の共有を行っています。 弊社では経営理念のほかに行動理念として「やる気」×「元気」×「本気」×「人気」を掲げています。これは、会社のなかでの個人のあり方を表した言葉です。やる気も元気も本気も基本的な社会人として必須の条件といえます。しかしながら、人気がない人は会社という「集団力」を発揮できません。ですからこの行動理念は4つの気を掛け算してこそ能力であるとしたものです。会社は才能を競う場ではなく、助け合う場であるべきです。また、1年に1回、全社、各部門の年間スローガンを策定します。

平成17年度の全社スローガンは、「目指せ!上機嫌ナンバーワン!」です。これもおなじ人気にあたるものですが、自分も相手も上機嫌のwin,winの関係こそ目指すべき社会人の姿であると弊社では、考えています。このほかにも各課それぞれの年度ごとのスローガンをつくり、各部屋に掲示することで、モチベーションの共有化を図っています。

また精神面だけではなく、すべての部門での達成すべき仕事の能力を細かく「モジュール化」しています。ここには、それぞれの目指すべき技術や能力の指標を作成しています。これらのモジュールには、呼応する形でそれぞれ従業員が工夫してつくった「習熟マニュアル」がつくられており、他部署から転籍になった場合でも、これらのマニュアルを元に学習や教育を受けることが可能です。弊社は精神面、技術面の両方で従業員の教育を行なっています。

従業員の採用については、現在全国の大学、地元の高校、ハローワークなどを通じて不定期に行っています。また、派遣会社からの人材も供給を受けています。会社の規模にあわせて必要なときに必要な人材を集めるというのが会社の考えです。また、ホームページには弊社の考え方やフィロソフィーを示すようにしています。その中でも、社長である松浦信男の発言などをたくさん載せて企業の歴史、特色や考え方を明らかにしています。弊社の入社を希望する人はあらかじめこういった資料により会社について知ることができます。また、面接の際でも仕事内容を実際に見学して作業を確認し、希望するものは実際の作業に近い試験を行うことで能力や適正の確認を行っています。また、その際に作文を書いてもらい、夢の実現のために自分が会社でやってみたいことを書いてもらいその内容も採用の際に参考としています。また、採用については積極的に女性の登用を行い、育児休暇など働く女性の社会参加のサポートを行っています。これは経営幹部の専務が子育て中の女性であることから出た考えです。

配置については現在、総務、製造、品質管理の3部がありそれぞれの希望や適正を考慮して会社が定めています。弊社の教育は先輩が後輩に指導するある種、徒弟制度のような指導を行っています。弊社では、マニュアルを超える魂の指導を目指しています。そのなかで、自らのやる気を発揮することで、社員、リーダー、部門長という順に昇格できる仕組みになっています。また、社員が社内外の人とよりよい関係を構築するために全社集会、成果発表会、研修旅行、誕生会、自社製造化粧品の販売活動などを通じて組織的能力を高める働きかけを行っています。

従業員の体系はフルタイムの社員(月給制)、フルタイムの契約社員(時給制)、パートタイムの契約社員(時給制)、派遣社員の4つのスタイルで成り立っています。弊社では自社の雇用形態によって仕事や待遇に差はありません。それぞれの意志と実績と評価によって体系の変更も可能です。雇用形態による差別をなくすことは社長の強い思い入れからです。実際に契約社員のリーダーが社員の上に立ち指示することも日常的に行われています。組織内の協働については全体集会、リーダー会議、従業員研修会などを通じて行われています。現在は、リーダーより下の従業員の意識を高めるにはどうすればいいかが、課題となっています。特に派遣会社は数社から入れ替わり人員が派遣されることが、協働意識をさまたげている原因となっています。このことは、現在の弊社の新しい課題です。仕事の量が急激にふえていることから、自社雇用だけでは人員の確保ができないことから、派遣会社からの人が増えています。モチベーションの向上をいかに行うかが弊社の成長のカギとなるでしょう。

各部門のリーダーは三重県が毎月行なっている経営品質向上プログラムの月例会に参加したり、話し合いの場を多く設けていますので、経営品質向上に意欲的です。しかし、それ以下のサブリーダーや他の従業員はまだ、活動の全体像がつかめていないようです。そのため、月1回の全体集会の時間をつかって、問題解決のミーティングを行なうようにしています。

3名の経営幹部ならびに総務部のリーダーは常に社長と机を並べていますので、教育の機会が日々あるといっても過言ではありません。しかし、現場のリーダーは日々の製造や開発におわれています。そのため、弊社では現在、このリーダーの数を拡大して3名に1名がリーダーとなるような少人数体制のチームづくりを目標としています。すべての人にリーダーとなってもらえるチャンスを増やしたいと考えています。人は他の人のために何かを考えるときに、最も成長するものです。組織能力すなわち人の能力向上であると考えます。このことを理解させるには、現在のリーダーが喜びを持って部下を指導していかなければ、誰もリーダーになりたいとは、思わないでしょう。

目標の設定と達成状況の把握については、従業員の入社資料、キャリアアッププランを通じて従業員が会社に求める姿の調査を行っています。ここでの成果を従来の成果と比較することで、成長を促しています。これらの改善・革新を進める上での課題の発見は主に上で述べた2つの会議で発見されることが多いです。その中で多いのはいかに各部門間の連携を密にしていくかです。それぞれの決めごとをいかに各部署に間違いなく伝達し理解を深めるかが課題です。これについては、達成の時期を設定していません。

5.2 社員の能力開発

「学園祭の前日」この言葉ほど弊社の日常を表す言葉はありません。実際のところ、毎日、こなしきれないほどの仕事が常に会社にもたらされています。経営幹部は常日頃、「私達は、自らの成長のために会社存亡の危機を意図的に作り出す!」と明言しています。社長は阪神大震災から立ち上がったときのダイナミズムをいつまでも持続させたいと考えています。そのためには、大企業やお役所的な計画経済ではいけないといっています。組織の目標を達成していくためには、今後、経営理念のより深い理解が必要です。また、そのためには各人がいろんな種類の仕事をこなすことのできる能力と経験が必要だと考えています。また、顧客のことをより理解するには社長や営業部と従業員の対話がもっと必要と考えます。しかしながら、社内外の協力関係を強めるためには、企業人としての弊社従業員の人間的成長が欠かせません。これには不可能を可能に変えるチャレンジスピリッツが必要です。このための状態こそ、不安と期待の入り混じった学園祭の前日状態といえます。あらゆる部門が協力しなければ、乗り越えられない日常、これこそが中小企業における学習ではないでしょうか?

それとは別に会社としては、社内外の関係についても企業理念にのっとった自らのみの利を強く否定しています。今後の弊社の専門性・顧客理解・協力関係を高めるために社長は全従業員の心身共の向上を強く願っています。具体的な方法については、弊社では社員の能力を高めるために、全従業員のキャリアアッププランを実行しています。人にはそれぞれ持って生まれた特性や個性があり、なかなか一つにまとめることは難しいものです。しかしながら、会社は個人の能力を集団力に変えていかなければなりません。そのために作り出されたのが従業員それぞれの習熟目標をさだめたプランなのです。

ここでの具体的な内容は先に述べた「モジュール化」された各部門の仕事内容のそれぞれの達成度で評価が可能です。これを作成し実践することで、部門間上下間のコニュニケーションがはかられ、各人の努力と成果が客観的に認識することが可能です。ここでの成果は賞与や昇給の重要な資料となっています。年2回の査定の結果は個人面談で知らされますが、その際に自分の点数を知ることができます。キャリアアッププランはそれぞれの従業員にオーダーメイドの個人指導という形で行われますので、このことで、自部門での自分の位置やこれから取り組むべき課題についてよく考えるようになります。弊社では、多くの種類の仕事をこなすことのできるマルチプレイヤーを高く評価しています。このことは、仕事の進めやすさだけでなく他者とのコミュニケーションに重要なことです。言い換えれば、「相手の仕事ができる人は相手の気持ちがわかる人。」であるということです。このことは弊社社長がもっとも強調して従業員に伝えようとしていることの一つです。そのためキャリアアッププランの最終面接は、必ず社長を交えて行うことになっています。この際には本人の努力をねぎらうとともに配置転換や転属についても話し合いができるようになっています。

教育訓練については現在リーダー社員以上については週1回の従業員研修会を実施しています。全従業員については各部署で行われる朝礼をはじめとする各種ミーティングや全社研修会を開催しています。

また会社から社員能力を開発するに適当と考えられる本を定期的に配布しそれについて感想文を書き提出する「バンキョー読書感想文コンテスト」を実施しています。その中で社長は「各人のものを考える深さが、会社の宝」と言っています。そのためには、知識を自らで汲み取る読書を社長は「最も大切な研修行為」と位置づけています。社長は「インプットを超えるアウトプットは、この世に存在しない。」といつも力説しています。

また、その一環として弊社従業員のありかたを諭した「バンキョウフィロソフィー」を題材にした論文大会も実施しています。毎月1回行われる当月誕生を迎える従業員を社長室に招待して一緒に昼食をとる「バンキョー誕生会」では、直接社長にプライベートも含めて触れあえる機会として好評を博しています。社長の考えでは、家庭よりよい楽しい会社を目指すのだそうで、そのためにもこの会は重要と考えています。 「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」も社長との直接対話が公開で楽しめるという点では、提案した本人とともに他の従業員にも影響を与えています。

また、社長が所有する膨大な書籍類、CD、DVDなどの音源・映像ファイルを会社設備にて全従業員に公開することで、広いジャンルでの学びの姿勢のすすめを行っています。明治以来日本人が目指した「個人主義の確立」には「会社での集団力の結集の経験」こそが最重要と社長は常に言っています。現在の日本では、真面目に考えることが、重要視されずに享楽を追求する人間こそが、人生を楽しんでいるように言われています。社長はそのような傾向に、おもいきりNO!と言います。「一人の人間の考え方に共感して自分もその輪に加わりたいと思い積極的になっていく、」社長はこの現象こそがすべての会社の原点であるべき、と言い切っています。社長はこのことをひとことで、「まず従業員が、万協製薬のファンになって欲しい!」と表現しています。小さな会社が、日本を変えることは難しいかもしれません。しかし、せめて自らの関係する内外の組織はこの思いを伝えていきたいと社長は常に話しています。会社のみんなとともに人生を考える会社、そんな会社があっていいのではないでしょうか?これこそ、中小企業の醍醐味ではないでしょうか?

社長の各地での講演の記録は各メディアに記録されバンキョウコミュニケーションボードを中心としていつでも従業員は接することができます。目標の設定と達成状況の把握については、各種の会の開催度やその満足度を調査するようにしています。また、集会には十分話し合いの時間をつくるとともに、アンケートをとりそこで出た、提案や不満は可能な限り改善するようにしています。また従業員の個人の仕事での成果は、大半がキャリアアッププランに集約されています。ここでの成果を従来の成果と比較することで、成長を促しています。目標は前年度10%以上の向上です。これらの改善・革新を進める上での課題の発見は主に各種会議とキャリアアッププランで発見されることが多いです。その中で多いのはいかに各部門間の連携を密にしていくかです。それぞれの決めごとをいかに各部署に間違いなく伝達し理解を深めるかが課題です。

また、多くの従業員がさまざまな研修活動に参加できるしくみづくりがもっと求められているようです。現在は、さまざまな社外研修をそれぞれの適正にあわせて受講してもらっています。

5.3 社員満足と職場環境

社員が仕事を通じてお客様や社会に貢献できたかについて、弊社では各種の会議や集会を通じて社員に問いかけています。弊社では、社員が満足にいく仕事をするために経営者や上司の支援や組織作りの状況について、1年に2回、「従業員満足度調査」を行っています。これは、キャリアアッププランの従業員面談のあとに行われているものです。ここでは、お客様や社会に対する社員の貢献度に対する会社側の支援が十分であるかどうかについて問いただしています。また、これらが十分であるかどうかについての判断する基準は特に設けていませんが従業員満足度調査を通じて、おおむねつかめているものと考えます。社員が仕事を通じてお客様や社会に貢献する意欲を持つことについて、いま一番課題となっていることは、各人の仕事がいかにそれらと結びついているかということへの認識の薄さだと思います。これは、自身の仕事がお客様や社会に結びつく全体像を描けないと言うことだと思います。この課題を克服するために弊社では、各種の集まりの中でお客様・社会との共存を伝えるようにしています。また、顧客とのミーテーングに複数の部署が、参加してさまざまな意見を伺い、コミュニケーションを行うようにしています。社員が満足のいく仕事をするために、会社がなすべきことで不足していることは、経営者とのコミュニケーションとエンパワーメント、適正な組織への定期的な変更だと思います。これについては、「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」という社長への従業員からの提案書の内容を重要視しています。会社が拡大するにつれて、社長が直接、話し合える社員が限定され、それによって不安や不満があることを、この社長への提案書から知り得ています。これらの内容を精査することで、社員満足と職場環境の有効性について、「全従業員のやる気とエンパワーメントの同質化」を目標とした改善、革新を行っています。

目標の設定と達成状況の把握については、「キャリアアッププラン」と「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」のより充実を目標としています。具体的には、前者においては、現在、各部門で個別に行われている目標設定や評価を全社統一の基準として評価できる内容を追加することや顧客や社会の理解・貢献といった項目を追加したいと考えています。後者については全社員月1件の提案提出を目標としています。達成状況の把握としては提案件数の把握や従業員満足度調査などを行っています。「社員満足と職場環境」の評価・改善につきましては、キャリアアッププランの評価については、毎年行われる従業員満足度にて行っています。これによって明らかになった課題は、従業員の能力向上意欲や仕事への考え方に差があることです。これらのことについてすべての従業員が同じになることはないと思いますが、会社として求められる従業員の姿勢についての教育を行うべきと考えています。そのことを、キャリアアッププランの中に導入して、また評価・改善につとめたいと考えています。また、経営品質のセルフアセッサーの養成も課題としています。現在のアセッサーは経営幹部の3名ですが、現在のリーダーには順次取得を目指したいと考えています。「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」の評価については、提案に対して社長が返した答えを全従業員に公開するとともに、定期的に追跡してその状況も報告しています。このことによって明らかになった課題は、会社で起こっている出来事や決めごとが十分全社員に伝わっていないことがある。ということです。これについては、新たな伝達方法についてたとえば、社長とリーダークラスとの対話の回数を増やすなどの検討を現在、行っています。

6.顧客価値創造のプロセス

6.1 基幹プロセス

弊社で新製品の開発のときに一番大切に考えていることは、「世の中のためになるものをつくる。万協製薬の製品・サービスは、安心・安全・安価であり弊社を利用してくださった顧客を絶対にがっかりさせない。」という強い思いです。職業に貴賤はない、とよく世間では言われています。しかしながら現実の社会では、顧客がそれぞれの企業に求めている期待や責任度合いには、ずいぶん業種や企業によって差があるのではないでしょうか? 弊社が手がけているスキンケア製品は現在、医薬品・化粧品が大半を占めています。

医薬品を例にとって考えてみましょう。虫さされの薬は、かゆみがとまらなくてもいいでしょうか?水虫の薬は、水虫が治らなくていいでしょうか?答えはNO!だと思います。では、それぞれの症状が薬を使うことで治るとしても、副作用があってもいいでしょうか?これも、答えはNO!です。では、虫さされの薬や水虫の薬がいくら安全で効き目があると言って1個五千円~一万円したら買って頂けるでしょうか?これも顧客からの答えは、NO!です。弊社がテレビでCMをしていなくて上場もしていない会社だからといって日本の大手有名製薬企業の製品に比べて質感が悪かったりしてもいいでしょうか?これもNO!です。パッケージの中に髪の毛が入っていたら、どうでしょうか?製品に直接ふれない部分だから顧客は、気にしないでしょうか?弊社の手がけている製品やサービスは、顧客の期待がきわめて高い市場といえます。とくに日本人は薬に特別な思い入れや期待をもっています。聖徳太子が奈良県に建立した薬師寺の役目は、薬を調剤して渡す「くすりや」でした。人気の時代劇の水戸黄門が出す印籠は実は旅行中の携帯薬入れです。日本では、医は人術といわれます。医者の対応が大切だということを諭したことわざです。しかしながら、本当のところは医は薬術の度合いが高いのです。日本では、医師の診察を受けること=薬をもらうこと、という考えが古くからあります。安心・安全・安価な医薬品の提供は、実は日本国民の共通した願いなのです。これは弊社が手がけているスキンケア製品でも同じなのです。弊社はこのような日本社会で創業以来46年間、この思いを忘れることなく大事にしてきました。

新製品を開発するときの考え方の順番は、「弊社がその新製品を手がけることで、他者との差が企業理念にうたっている内容において差がつけられるか?」ということをまず最初に考えます。日本中のスキンケア製品をつくることはできないわけですから、弊社が手がけるべき仕事については十分なる調査や吟味を行います。また、新製品の開発のはじめの段階で確認している情報としては、まず、顧客である40社のお客様の意見を最大有効情報としています。彼らは直接、販売店や医療機関に接点があり専門の企画・営業部門を持ちスタッフを抱えています。弊社は自社で販売組織をもっていませんので、顧客からの要望は最優先実現項目としています。これらの顧客の要望を対話によってつかみ、実現していくことが仕事の最初でかつ最大に重要な手法と位置づけています。

顧客との対応は、営業の責任者である社長、営業スタッフをはじめとして各部門のスタッフも参加して行っています。この顧客との全社部門との対話やコンサルティングを弊社は、最も重用に位置づけています。市場情報については、雑誌、放送媒体、店頭、ビジネスパートナーなどから入手しています。技術情報は、定期的に購読している専門技術誌、各セミナー、研究会などから得ています。自ら保有している技術や情報も含め顧客との重要なコンサルティングに活用しています。また、自社が46年間に実験を繰り返してきたスキンケア製品に関するデータはもっとも、独創性が高く有効な情報となっています。これらは医薬品だけでなく化粧品などの他のスキンケア製品の開発にも有効に使われています。開発課は品質管理部に所属しています。これは、少人数で業務を行なっていたときの名残ですが、使用機器が1箇所にあるほうが便利であるため、現在も同じ部屋にあります。この開発課では、できるだけお客様と直接会って、または電話・文書行なうミーティングを大切にしています。自社の持つ能力とお客様の要求や知識が多ければ多いほどよい製品になると、弊社では考えています。このため、打ち合わせ室を4箇所設けて、お客様との対話を円滑に行なえる工夫をしています。これらの自らが保有している知識や情報は、会社の書類は文書保管室に、デジタルデータは自社のコンピュータサーバー上に分類され保管されています。そのため、必要な情報を必要な人間が自由に取り出すことが、可能です。

製品を作るときの手順ですが、弊社は基本的に製造する大半の製品が「相手方の求める仕様による受注生産」です。ですから、顧客が、いつ、どのような製品をどのくらいの数量必要かということを知ることが大切です。まず顧客からの受注を前もって6ヶ月先まで、前期の売り上げ実績データを元にして話し合いなどの方法でつかむようにしています。顧客はつねにジャストインタイムの生産を望みますが、弊社の100種類を超える製品を品切れすることなく供給するためには、少なくとも4ヶ月前の予定注文・2ヶ月前の注文確定が必要です。弊社がアウトソーシングサービスを続けていくために、実は最も重要な仕事がこの製造スケジュール管理なのです。これを、弊社では「万協生産管理システム」と呼んでいます。自社で作った製造予定を、コンピュータ上の、一連の細かいスケジュール管理ソフトに落とし込んでいきます。これによって、製造管理が誰でも目で見て分かるようになっています。よって材料調達のタイミング、人員の調達や製造機械の管理、出荷のスケジュールなどが関連して作成され、各社員のパソコンで確認できます。このことは、情報の共有化を容易にしておりまた、顧客との仕様や納期の話し合いについても重要なツールとなっています。すべての会社の業務はこのシステムの延長線上にあります。商品管理、物流管理、納期対応、製品をつくるときの量・質の確保、コスト管理、在庫削減などもこのシステムを細かく運用することで、改善をおこなっています。

また、工場での製造設備についても予算を決めて各ビジネスパートナーから生産改善のための設備投資についての提案を受けその中から有望なものの順に実現しています。弊社の社長の考えは「量産化技術は金で買え!」です。平成7年の地震によってすべての設備を一瞬にして失った社長には、人一倍機械への思いが強いのです。年々増え続ける顧客の要求の実現には機械による製造が不可欠です。社長はいつも「ノウハウやスキルは基本的には個人にしか、宿らない、しかしそれを補い会社の集団力として残す方法がある。それは、人と人の間に機械を入れることだ。」と言っています。弊社ではそのため機械やその工場環境の設備投資に力を入れています。また、できるだけその際も業界で定評のあるメーカーの機械設備を購入しています。つまり、自社だけで仕事の改善を行うのではなく積極的に外部の機械メーカーのビジネスパートナーの意見を入れて工程の改善を行うべきだということです。人の能力はそれぞれです。会社が求める要求を実現するためにはペースメーカーとしての機械と人との調和が必要なのです。機械を使って、仕事をしなければ量産化技術は進歩しません。そのためには、他業種の知恵を借りることが重要だということです。毎年原価率2%ダウンが目標です。

製品を販売するときの手順ですが、弊社では受注目的の顧客訪問専門の営業担当の社員をおいていません。相手先が訪問を希望する場合も、社長自らが顧客を訪問することが多いです。これは、弊社のサービスが自社工場を使って行われるものであることから、打ち合わせが弊社で行われることが、多いことから専門の担当を作らなくても工場のそれぞれの担当が対応することでスピーディーな打ち合わせが可能です。またこのことが、他部門の従業員とお客様の対話の機会となりお互いの気づきを多く生み出しています。ですから、見方によっては、新しい顧客獲得には熱心でないといえるかもしれません。それよりも既存顧客に満足のいく製品の提供を重要に考えています。製品の提供には、相手から仕様を決めて、仕事を依頼されるものと自社が開発した製品を提供する2種類があります。自社開発品はその製品が開発の最初の段階から有望であると判断される相手先に情報を開示しながら行っています。販売はすべて相手先の顧客が行っていて、自社では自ら最終消費者への流通に携わっていません。ですから、販売に必要な情報は販売先顧客と製品を販売している販売店での店頭調査から得ています。しかし、平成17年度からは弊社開発商品の自然派無添加化粧品の販売を弊社従業員も行なうことになりました。このことにより、お客様のニーズや製品へのこだわりがよりいっそう進化するものと期待されます。

製品を販売するときの売り上げ・利益確保には自社の「製造原価表」を細かく作成しています。これは毎日の生産表と呼ばれる製造時間・製造数量・ロスなどが記載された表から算出されます。ここから導き出される原価や一般管理費を年度ごとに更新することで、実際の工数とコストが釣り合っているかを詳しく調査しています。価格管理については、最終製品が弊社の名前が表示されているものについて、厳しく管理しています。ある1社のもののみが市場で安価に販売されることのないよう弊社出荷最低金額を定めています。広告宣伝・販売促進については、顧客へのダイレクトメール、業界紙への広告、顧客への会議・勉強会の開催などを通じて行っています。

販売後のアフターサービス・メンテナンスについては、全製品の使用期限+1年の保存サンプル自社内に確保することにより、顧客からのクレーム問い合わせや品質上の問題について迅速に対応できる品質保証課を自社に設置しています。また、消費者相談窓口をもうけて最終消費者の質問や相談に専門の薬剤師が電話にて対応を行っています。連絡先は製品のパッケージにわかりやすく表示されています。この結果は、製品ごとにデータベース化されアフターサービスの重要な情報として顧客と共有しています。また、発売した製品について、顧客から売れ行き、改良点などを評価してもらっています。相手先仕様の製品については、クレームのあるたび原因調査を行い、報告書の形で原因・改善点などを顧客に開示しています。

また、顧客には、弊社・工場を年1回程度の間隔で査察を行ってもらい、設備・書類・教育などGMPの観点で、改善が行われているかの評価をしてもらっています。これら上記のプロセスについては、そのつど顧客から意見をもらい改善するようにつとめています。顧客満足度調査については、それぞれの企業に年1回行なっています。ここでのクレームも個別に対応して満足度の向上に努めています。これらのプロセスの運営が適切であるかどうかは、それぞれの記録を顧客別に管理することで、確認しています。弊社の組織にとって基幹プロセスの有効性は、顧客別の売り上げという視点から確認することができます。弊社のサービスが不完全で顧客の満足を得られていないならば、売り上げが低下するからです。そういった顧客へは、なぜそのようになっているかを話し合うことで、原因の分析・改善を行っています。

基幹プロセス全体の目標としては、「弊社からみたサービスと顧客側からみたサービスが同じように感じられる、レンタルビデオ店の料金表のようなサービスを実現できるプロセス」を目指しています。なぜ、このような目標を立てたかというと、弊社が日本全部のスキンケア剤をつくることができないからです。これは、物理的に不可能です。であるならば、既存の顧客に「万協製薬に仕事をしてもらってよかった。万協もこの仕事をやってよかった。」という委託側、受託側双方の満足度を上げることこそが、中小企業の規模である弊社の最大到達目標であるからなのです。この既存顧客との親密な関係の維持の先にクリーム剤製造、日本一という究極の弊社の目標到達があると考えています。基幹プロセスの見直し、改善・革新はビジネスコンサルタントと取締役員による戦略会議、経営幹部4名による経営会議、リーダーを含めた従業員研修会を通じて、逐次行っています。

6.2 支援プロセス

弊社での主要な支援活動は、営業や製造、品質管理の各部門の業務サポートやそこで働く社員の勤務や納税、健康維持などを円滑に進行するための業務です。これらの業務は主に、総務部が担当しています。現在、総務部は4名と少人数で運営しています。 弊社の業務の中で、大半の連絡は電話、FAX、メール、各種郵便物などによって行われます。それらはすべて一度、総務部の窓口を経て処理されています。内容によって総務部が単独で対応するものと、他の部門と相談しながら処理するものとがあります。

いずれにしても、総務部の中での経理課と営業課のいずれかが、対応しています。また、経理部門、営業部門、製造部門の一部については外部委託のビジネスコンサルタントとコンピュータソフト会社に一部業務を委託しています。これらの支援プロセスの基本的な考え方や運営方法での一番大切にしている考え方は、「スピード」と「確実性」と「経済性」です。その理由は、顧客や弊社の各部門から上がってくる案件は、できるだけ確実に安価で短い時間で処理することを求められているからです。その活動、機能やサービス内容を企画・計画するときも考え方の順番としては、早く、確実、安価の3条件が満たされているかを重視しています。

各部門や顧客から上がってくる要求は総務部と経営幹部との話し合いを経て、仕組みの中に組み込まれます。また、会社の中にあるコンピュータネットワークや「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」も情報開示や意見集約の際に活用されています。このとき、初めの段階で確認すべき情報としてはやはり各部門や顧客からの声です。顧客からの「基幹プロセス」への意見や市場情報、技術情報、自らが有している情報をとぎれなく通し各部署との連携を行うことで活用が容易となるよう努めています。サービスに必要な要素を準備・用意するときに必要な情報は、それぞれの部署や顧客からの発信に頼っています。それぞれのプロセスの管理・改善、不具合の発見、問題の再発防止についてはそのつど、必要な場合に行っています。

このプロセスが適切に運営されているかは、電話の呼び出しコール回数、従業員満足度調査、顧客からのクレームの回数や返答までの時間などで、確認を行っています。支援プロセス自体が4名と少人数の実行によるため、運営については必要と思われる事項の発掘より依頼を受けて行うことのほうが、多いです。しかし、弊社の支援プロセス実行員は弊社の経営幹部と机を並べていますので、打ち合わせや決定に至るまで、スピーデイで確実な対応が実現できています。今後とも少人数でスピード、確実性、経済性を兼ね備えた状態の支援プロセスでありたいと考えています。

2004年度からは、第一、第二工場と2拠点となったことから、スペースに余裕のある第二工場に支援プロセス本部を移し、第一工場には各部門からサポートメンバーを出してもらい、対応しています。それぞれの工場にはイントラネットがいきわたっていますので、あらゆる情報が共通して活用できるシステムとなっています。弊社としては支援プロセスは、実質上経営幹部もサポートしていますので、改善・革新については十分日々行われているものと、考えています。 「支援プロセス」の評価・改善につきましては、自社の各部門、顧客からの要望によって改善していきたいと考えています。

6.3    ビジネスパートナーとの協力関係

弊社が外部に協力を仰いでいる仕事の会社は、

  1.    弊社製品の製造・品質・環境管理に必要な原材料の製造メーカーおよび調達商社(約20社)
  2.    弊社製品の製造・品質・環境管理に必要な自社設備の機械製造メーカー及び商社(約10社)
  3.    弊社取扱販売品を製造しているメーカー(2社)
  4.    弊社に勤務する社員の福利厚生を目的とする会社(2社)
  5.    外部からの派遣人員を選定し、弊社に派遣する派遣会社(5社)
  6.    弊社の経理・納税事務をアウトソーシングしてもらっているビジネスコンサルティング会社(1社)
  7.    弊社のコンピュータ情報部門のシステム会社(2社)、弊社製品や資料をお客様に届けたり一部の発送業務を委託している運送会社(3社)
  8.    大学など他の研究機関との研究業務を共同で行なう研究委託会社(1社)

と大きく分けてこの8つに分類されます。

これらのビジネスパートナーの選定基準は弊社の企業理念にかなっているかどうかということを、第一の選択条件としています。なかでも、企業理念第五条にある「万協製薬は、独創性を持ち迅速・確実・安価・快適であることを最高の価値基準とする。」の条件を満たしているかどうかを重要視しています。これらのビジネスパートナーへの弊社が求めるサービス内容、品質、納期や価格、改善提案については、経営幹部会議、リーダー会議、従業員研修会などで話し合われ、それぞれの担当者から直接、電話、FAX、場合によっては相手の会社を訪問して伝えています。

仕事を迅速に進めるためにビジネスパートナーとの情報共有は重要です。弊社では、ビジネスパートナーとの話し合いにはその必要とする直接の場所をみてもらい、部署の担当者を同席させています。よって、パートナーはより具体的に弊社の要求を理解できます。また、社外の資材担当メーカー同士が直接連絡をとり連携して仕事を円滑に進めてくれるようにもなってきました。なかには、弊社顧客に打ち合わせで訪問してくれるパートナーまで出てきています。すべての担当者に経営幹部は面識があり、会うたびに幹部自らが、自社の状況、考えについて熱く語っています。いわば、弊社にとってビジネスパートナーは社外社員なのです。ですから、短い期間での担当変更には意義を申し立てることがあります。それが、パートナーにとって良いことにはならないことを話すようにしています。

しかしながら同時にパートナーの提案が、世間的に見て妥当であるかどうかを弊社は知らなければいけません。そのためなるべく2社以上に同じ提案をすることで、パートナー同士良い意味で競合させ、より良い成果を得られるようにしています。弊社では、 お互いが共存共栄をはかるため、弊社ではパートナーに対して不当な値引きを要求することはありません。あらかじめ、パートナーには、弊社が見積もりを尊重することを伝えて、最初からベストプライスで交渉してもらえるよう伝えます。そうすることで、よりよい提案を相手からしてもらえることを弊社は、経験しています。ここに「量産化の技術は金で買え」という社長の考えが、生かされています。弊社の目指すべき主要なビジネスパートナーとの協力関係とは。「万協製薬と取引して良かった。」とすべてのパートナーから、思われることです。つまり「共存共栄の共闘態勢」こそが21世紀のコラボレーションだと考えているのです。

現在の姿が理想的な関係と考えていますが、協力関係の見直し、改善・革新については、新しいパートナーにもできるだけ門戸を開くようにしています。新規の業者が訪問もしくは、こちらから調査して話をするときも積極的に会って話をしています。そのことで「新しい血」を入れるようにしています。また、既存のビジネスパートナーとの協力関係を調査する相手先満足度調査も考えてはいますが、どのようにしたら正直な結果が得られるのかわからず、まだ実施していません。

7.情報マネジメント

7.1 経営情報の選択と分析

経営情報の選択と分析については、弊社の業績、業務が9年間で30倍の成長を遂げたことから、重要度は認識しています。組織全体および各部門の業務能力についてですが、まず、会社全体としては総売り上げ、取引先別売り上げ、4つのジャンル別売り上げ、各製造ロットごとの製造原価また、それぞれの利益などの経営指標については、毎月1回試算表という形をとって総務部が作成しています。製造部では、各製品ごとの不良率、製造ラインの稼働率、不良率、製造予定に対する進捗状況等を具体的な数字と金額で把握しています。品質管理部では、製品ごとの試験データ、試験にかかった時間、人件費、製品開発の進捗状況、顧客との打ち合わせのまとめ等を具体的な数字で把握しています。

事業環境、市場情報などについては民間の調査会社のデータベースにおける自社の比較という形で把握しています。また、人材や技術動向 については業界紙やデータベースを利用して各部門が、自らの判断で集めた物を各種会議や研修会で話し合って共有しています。競争相手は同じような医薬品を中心としたスキンケアアウトソーシングに特化した会社が、日本で数社しかありません。ですから、選択をせずともそれぞれの会社の動向については、比較的、業界内の情報網によって掴めることが出来ています。

また、ベンチマーク対象企業は、1.スキンケア製品の製造販売を自社ブランドで行っている企業、2.スキンケアで医薬品以外の化粧品などの加工を行っている企業、3.スキンケア以外の医薬品の加工を行っている企業、4.食品工場などの製造工程が近似している企業と、 大きく分けて4種に分類して選択しています。上記に競合相手、ベンチマーク先については、選択し、意識しているものの、企業業績や内容を資料によって、掴んでいることと、可能な場合はお互いに工場訪問をして相互に研究・分析を行うようにしています。

7.2    情報システムのマネジメント

弊社では一昨年にビジネスパートナーであるコンピュータシステム会社に依頼して、「バンキョーイントラネット」と呼ばれる社内パソコンネットワークシステムを稼働させました。このシステムの導入は、数年前のある顧客からの弊社への査察が、原因でした。弊社の医薬品アウトソーシング製造業という職業柄、新規顧客は必ず、弊社の工場見学と弊社の管理システムを書類や担当者による面接を要求してきます。その顧客は日本で最も大きな小売業のバイヤーだったのですが、彼から、「従業員教育訓練の個人別の記録を見せて欲しい。」との要求がありました。その当時、弊社は全体の教育訓練の記録しか持たず、それを見せたところ、個人別の記録がないこと、それがデジタル化されていないことが問題であると指摘を受けました。最初弊社では、大会社らしい指摘なのだろうと思ったのですが、面接を担当した弊社社長の松浦は、その理由を聞いてみたのです。すると、「デジタル化されていない書類はないのと同じである。なぜなら、必要なときに必要な人間が閲覧できないと、書類は機能しないからである。」との回答を得ました。弊社では、その後もこの指摘について考え続けました。

確かに弊社では、いろいろなマニュアル、手順書、標準書は100冊以上あるのにその書類は1冊しかなく、それらの書類は経営幹部のいる部屋のキャビネットに入っているだけでした。「本当にこれでいいのだろうか?」そういう疑問を抱えるようになった経営幹部が、そののち経営品質に出会ったのです。それぞれの会社の幹部の方が、三重県での講演の際に「エンパワーメントが必要」という言葉を多用されました。日本語では、「情報公開による権限委譲」です。弊社社長は、この言葉にいたく感銘を受けました。この言葉を自社のものにするために、経営品質を導入したと言っても過言ではありません。よって、「すべての書類をデジタル化しよう!」という社長の発言によって弊社の情報システムは始まりました。

この計画には2社のコンピュータソフト会社のサポートを受けています。1社はこの業務システムをつくった会社、もう1社は、イントラネットを構築することで、システムをすべてのコンピュータに展開して維持管理するシステム維持管理会社です。現在は、それぞれの従業員机のパソコンだけでなく、携帯電話からもシステムにアクセスでき、問題に対しての即座の対応が可能となっています。また、このシステムを利用したサブリーダー以上による日記風日報を各人が読み交わしそれに意見を書き込むことで、より従業員同士のコミュニケーションも向上しています。また、他の従業員も各部屋に設置されているパソコンを使って、セキュリティのかかっている部分以外では自由にアクセスでき、コミュニケーションの参加できます。今後は、ボイスメールなどの新たなネットコミュニケーションを採用する予定です。

現在、新しく作られる書類は必ず「バンキョーイントラネット」に公開されています。もちろん、セキュリティーが必要な書類については、あらかじめ決められた暗証番号を入力することによってアクセスができるようになっています。また、工場間の情報の伝達には、データ送信する際に情報を暗号化することによって外部からの侵入を阻止しています。会社内の情報や連絡がネットに載るようになり、誰がどのような情報を必要としているかが、以前より掴みやすくなり、それに対する情報の提供も容易になりました。ただ、あまりに情報量が増えすぎているため、より利用しやすい情報の体系化が求められています。保存してある情報が消えたり、壊れてしまったりしないようにするための対策は、まずイントラネットの情報は、ミラーリングシステムと呼ばれる方式によって必ず、本体とは別に常にコピーハードディスク上に作成されています。

また、原始的ではありますが、紙による出力も行って、万が一に備えています。この中の情報に間違いがなく、信頼できるようにするために既存のコンピュータで部門担当員がそれぞれに作っていたデータをネット上に統一規格として載せるようにしています。そのことで、相互のチェックがされ、情報の信頼性を高める工夫としています。情報システムを構成するハードウエア、ソフトウエアの選定や運用規則は、経営幹部と総務部の合同の話し合いで行っています。イントラシステムについては、年間数回のシステム会社との打ち合わせのなかで改善について話し合っています。また、保守契約を結んでおり緊急のサポートについても対応できる信頼関係が、システム会社と構築できています。

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