経営品質活動Quality Management Activities

2007年度
三重県経営品質賞申請書三重県経営品質賞優秀賞受賞

組織プロフィール

「よき人、よき友を呼び、よきものを作り、よき世を創る。」

(1)組織が目指す「理想的な姿」

①組織全員で大切にしている共通の価値観(沿革と価値観を作ってきた組織変遷と環境変化)

*80%社長資本、90%地元人材のカントリーワークショップ

万協製薬株式会社は、1960年3月に兵庫県神戸市にて創業しました。2007年3月で48年の歴史を持つ、スキンケア商品専門の企画・開発・製造・販売メーカーです。

弊社の社名の由来は「万人が協力して、良い製品作りを行うことによって、弊社にかかわる、あらゆる人々を幸せにする。」という創業時のスローガンに由来しています。このスローガンができて約50年。弊社では、50年を節目としてあらたなスローガンを作成して、企業のあるべき姿を規定しています。この言葉を弊社では、組織価値を追及するための組織と事業の関係を表すものとして現在、「よき人、よき友を呼び、よきものを作り、よき世を創る。」と規定しています。資本金は4,000万円のうち経営者一族が80%を占める同族企業で、従業員数は約80名のうち90%が地元採用の一見、典型的な地方の製造業です。

 

②環境の変化と経営の変遷

*変革性を約束付けられた風土

万協製薬株式会社の創業のきっかけは、創業者である松浦太一が昭和20年代に始めた「薬局皮膚病研究会」です。この研究会は兵庫県の阪神地区の開局薬剤師が始めたものです。同じ販売業に携わる薬剤師が経営上の悩みや販売の効果的な方法について定期的に集まり意見を交換するといったところが始まりの趣旨でした。そのうちにメーカーが作った製品を販売するだけでなく会員で自分たちが考えた製品を製造しようという気運になりました。次第に販売量が増えていく中で、一カ所でまとめて製造してはどうかという話が持ち上がり万協製薬株式会社として新たなスタートをすることになりました。創業当初より万協製薬株式会社は製造のみに徹して販売は販売会社1社に一括して任せることになりました。順調に出発した万協製薬株式会社は日本の高度成長にあわせて順調に製薬会社として売り上げを延ばしていきました。しかしながら、薬剤師ばかりの素人集団では、思うように販路開拓ができず、売り上げは伸び悩みました。二代目社長である松浦信男の入社は、創業22年目の1982年でした。松浦信男は入社当初より「販売会社一社のみに依存した経営は危険である。」と指摘し続けましたが、長年かかって作られた方式を変えることは難しいものでした。

創業35年目の1995年1月17日に神戸は阪神大震災という戦後最大の巨大地震に遭遇しました。長田区は特に被害がひどく万協製薬株式会社の3階建て本社・工場は1階部分が挫骨して2階以降の建物が南側に約3メートル移動するという未曾有の被害を受け書類以外のすべてのインフラを一瞬のうちに失いました。再開には多額の資金が必要とされ、自社のみでは、再開の見込みが立たないことから、販売会社は再開に後ろ向きでした。そこで震災当時31歳で、将来2代目経営者になる予定であった現在の社長である松浦信男が、一念発起し、自ら経営の舵をとることになりました。震災後1年間は、現社長が大阪にある「東洋漢方製薬株式会社」にビジネスモデルを提案し、自らその会社の社長となり、そこで製品を製造することで商品ブランドを維持しました。そして、震災の翌年、1996年11月に三重県多気町に新工場を建設して本社・工場ともに移転しました。

*「顧客の要求を従業員各人が考える経営」により営業部のない全社員営業体制の確立

阪神大震災震災による自社工場をなくした経験が、現在のスタイルのビジネスを始めるきっかけになりました。つまり自ら工場・工程を持たない顧客会社様への製品の提供業です。このことは弊社の事業、組織の両方に最も大きな変化をもたらしています。それは、自社のみの繁栄を追求するのではなく、お客様と自社の双方が強く結び合ってこそ、よいものづくりができるという弊社のスローガンと一致する業務内容です。日々あらたな顧客からのさまざまな要求に全社で対応していくという営業スタイルは、既存の自社のスタイルにこだわらず、日々変革を組織に求める最大の原因となり「変革の約束付け」となっています。よって、弊社には「営業部」が、ありません。現在の会社・工場の敷地面積は20,000m2,延べ床面積は8,000m2です。2004年度に第一工場の隣接地に第二工場を新設し工場面積を拡張しました。約3年間かけてこの第二工場への設備投資を続けたことにより業界でも注目されるスキンケア製品専用工場となりました。弊社の行っている事業は、他社からの依頼を受けて、スキンケア製品の企画、開発、製造を行い、人々に「美と健康」を迅速、確実、安価、快適に提供することです。簡単な言葉に言い換えれば、「スキンケア製品のアウトソーシングサービス業」といえます。

日本における薬事法上の製造業の区分でいうと、弊社は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、雑貨品の5つの区分の製造業となります。弊社の業務の特長は、それら5つの区分のなかで、肌につける製品(スキンケア製品)のみを他社ブランドで企画、開発、製造をしていることです。スキンケアの製品を製造している会社は多くありますが、弊社のように医薬品から雑貨品まで多くの区分において「他社ブランドのために」アウトソーシングサービスを提供している会社は、全国でも数社を数えるほどです。その理由として医薬品分野では、近年法律(薬事法)が厳格化して製品化コストが上昇を続けています。しかしながら販売店では競争が激化し販売価格は下降するという逆ザヤ現象が起こっています。従来の医薬品製造メーカーは、主に内服剤(かぜ薬、胃腸薬、栄養剤、ドリンク剤)が売り上げの中心であり、多くの企業はそれらの需要が多く販売価格帯も高価な製品が売り上げの中心です。そのため、国内メーカーは内服剤の製造を手がけるメーカーがほとんどであるため他の剤形を開発製造することが難しくなってきています。そこで弊社が、スキンケア製品を開発、製造提供することによって、他社は自社製品に集中しながらスキンケア商品の充実を図ることが出来ます。

*三重県経営品質賞への取り組みで、組織的経営革新活動へ着手

2002年に三重県経営品質協議会での大久保寛司氏の講演を社長が聴き、青臭さの経営の必要性を痛感し、自らセルフアセッサーを取得し、2003年より経営品質向上プログラムの取り組みを全社挙げて開始しました。2004年より三重県経営品質賞に応募をはじめ、現地審査、フィードバックレポートにより自社のエンパワーメントの不足を実感しました。その後、弊社には「顧客の要求のより深い理解CS」と「従業員の働き手満足 ES」の両方を同時に追求することが経営革新につながると実感し、その2点に絞って、新たな経営品質品質向上活動を再スタートしました。そして2005年度には三重県経営品質賞の奨励賞を受賞することができました。

*新たな変革認識ステージへの挑戦

近年、「会社は誰のものか?」という議論がなされるなか、より増え続ける従業員へのESをより強化すべきという意見が社内から上がるようになりました。10年前たった3人から再創業した弊社ですがいつの間にか100人近い人員となり、部門間での話し合いの不足が問題を引き起こすようになってきました。そこでよりESを強化するべく「気づきの会議で築け!新しいESアンドCS」をテーマに話し合いの場を増やしたり、「プチコミファミリー制度」などのES活動を新たに始めています。これらの活動により、顧客、従業員、会社それそれの相互最適へのさまざまな取り組みの輪が、広がり始めています。

2007年度の全社年度スローガンは「Be daring!Be first! Be different ! 勇気を持って、誰よりも早く、人と違うことをしよう!」です。この言葉はまず、自分から行動を変えていこうとする気持ちを応援するスローガンです。各人の協力も大事だが、まず自分から会社を変えていく「意志」と「行動」を持とう。という意味で、このスローガンにそって各部門の目標設定や変革行動の取り組みがなされています。

(2)顧客認識

①主要な顧客・市場とその特長

*自社のみ開発、製造、販売から他社を巻き込んだビジネスへ

弊社の現在の顧客は日本に存在する約60社の製薬および化粧品製造および販売企業です。数千人の従業員を持つ上場企業から従業員数人の企業まで顧客の規模・形態は多岐におよんでいます。経営品質向上に取り組み始めた2002年当時、会社としては売り上げが上がり続けていましたが、それが何によるか理解できていませんでした。そのため、まず事業内容として、顧客認識や商品の種類によって4つのジャンルに分けました。

医薬品の自社企画・開発・製造・販売
他の企業が開発した製品を弊社で製造する受託製造
自社開発による相手先メーカーブランドへの弊社技術供与のOEM製造(この中には最近日本で増加しているチエーンドラッグストア向けのストアブランドの開発・製造品も含まれます。)
化粧品・医療機器・雑貨品の企画・開発・製造

以下にそれぞれについて、ジャンルの区分けの意味を表記します。

1については、おもに弊社が神戸時代に取引のあった販売会社の販路での自社製品を表しています。弊社歴史において、創業から35年目の阪神大震災までは、この1社の販売会社としか取引を行っていなかったことと、限定された市場での取引という点から、この販社との取引のみは別のジャンルとしています。言い換えれば創業以来35年間は自社の本来の顧客を認識しきれていなかったともいえます。

2については、弊社が三重県に移転してから積極的に行っている事業です。

現在、日本は薬事法の改正によって開発と製造が分離する傾向が進んでいます。特に2005年4月に改正法が施行になり、他社が開発した製品の受託製造が完全に解禁になりました。(2005年4月までは、1工程のみは、委託側が製造し最終製品試験も行わなければならなかった。)厚生労働省が管轄するこの業界においてもようやく他の産業と同じくファブレス化の波が、押し寄せようとしています。弊社はいち早くこの時代を予見しており、三重県立地の当初よりアウトソーシングサービス事業を事業のひとつの柱とすべく努力してきましたので、業界ではこのジャンルの先駆者となっています。治験薬、医療用医薬品、一般用医薬品、医薬部外品の4つの区分でこのサービスを実施しています。

3については、現在、弊社の2番目の売り上げ(総売上の約5割)を出しているメインジャンルです。三重県での再創業も当初は、顧客・インフラ整備・従業員育成などに集中せざるを得ませんでした。よって限られた予算のなかでは、弊社が直接最終消費者に製品を届けることは賢明ではないと判断しました。それよりもお客様の声を聞き、そのニーズにあった製品を企画・開発・製造し、それをもっとも上手に販売できる先に販売していただく「技術供与型OEM製造」も弊社の強みを活かせるジャンルと考えています。

また、日本のドラッグストアが巨大化しチェーンストア化の一途を辿っており、ストアブランドが求められる傾向がありますので、メーカー様だけでなくそういった新しい顧客への製品の提供を始めました。これは弊社手がけている仕事の中でも新しいものですが最終顧客に近いこれらのチェーンストアの製品を手がけることでよりニーズにあった製品の提供が可能と考えています。

4は、弊社で最も新しいジャンルといえます。従来弊社では、どちらかというと社名のとおり、薬の仕事が大半でした。しかしながら、数年前からそれ以外の区分でのスキンケア製品の開発依頼、特に機能性化粧品を医薬品レベルの環境で開発・製造を行なってほしいという依頼が増えてきました。これらの機能性化粧品は、現在のところ少量多品種生産品で、弊社に大量に注文がくるところまでいっていませんが、1品あたりの販売価格が高いため、確実な利益が確保できます。また、医薬品の新規開発が年々コスト高になるに比べ、その販売単価は主要の販売先がチェーンディスカウントドラッグストアであるために、年々1品目あたりの販売金額が減少しています。医療用医薬品も国民医療費の増大のため、年々コスト減をせまられています。そのためこれからは医薬品のみをターゲットとするのではなく、これらの機能性化粧品群を利益確保製品として、弊社の1つのジャンルとして独立させることとなりました。数年後にはこのジャンルが、弊社の新しい売り上げを占めるジャンルになることが、予想されます。

こういった4つのテーマを追求することにより弊社は三重県立地後の10年間で約40倍の売り上げ規模を達成しています。これは、「スキンケアアウトソーシング」という特定のニッチ分野に「選択と集中」を行い、顧客に対して迅速、安価、確実、快適なサービスを提供し続けてきた結果であると、思います。

*各顧客区分ごとのニーズの違い

弊社の業務のジャンルは前記の①のように大きく4つに区分けされます。次にこれらのジャンルを顧客の側から分けて表記します。それぞれの顧客は、弊社からスキンケア製品の供給を求める企業といえますが、顧客は大きく分けて2つになります。

ア.委託先企業
(ジャンル2)
弊社のように工場を持ち、製品の製造権を維持しながら、その一部の工程を弊社に委託している。
イ.発売元企業
(ジャンル1,3,4)
製造権を持たず、またはスキンケア製品の製造の工程を持たず、完成品として弊社の製品を仕入れて販売している。

それぞれの特長としては、ア.の企業の場合はあくまで弊社は、製造工程の一部を受託しているという認識から主導権は相手先企業にあります。もともと、相手先が製造していた製品を弊社が手がけるわけですから、弊社はこの相手先企業と入念なコンサルティングを行い、あたかもお客様が自社で製造を行っているかのようなレスポンスのいいサポーターであることを常に求められています。また、製造受託という業務の性質上、納期、価格、品質については大変厳しく要求されています。このサービスは弊社が震災時に工場を失った際になかなか製造を受託してくれる企業がなかったことから考えたサービスです。日本の薬事法の複雑さや製薬会社の閉鎖性が、これらの業務の進展を阻害してきました。しかし、2005年4月の薬事法改正によって全工程委託が可能になり、工場を持たなくても製造依頼が可能になったことから、いままでになかった大学や研究所やベンチャー研究企業からの弊社への問い合わせが増加しています。2005年度からは三重大学医学部と共同研究を行い「熊野古道クリーム」などの新たな製品を発売しました。今後はますますこれらの新規顧客からの仕事の依頼が増加することが予想されます。

イ.の発売元企業の場合は、弊社が製造販売元となりますので100%弊社の企画、製造となり、ア.の場合と同じくコンサルティングは重要ですが、それに加えて弊社の提供するトータルのサービスレベルの高さや製品の完成度をよりいっそう強く求められています。こちらの売り上げが全体の半分以上を占める理由としては、企画・開発自体を弊社が先導するため、相手先企業に積極的に働きかけることが可能だからです。

②提供している製品・サービスのもたらす価値、利便性

従来日本の製薬会社では企画、開発、製造、販売までを一貫して行うことのできる「フルラインメーカー」が主流でした。この理由としては次の2つがあります。

A.製薬会社を統轄管理している厚生労働省が開発と製造の分離を認めなかったこと。

B.薬の販売店が高利益率商品である薬を他店に販売されないように販売会社と契約してエリア限定販売を行ってきたこと。 しかしながら、Aについては1994年から製造工程のうち、1工程を委託先企業が自ら行うことで他の受託先企業に製造を委託することのできる「製造委受託法」ができたことによって大きく変化しました。また、2005年4月からは全工程を製造委託することができるようになりました。これによってこの傾向はいっそう加速していきます。すなわち全工程を委託することで極端にいうと、工場を持つ必要が無くなりますので、製品開発行為に会社の資本を集中できることで国際競争力のある医薬品の開発が可能となるのです。本来の国が目指している方向はこのような会社の育成です。

また、Bについては全国をカバーする販売店をもつメガドラッグストアーが誕生したことにより製造メーカーによる地域限定販売や価格維持販売が難しくなってきています。また、化粧品においても同じ法改正が適用されますので、A,Bともどもの理由にあるとおり日本の薬・化粧品業界は大きな変化の時代を迎えており弊社は、現在のところスキンケアという特定の分野のみですが、お客様にあわせた幅広い、個別対応を行うことで満足を頂いております。

③顧客・市場の要求・期待

弊社では、現在行うサービスの範囲をスキンケア製品と限定しています。これは製薬市場では全製造金額の1割にも満たない小さな市場です。しかしながら、お客様は専業メーカーであるがゆえの「期待」を弊社に持っています。これは、外用剤専門企業ならではの開発力、品質管理能力、製造能力、顧客対応能力などです。 また、2004年度から始めた、機能性化粧品部門においては、従来弊社が出会うことのなかった新規顧客、手がけてこなかった、原料、製品への要求が高まっています。またこれに伴って、スキンケア製品関連品で弊社では、開発・製造ができない品目がでてきており、これらを解決するために、新たなビジネスパートナーとの関係が必要となってきています。すべてのジャンルにおいてお客様が今、弊社に求められているのは、対応スピード、価格の安さ、製品やサービスの信頼度、商売においての対応の心地よさであると弊社では考えています。このすべてにおいて弊社はよりいっそうの加速度で応えていかなければなりません。

(3)競争認識

①主要な競合他社とその特長

弊社は主要サービスであるアウトソーシングに特化して10年になります。当初三重県再起業時である1996年度の売り上げは3,700万円であったものが2006年度には13億3,700万円という約40倍の驚異的な伸びを示しています。取引会社も当初の1社から現在は60社と年間約5社のペースで新規顧客が増加しています。このことは弊社の提供している製剤に特化したアウトソーシングサービスが、従来にはなかったもので、いかに顧客に支持されているかといった証拠といえます。日本には弊社と同じようにスキンケア製品のみを製造している製薬会社は、約30社あります。しかしながら、その多くは自社専門のブランドを持ち自社開発、自社製造をおこなっており弊社のように受託製造を主力と考えている企業はそのうち数社です。2005年の法律改正に伴って化粧品の分野では新規の参入企業が増えつつあるのが現状です。それらの新規競合との差別化のため弊社はより医薬品にシフトしたサービスに特化しており、この自社のサービスを「メディカル・スキンケア・アウトソーシング・ソリューション」と呼んで他者との業務サービスの違いを積極的に顧客に主張しています。2006年度は約95%が医薬品分野でのサービス提供となっています。

②顧客・市場における競合他社との位置づけ

受託製造はこの10年で現在の2,000億規模から4,000億規模に増加することがシンクタンクなどの分析で明らかとなっており、今後弊社のように、ア、医薬品企業のなかで受託業務を新設する会社、イ、化粧品企業のなかで受託業務を新設する会社、ウ、国内であらたに受託業務専門として起業する会社、エ、海外に工場を持ち日本の医薬品を安価で加工するサービスを行う会社の4種類の競合となり、ますます競争は激化していくものと思われます。しかしながら弊社のように医薬品から化粧品までのラインナップを持つ企業はまれであり、今後もそれほど増えないものと考えられます。この理由としては、医薬品会社についてスキンケアは、ニッチでありながら独特の技術が必要であるためにリスクが発生して開発に対しての利益の確保が難しいこと、化粧品会社においては、医薬品レベルの製造環境をもつことは技術的にまだ難しいと考えます。多くの資金と技術が必要なためそのことに特化している弊社に依頼したほうが、よいビジネスモデルが描けるものと、顧客に理解していただきやすい状況になってきたといえます。そのため今後、弊社の優位性はより高くなるものと考えられます。

③現在の競争力の源泉

弊社の競争力の原泉となっている重要な要因は、阪神大震災で全壊した医薬品製造工場を他府県において短期間に再建したノウハウ、行動力、実行力であると考えています。具体的には、日本有数のスキンケア専門工場と専門開発部門の両輪によって、短期間に優れた製品を企画・開発・製造・品質保証をGMPを遵守しながら短期間で、実現できるシステムをもっていることです。多くの企業は実際の行動において、変革について後ろ向きです。規制に守られ閉鎖的な製薬業界においては、それがより顕著であるのが現状です。

特に弊社のような売り上げが15億円程度の中小企業のレベルにおいては、経営者に変革への意識や問題づけが希薄であることから、旧態依然の経営方針の会社が多いのではないかと、思われます。

弊社ではこの状態を「成功した焼酎メーカー」と比較して「失敗している地酒屋商売」と呼んでいます。この「失敗している地酒屋商売」の特長は、優れている点を他社と比較せず、お客様の意見を取り入れず、旧来の販売方式にのっとって商売をおこなっている点です。 弊社は震災において既存の工場・人材・商圏すべてを失いました。そのため、三重県における再建において、それらの既存のありかたをすべて見直すことにしました。

弊社は、「成功している焼酎メーカー」の戦略に学ぼうと考え、実践しました。焼酎は従来、日本酒に比べ,雑酒として低い地位にありました。しかし、飲み方、販売ルートなど、あらゆる工夫をすることで、ブランドによっては日本酒の販売を超える地方メーカーが存在するようになっています。

すべての製造ラインを失ったことによる限定された工場の再建、地域や法律の変化・適用によって右往左往した本社の再構築、新規の顧客の要求を確実につかみ製品化する開発・製造力、これらすべては倒産せずに会社を存続させるための行為でしたが、実はこれらの問題を短期間でクリアした構想力・努力・根性・執念・実現力こそが、万協製薬株式会社が他社に提供することの出来るダイナミズムであると考えます。現在の弊社には、「学園祭の前日」のようなダイナミズムが社内に充満しています。この熱気を持続していくことこそが、他社に負けない最大の競争力の源泉となっています。

④顧客・市場をめぐる競争環境の変化

2005年4月の法律改正によって日本における同業メーカーは

ア.製造行為を主要業務とするもの  イ、販売行為を主要業務とするもの

に大きく分かれることが予想されます。なぜならば、この法律はもっとも開発力、製造力、営業力に長けた企業のみが生き残る仕組みです。この変化は従来あいまいであった業界の再編につながる大きなものであると考えられます。世界的規模で、市場に供給できる新製品を作るメーカーまたは、安価で加工できるメーカー、この2つの会社が今後、日本政府が予想している二分化です。このなかでア、イ、はそれぞれ弊社の顧客となりますが、同時にあらたに出現する競合相手になる可能性がある顧客であるともいえます。いずれにしても弊社は、従来の競争相手にないスピードを兼ね備えていることが特長といえます。また、最近では、弊社に健康食品市場やエステ市場からの依頼も来ています。今後こういった新規業態顧客とのコラボレートも成長の要素であると弊社はとらえています。

(4)経営資源認識

①人的資源に関する主要な特長

弊社では顧客価値を高め、競争力の源泉となる力を「人材の能力開発と組織風土作り」においています。顧客・市場・自社組織のニーズ変化に柔軟に対応するため、従業員一人一人が会社としての共通認識をもつ必要から、企業理念を以下のように掲げています。

万協製薬株式会社 企業理念

  1. 万協製薬は、社業を通じ、お客様と社会に貢献する。
  2. 万協製薬は、会社の発展と共に従業員の心物両面の向上を追求する。
  3. 万協製薬は、お客様のニーズにお応えする最高水準の技術と製品の提供により業界No1カンパニーを目指す。
  4. 万協製薬は、常に誠実を旨とし、地域社会の信頼を得るよう努める。
  5. 万協製薬は、独創性を持ち、迅速・確実・安価・快適であることを最高の価値基準とする。

上記の企業理念は弊社の最も上位に属する考えとして、全従業員共通の誓いとして重要なポリシーとなっており、弊社の行動のあらゆる礎と位置づけられています。

以上のように述べてきたなかで、弊社がもっとも大事にしている価値観は、「万協製薬は、その存在と仕事、作り出すサービスによって、本当に社会から必要とされる会社を目指す。」というものです。

弊社の人的資源は大きく5つに分けられます。ア、製造部門 イ、開発部門 ウ、品質保証部門 エ、営業部門 オ、総務・経理部門の5部門です。ア.の製造部門は全従業員の7割を占めるもっとも大きな部門です。ここでは、主に製品の製造から出荷、原料資材の入出庫を担当しています。イ.の開発部門は弊社の戦略を実現する上で、もっとも重要な部門です。この部門は、現在品質管理部に属しています。営業からのニーズを吸い上げ、製品開発から行政への許認可の申請、実製造の開始までを担当します。ウ.の品質保証部門は、すべての原料・資材・完成品の品質を保証するために、製造工程の各部署において、分析機器を用いた試験を行い、品質を保証します。また、製造環境が規格内に収まっているかなどの各種環境試験も行っています。いわば、顧客側に立った視点での正確な判断が求められる部門です。この部門は直接利益を上げる部門ではありませんが、弊社の顧客からの信頼を維持するためにはとても重要な役割を担っています。エ.の営業部門は顧客との最初の接点となる部門です。宣伝広告、展示会の出展、DMの発送、顧客との直接面接や個々の仕事のマッチング等を行い、弊社の他部門と顧客とのパイプをつなぐ役割といえます。オ.の総務・経理部門は会社全体の商取引の実務、納税業務、従業員の給与や金銭出納、また従業員の福利厚生などを行っています。

「企業は人なり」という言葉のとおり弊社でもっとも重要と考えているのが人的資源です。弊社では、人材を負債や消耗品として考えるのではなく、財産と考えています。そのため教育訓練には、社内外の施設、スタッフを使って積極的に行っています。 各業務の振り分けは10年前に3人で再起業したときの仕組みを、現在の80名の規模にブローアップした仕組みになっています。他企業に比べて特徴的なのはア、イ、ウ部門に比べてエ、オ部門は全従業員の1割程度という人員比率です。これは弊社の完全受注生産方式によりエ、オの部門が省力化出来ている点にあります。業務についても既製品を売り込むのではなくひとつひとつ弊社工場・研究室にてオーダーメイド開発をしていますので、お客様が直接弊社を訪ねられることが多く、すべての部門がエ、オの部門をサポートする仕組みをとりやすいのです。2005年度には社内の基幹業務システムが稼動し社員にノートパソコンを支給し社内LANを構築して情報のデジタル化の一歩を踏み出しました。サブリーダー以上のスタッフは日々の自身の仕事を毎日グループウェアに書き込むことで、社内の仕事情報の共有化、コミュニケーションの向上を図るようにしています。またそこから得られたエッセンスは社内LANやホームページを通じて全従業員や顧客に発信される仕組みを模索しています。

②主要なノウハウ、知的権利、設備、施設の特長

弊社のコアコンピタンスは「高分子基剤を使用したゲル乳化技術による高品位のクリームの製造」です。そのため開発部門はこのノウハウを利用した新しいスキンケア製品の開発を行い、製造部門はこの製造を生産する設備に特化しています。各分野とも全国から優秀な技量をもった人材を年齢、学歴、性別にこだわることなく募集して採用しています。

特に品質保証・開発部門では化学・工学系大学卒の専門職をできるだけ求人して採用しています。製造部については、特に専門職としての指定をしているわけではありません。また、受託製造という業務ゆえに製造設備を自社効率のみに考えることなく顧客の求める量で作ることの出来る各種のサイズの生産機種を揃えています。自社開発のコアコンピタンス技術は、各製品ごとに厚生労働省に申請され審査され日本国の承認書として国際的に権利が認められています。特に製品の調合・充填についてはクリ-ンルームを使用して空気、塵埃にいたるまで徹底的な環境管理を行っています。また、製造で使用する水もほぼ無菌の精製水を自社で製造して使用しています。これらは、すべて定期的な検査を受けて管理範囲内であることを保証しています。工場の設備すべてが、導入して11年未満のものばかりであり、この10年の技術進歩を表す証として弊社はこの製造承認を約250品目取得しています。また、2004年3月には弊社の提出した改善経営計画書により三重県より経営革新企業の認定を受けました。また、2004年10月、2005年9月に計画の前倒しによって変更申請を行っています。

③財務状況や財務活動の主要な特長

弊社の資金はおもに政府系金融機関である中小企業金融公庫と商工中金、都市銀行であるみずほ銀行、東京三菱UFJ銀行、地方銀行である百五銀行から調達しています。おもに、設備投資の長期借り入れは中小公庫から、短期借り入れを、民間銀行から行っています。順調な業績を反映して、金融機関との関係は良好で、資金調達は現在のところ円滑に出来ています。2006年8月には都市銀行2行から2億円の私募債を発行しています。弊社はその資金を製造設備、開発・品質保証設備に特化して投資しています。2006年3月の決算では総資本が16億円から22億円となりました。増加した資産の多くは新工場建設のためです。資本は増え、設備も増強されました。新工場への投資が引き続いて行われたことによって2007年度は全稼働力の増加によって約50%近い売り上げの伸びが予想されています。しかし売り上げだけでなく、しっかり利益を出し、今後の設備投資が可能な健全な経営状態を維持し、より財務体質の強化が必要です。2007年度より新たに2社の経営コンサルティング会社と契約し複眼的な経営分析を行っています。

④主要ビジネスパートナーの特徴とお互いに求める要求・期待について

弊社のビジネスパートナーは現在約40社あります。この特徴はやはりスキンケアビジネス独特の原料、資材メーカーです。弊社がどのように努力しても使用する原材料に問題があってはいけませんので、仕入れ先については十分吟味を行い品質を互いに確認するとともに必要な場合は年間1回程度の製造所査察を行っています。これらのビジネスパートナーに弊社の考えや基準を理解してもらうため担当者を通じて弊社の理念の徹底をはかっています。また、最近では弊社が業務を委託するメーカーも出てきており、それぞれにあった管理体制の構築が必要と考えています。

(5)変革認識

①組織価値観から見た変革認識

弊社の価値観は二代目経営者である松浦信男が作ってきた物が多くあります。その中には、やはり阪神大震災から立ち上がった不屈の闘志と、いつまでも顧客に支持される企業でいたいという二つの思いを持続させることを全従業員の共通のモチベーションとしたいという想いが一番にあります。この二つは弊社にとって最も変えてはいけない想いです。現在も松浦信男を中心とした経営幹部の判断によって、基本的意志の継続がおこなわれています。こういった目的をより具体化するために弊社は経営幹部以下リーダー全員を毎月例会に参加してもらい、順次セルフアセッサーも取得するようにしています。現在リーダーの半数がセルフアセッサーの資格を取得しています。

近年は、経営品質活動が軌道にのり近年はリーダー制の採用によって育った社員によってエンパワーメントが実行されるようになってきました。2006年度からはリーダーの下にサブリーダー、またその下にプチリーダーを任命して1チームを5名程度の小集団としよりエンパワーメントやリーダーシップを発揮できる環境となっています。全員で経営品質向上活動企業として従業員の意識変革を行なっています。中小企業は会社名で誇りをもって人に語れることが少ないと感じているからこそ、自己変革が期待できる経営品質向上活動を社内のメインフレームとしています。また、トヨタ生産方式コンサルタントやQCサークルなどの社内外企業との切磋琢磨も行ってきておりこれらの活動によって、弊社が最適と目指している「文化祭の前日」のようなダイナミズムを今後も持続させていきます。

 

②現在策定している戦略課題と目標

ア.年率10%の売り上げ成長
弊社は売上成長率が、年率10%を超える成長期の会社です。また、21世紀の業界標準を達成するために設備投資を継続して行なう必要があります。毎年売り上げの20%に匹敵する減価償却費を計上していますが、これを継続するためにも利益の確保は重要です。これは、毎年実現していきたいと考えています。

イ.社内情報のデジタル変換の推進およびコンピュータ業務システムの統合化
2005年度より基幹コンピュータ業務システムを一新し、すべての従業員がデータベースを共有化しました。これにより業務のよりいっそうの効率化およびエンパワーメントが可能となりました。目標は全業務のシステム統一です。本年度も更なる統合が現在もすすんでいます。

ウ.お客様やビジネスパートナーとのより緊密な連携
弊社は2007年度より生産管理課を新設し顧客、ビジネスパートナーそれぞれの対話をより充実することとしました。弊社がコンサルティングサービスとして成立するためにこれらの部署での顧客との緊密な関係がもっと重要とされます。近年では全社営業体制の実現のためにより積極的にお客様に弊社を訪問していただくようアプローチをおこなっており、年間1,000名を超える方々が来社されるようになりました。

この際に工場の設備や書類だけでなくできるだけ、本社、工場サイドのスタッフは顧客やビジネスパートナーとの面談の時間をとっています。そのことによりお客様のニーズをダイレクトに受け止め、改善につなげる仕組みを行っています。

また、毎年の顧客満足度調査や各種新規開発提案の際にそれぞれの声を可能な限り聞けるしくみを構築しています。また、最終顧客である消費者については、電話によるお客様相談窓口を開設し、そこから得られた情報をデータベース化することにより社内での改善ならびに最終消費者である顧客への満足度の向上活動を続けています。

エ.社内工程の作業モジュール化およびマニュアル化による教育訓練の向上
弊社では、すべての従業員の目指すべき目標を明確にするために、全従業員が意見を持ち寄り、全仕事工程の作業モジュール化(仕事の見える化、工程標準化マニュアル)作成を行っています。従業員と決めたこのモジュールを多くの従業員が、学ぶことができるように、それぞれに呼応するマニュアルを作成し熟練工への要請へと教育訓練をより充実してきています。

1 経営幹部のリーダーシップ

1.1  経営幹部のリーダーシップ
(1)経営理念にかなう人材の養成のための合意形成活動

①リーダーシップ発揮への体制の変遷

弊社の経営は三重県での再創業以来、社長が強いリーダーシップを発揮し指導してきました。しかし、経営品質向上活動が社内で根付き始めたのをきっかけとして、次第に課長職以上を中心とした組織的な集団リーダーシップが形成されるようになりました。弊社の大切にしている価値観は、経営理念に表れています。

この理念は全体集会や毎日各職場ごとの朝礼などで全員で斉唱をおこなっています。またこの理念を行動指針とした、「バンキョーフィロソフィー」も社員全員で職場体験発表会などの場を通じて価値観を共有しています。

この経営理念に基づき各リーダーは、我が社のメインビジネスである「スキンケア製品のアウトソーシングサービス業 」を体現するにふさわしい年度スローガンを各部署ごとに自らで発案し実行しています。

それらのスローガンの中では、顧客満足、従業員満足、社会貢献、独自技術による市場の獲得、経営の効率性を具体的な数値として目標付けすることを重視しています。

また、経営理念や策定された年度スローガンは会社の各職場に掲示されるだけでなく各社員がいつでも確認できるよう名刺ホルダーに印刷されています。また「成果発表会」や「経営品質報告書」などの形で、顧客やビジネスパートナーに公開するようにしており、組織内外の関係者との意思統一を図っています。

②経営幹部のリーダーシップとコミュニケーション

ア.全体集会
月1回朝一番から約1時間行われる全体集会では、派遣社員を除く全社員従業員が参加します。このために会社は一同が集まれる大会議室を2006年度に作りました。この全体集会では、経営者や幹部だけでなく従業員やビジネスパートナー、時には顧客まで講師として壇上にあがり理念の共有を行っています。また、経営幹部との価値観の共有化のための対話を小集団のグループ討議で行っています。

イ.コミュニケーションと情報伝達のためのリーダー制
各部門長の下には「リーダー」と呼ばれる10名以下で少人数単位のチームを統括する責任者を作りエンパワーメントを効率的に行えるようにしています。また、リーダーの下に最低3名単位のチームをつくり、そこにサブリーダー、プチリーダーを置くことによって、よりエンパワーメントを行ないやすい状態をつくっています。

ウ.気づきのある会議
対話の機会を増やすため、随時研修会議を行っています。この会議は「気づきのある会議」と呼ばれ経営幹部と各部門長が一堂に集まり、社内の種々の問題を協議する場です。多くの仕事は部門ごとに進行していて、他部門の意見を聞く機会が少なくなりがちです。弊社では、それぞれの部門の気づきを高めるためには、他部門との対話が重要だと考えています。

また、発言の機会を増やすために、司会や書記を持ち回りで行ったり、対話をうながす工夫をしています。この会議には社長も参加しており、改善が必要な場合の決断スピードを高めるようにしています。この「気づきの会議」は各部門ごとにも行われるようになっています。

エ.各種提案制度と情報公開
「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」や「ありがとう情報カード」という提案制度を設けています。これは従業員ひとりひとりから、提案書を自由に出してもらい社長自らが一週間以内に回答しています。

出された提案については、社長自らが提案者や部門長や各リーダーと話し合い、お互いの気づきが得られるまで対話を続けます。経営者と社員が個別に一つの案件について話し合うこと、これは一見、会社組織を飛び越えたやり方に見えるかもしれません。

しかし実際行ってみると、このことはお互いの理解を深めるのと同時に日本語によるコミュニケーションの訓練となり、改善内容と同時に最大の経営理念の伝達方法となっています。

また、従業員同士をたたえあう、「ありがとう情報カード」の採用により、社内に優しさは善であるという気運が育ちつつあります。これらの結果は、提案書と共に社員全員に公開され、一度で解決できなかった場合には何度も効果の確認を行ってその結果も随時公表しています。

オ.経営方針やビジョン浸透への活動
毎年1年に1回行なわれる「成果発表会」では事前に選ばれた候補作品のなかから従業員の投票によって「提案書大賞」「情報大賞」「ありがとう大賞」を決め、会社表彰をしています。

また、社内には「バンキョウ コミュニケーションボード」を各工場に設けています。ここには全従業員向けに会社と顧客の対話の結果、各種情報、従業員提案などのコミュニケーションの成果を逐次、掲示しています。このボードには仕事の改善のみならず、会社のあらゆる情報を公開することで、業務の改善につとめようとする目的で設けられています。

このスペースは年々拡大し、掲示件数も増大しています。また、社外の地域で行われるイベントや地域のお店情報など他社の人も宣伝やお知らせをすることができるようになっています。これらの制度は、全社員が経営品質の改善の進行に直接参加できることから、弊社では、大変重要なツールと考えています。

経営幹部が、このような種々の手段を取ることにより組織の価値実現に向けた改善・革新のための体制、制度づくりを行っています。

カ.社長との直接対話
理念の共有やコミュニケーションの向上のため、毎月1回、従業員誕生会という形で社長が全従業員と食事をしながら対話する機会を設けています。ここではあらかじめ準備された質問や直接社長から聞いてみたいことなどがフリーディスカッションとして行われています。

キ.リーダーシップ発揮のための組織改革
007年5月に4人の経営幹部の一人が退社するということになり従来からの経営幹部のリーダーシップ体制の変革が、求められることとなりました。このため新たに「生産管理課」を新設し製造部門、営業部門を統合し顧客への対応ワンストップ化として組織を再編しました。

ク.各種会議の議事録を公開
全社で日々行われる会議や研修についての議事録は、イントラネットを通じて可能な限り公開され情報交換や意見交換を行いやすくしています。

ケ.リーダーシップの把握
経営幹部のリーダーシップについては毎年行われる従業員満足度調査を通じて把握しています。ここでの指標はリーダーシップが従業員のESに、いかに貢献しているかという点です。

2.経営における社会的責任

2.1 社会要請への対応

弊社では社会における責任を「製品」、「工場」、「従業員」、「地域社会への貢献」の4点に分けて考えています。それぞれの活動は弊社の経営倫理要綱や行動指針に照らして間違いないものであるかが最大の評価尺度となっています。

(1)医薬品製造業が社会に対して持たねばならない責任

弊社の行っている事業は、その仕事自体が「人の生命を守る社会貢献事業」と言えます。この中で最も大事なことは法令順守です。どんなに良いものを作っても法を離れては成り立ちません。弊社の業務は医薬品を中心としたスキンケア製品の開発・製造ですが、その中で、外用薬に特化しています。

外用薬とは医薬品の中でも皮膚の表皮に塗布することで、経皮から薬剤を吸収させて、薬効を体内に届ける薬のことです。剤形としてクリーム、軟膏、液剤を指します。医薬品は日本においては、大変消費者の要求が高い分野の市場です。製品だけでなく工場周囲への環境へも他の企業より厳しい目が注がれています。

よって弊社では、まず製品作り、製造工場環境において、「安心、安全、信頼」で、社会への信頼を高めようと努力しています。また、アウトソーシング業としての顧客技術ノウハウや権利の守秘も重要な持つべき責任と言えます。

(2)各部門課長による責任体制の充実

弊社の部門は大きく分けて製造部、品質管理部、総務部、の3つに分けられます。

製造部の場合:自社での製造工程は、製造部の3つの課が他社より仕入れた原料・資材を自社の製造装置にて調合・混合し、目的の形態の容器に充填したのち、最終包装をして仕上げます。これらの製造工程は製造・検査機械を含めてすべてバリデート(実製造規模での化学的検証)されており、それをもとに品目ごとに作成された製品標準書に集約され、関係者に公開されています。

品質管理部の場合:出来上がった製品は、製造単位ごとに品質管理部によって第三者の立場で、厳密なる製品試験を行った後に、適合となったものだけが出荷されるシステムを採用しています。またすべての製品に3年間の品質保証を設けています。

製造ならびに品質管理業務については、すべての工程の指示および記録が製造単位ごとに書類として指図・記録されており弊社が設定した使用期限+1年の保管をしています。

これは、弊社の製造している医薬品が国民の健康に直結しており、万が一不良品が製造され出荷されることは、社会に与える影響が大きいからです。これらの工程はGMP(グッドマニュファクチャリングプロダクト)と呼ばれるWHOが制定した国際基準の管理下にあり、行政機関・他社との査察において世界中同様の運用がなされています。弊社はこの基準を遵守することで、社会からの信頼に応えています。

総務部の場合:製造された製品にはすべて弊社の相談窓口の電話番号が記載されており、市場に出回った後は弊社のお客様相談センターを通じてあらゆるお客様の相談に答えています。また、この結果は製品ごとにデータベース化されており、随時更新してより深いお客様対応に努めています。各部門での間違いなどは「ヒヤリハット報告書」によって全社員が共有できる仕組みを持っています。

(3)地域の向上こそ、地域要請――地域貢献のとりくみ

弊社が製造することで生じる排水、廃棄物については、地域環境を損なうことのないように管理値を定めて管理をし、弊社と多気町行政ともども定期的検査を行い結果については地元住民のかたにも公開しています。

また、会社周辺の環境整備についても随時、地元と話し合い美化運動に協賛しています。2004年度からは多気町の教育機関や工場立地地域に対して一定額の寄付事業を行い事業で得た利益の一部を地元に還元しています。

(4)教育支援活動

環境問題への取り組みとして地域の小学校に寄付講座をもち、弊社研究職の社員自らが、環境教育の授業を生徒に行っています。

地域社会からの要請は、三重県薬事工業会、三重県経営品質協議会、各商工会議所ならびに商工会、各大学や行政機関や取引先やビジネスパートナーからの情報や顧客満足度調査、従業員満足度調査などから収集しています。それぞれの内容ごとに経営者会議や気づき会議などで検討され実行されています。これらはいずれも経営幹部みずからが責任を持って対応する最重要課題のひとつと位置づけられています。

社長自身の震災を克服して三重県で第二創業を成し10年間で40倍の企業成長をとげた経験と手法、経営品質向上活動への取り組みを、話して欲しいという依頼が、三重県のみならず全国の人々から多いことから、できるだけ仕事に支障をきたさないほどで、スケジュールを工面しながら、多くの人を元気にする講演会を月2~3回程度、要請に応じて社長自らが、それぞれの会場に出かけて行っています。

最近では、地域の商工会議所での講演、小学校、高校、大学などでの授業などにも応えています。世代を超えて、社外の多くの立場の方と話すことで社長も自身も大変勉強になっているようです。

すべての対応において、文書保存が必要なものは、文書ならびにサーバー上に構築されたLANの中に整理され公開されています。また、講演などは、CDやDVDに記録され、要請に応じて配布しています。改善につきましては、順次、経営幹部やリーダーとの会議のなかで随時話し合いを持つようにしています。

2.2 社会への貢献
(1)地域社会の発展こそが万協製薬の発展と意識すること

弊社では社会への貢献を高める方法については、まず社員それぞれの考え方を弊社の提唱する「安心、安全、信頼」の方向に向けることが大切であると考えています。経営幹部はいつも「人の体を幸せにするものを作っている私たちは、仕事自体が社会貢献なのだ。」といって仕事に対する責任や自覚を高めるようにしています。特に社長は、数多くの苦闘の末に三重県で第二創業をした経験から、自社が日本やその地域に住む人の役に立たなければ存在意義がない、と考えています。

(2)地域住民との関係

弊社は10年前、自社の進出を引き受けてくれた多気町の行政、住民の方々にも大変感謝しています。2002年、自社第一工場の隣地に存在する物流工場が移転することになり、地元住民からは全く知らない環境を悪化する企業が次にやって来られたらどうしょう!と不安を抱えていました。そこで、弊社社長は、地元住民や多気町行政と協議して敷地3,000坪の工場を4億円で買収して、自社工場とすることに決めました。今すぐに、その工場が必要なわけではありませんし、専用の工場に改装する費用もかかるのですが、社長は地域のためになるならば、と悩み抜いた末に2005年3月に購入しました。これも地域を愛する気持ちから出た行動です。

このことに賛同した企業と共同で新工場を運営することで、費用の軽減も現在では行われ、同年11月には万協製薬第二工場として完成することになりました。

2006年5月以降は完全に自社工程のみの工場となり、弊社の拡大し続ける需要のための設備工場となっています。しかしながら、地域の五桂、前村地区の方々の理解なしにこの立地は実現できませんでした。そのため、地域の方々へ弊社に対するさらなる理解を深めていただくことが必要です。弊社が自主的に行っている清掃活動などもその一環です。

(3)環境ISOへの取り組み

2007年度の事業方針として環境ISOを全社で取得する試みを始めました。これはみえ環境マネージメントシステム・スタンダード(通称ミームス)と呼ばれるもので三重県が独自に策定し、県下の企業に推奨しているセルフアセスメントです。

弊社は、地球環境の保全が人類共通の最重要課題のひとつであることを認識し、全組織を挙げて環境負荷の低減に努力を始めました。重要環境管理テーマとして、 ①電力使用量1%削減  ②産業廃棄物10%削減  ③事務用紙使用量5%削減  ④包装・梱包材の5%削減  ⑤工場内外周辺の月1回の清掃活動の5つを2007年度の目標として掲げ活動しています。また、近隣の小学校へも環境改善授業を出前して行っています。

化学工場といっても弊社は、環境を汚しません。すべての有機溶媒を100%回収し、排水の量も少なく、すべて日本最高のレベルでの浄化を行なっています。また、動力すべてを電気で工場を操業しており、有毒な排気は一切出していません。また、廃棄物はすべて可能な限りリサイクル業者に出して、ゴミの低減をおこなっています。三重県創業以来10年間、1度も地域からのクレームは受けていません。それだけでなく、地域清掃活動活動に協力しています。2006年度は地元地域のごみステーションを新たに新設して寄贈し大変よろこばれています。

弊社の社会や地域からの要求については、年1回程度の地域との話し合いを行っています。その中では、やはり、安心・安全という言葉がでます。製薬会社という言葉から来るイメージは環境に良くない公害を発生させているのではないかとい弊社の社会や地域からの要求については、年1回程度の地域との話し合いを行っています。その中では、やはり、安心・安全という言葉がでます。製薬会社という言葉から来るイメージは環境に良くない公害を発生させているのではないかという不安が多いようです。そのために、定期的に工場を見学いただき、製品を実際に使用して頂くなどの努力をしています。

(4)地域コミュニティーからの要求

2005年からは、自社で開発した化粧品を使って、地元の老人ホームにスキンケアのボランティアを始めました。また無料のお肌のお手入れ講習会を弊社のホールを使用して行っています。2005年度産官学研究による三重大学医学部と共同開発した「熊野古道クリーム」や中小企業団体中央会レディース会で共同開発した「ぽっちゃりクリーム」を発売し地元の販売店、住民さまとの直接の商品を通じたコミュニケーションが始まっています。

これらの商品は地元の物産展に弊社社員みずからが出店して販売をおこなっており、どの会場からも高い評価を受けています。 また、熊野古道クリームの発売により尾鷲市との関係が深くなり、同地域の産業の特性を生かした地域ブランド商品の開発を地元の方と一緒に行っています。その他にも三重県のさまざまな地域や大学からの共同研究や製品開発の依頼が来るようになっています。

これは弊社の従業員と地域の方々が一緒になって行なう事業で、今まで理解されにくい製薬会社という業態を、より安心で安全な製品作りを行なっている会社であるとの理解を、地域の皆様にしていただくためのものであるため、弊社も最重要視しています。

弊社では社業としてアンチエイジングの研究を現在行っていますが、その一環として2006年度にNPOとして「バンキョーファイトアカデミー」というフィットネスジムを安価な会費で開設しました。これは明和町の体育館を週2回借りて行っている社会貢献事業で、ボクササイズをつかって年齢を越えたからだづくりのため南勢地区の地元住民の方15歳から50代の男女の方が参加されています。

弊社では社長自らが理事として参加するほか、運営費の一部や各種イベントに協賛という形で参加しています。また2007年度には株式会社WAA(ワー)を設立し、地元の若い経営者の支援や伊勢地方での健康祭りやアンチエイジングイベントのプロデュースを行っています。また、2007年度より三重大学医学部大学院と共同で経営者大学院講座を行い、地域社会と大学、企業の3社を繋ぐお手伝いを始めました。弊社は地元にあって、尊敬され愛される企業、社員でありたいといつも願っています。会社としてできること、個人としてできることの両面を今後もずっと追及していきます。そして地域の方々により愛される企業となるべく、弊社にしかできないさまざまな取り組みを、今後も行い続けます。

3.顧客・市場の理解と対応

3.1  顧客・市場の理解
(1)各分野での顧客区分による要望や顧客理解の明確化

弊社のお客様は、大きく分けて4つとなります。

  • ①弊社の製品を消費者に販売する目的で完成品を購入いただける顧客
  • ②顧客側で自らが開発した製品の加工を弊社に希望する顧客
  • ③弊社の製品を使用される直接の消費者
  • ④まだ弊社の製品やサービスを知らない潜在顧客

これらの区分は、弊社のかかわる仕事の範囲によって分けています。この4つの顧客を選定した理由は、弊社が中心的に製品を提供している一般薬局向けの薬(OTCドラッグ)市場が縮小する傾向があるからです。

またスキンケア部門は医薬品のなかでもニッチ分野であり、新規設備をして製造をしようとする企業が少ないので、製品を供給して欲しい企業や中間加工サービスのみを委託し、簡単な業務のみを自社工場で行う企業が増えるようになると弊社は考えたからです。また、直接の消費者は弊社の製品を使用される方であり、最終的に本当の価値を判断される方であるからです。

このような4種類の顧客の要求・期待を理解することは、弊社の仕事を進化させる上で大変重要なことです。弊社がこの分野に特化している理由は、阪神大震災以前に、弊社はたったひとつの販売会社に供給を目的として設立された会社であるという点が上げられます。

震災後二代目経営者となった松浦信男は、大きく方針を転換して、一社のみの販売から日本中の会社をビジネスパートナーとする決断をしました。震災の経験により一社のみの販売による経営、自社の強みを生かさない製品作りは顧客から相手にされないと痛感したからです。このとき中心となった技術は、創業以来35年間一社のために開発を続けていた数々の医薬品でした。これらさまざまなの理由や出来事から、創業35年目において、初めて日本市場をターゲットとした顧客の創造に乗り出したのです。

(2)顧客への提案アンケートと顧客企業先訪問による要望の把握

弊社では、定期的に既存顧客に自社開発品の先行提案を行っています。これらの開発品は市販前のものが多いことから、これを行うことにより、弊社では顧客のニーズが掴みやすくなると同時に、顧客の求める製品への改良が容易になっています。

提案先は、既存顧客であるスキンケア製品の開発・試作・実製造を求める約60社の日本の会社および製品を使用いただけるエンドユーザーです。また、現在弊社と取引のない会社およびエンドユーザーを潜在顧客として認識しています。弊社は現在自社での企業行為をスキンケアにまつわる製品についてのサービスと限定しています。

人体に用いる薬のなかでスキンケアというのは実はニッチな分野です。そのため、当初は既存ビジネスパートナーに万協製薬の新しい業務スタイルを理解してもらうよう、直接対話し顧客の紹介を頼みました。また、既存顧客や商品についても顧客満足度調査を行い、要求や期待を把握するための学びの機会としています。顧客・市場の理解という点につきましては、毎回の仕事のなかで顧客からいただく要望を一つずつ実現していくという点を大事にしています。また、新規提案へ寄せられた声の実現なども重要と考えています。

(3)顧客の弊社への直接訪問や消費者窓口から要望を把握

企業側の顧客には定期的に会社や工場を査察していただくことにより、より弊社への安心と理解を高めるようにしています。 直接の消費者については「お客様相談窓口」を設け、すべての製品のパッケージに連絡先を印刷してコミュニケーションを図っています。ここでは、製品の使い方のみならず、販売店、健康アドバイスまで消費者の要求にあわせて無料で行っています。

また、この相談窓口から得た情報の伝達・フィードバックを丁寧に行うことを目標としています。消費者を待たせないようにするため、既存相談での応対をコンピュータ上でデータベース化しています。

(4)潜在顧客への対応

潜在顧客については、専門誌に企業紹介の広告を掲載することで認識を高める努力を行っています。弊社ではホームページを作成して、弊社の事業内容を明らかにするとともに、自社自らが行うサービスをスキンケア製品に限定することで、顧客の選定を行なっています。いずれの場合も「アウトソーシング」が弊社サービスのキーワードです。

剤型の特化、サービスの新規性に興味を示された顧客が少しずつ増えて、今約60社の顧客との取引に拡大しています。現在は、ビジネスパートナー、ホームページ、各種雑誌広告、弊社が市場に提供している商品を見て、メーカー、販社、直接顧客からの問い合わせ等によって、新しいビジネスの出会いは年々増加し続けています。

近年、もっとも弊社のサービスの意味を変える法律の変更がわが国で行われました。

それは2005年4月の薬事法の法律の改正(委受託製造の完全自由化)です。この法律改正により工場を持たない新たな顧客からの依頼が増えてきています。顧客からの問い合わせを増やすことに繋がっています。

また、将来は国内だけでなく海外へも市場を広げようとしています。2005年には中国の上海においての見本市に参加し、今後の東アジア戦略への手ごたえをつかみました。2006年には中国、2007年には台湾への製品の出荷が始まりました。国内外の見本市やフェア、展示会への積極的な参加を続けて、顧客との接点を増加させていきます。

2005年度からは、医薬品雑誌だけでなく化粧品専門誌にも広告の掲載を始めました。また、各種提携大学などが参加する研究型展示会に出展することで、潜在顧客の開拓を進めています。

(5)各種アンケートの評価・改善

顧客・市場の理解という点につきましては、毎回の仕事のなかで顧客からいただく要望を一つずつ実現していくという点を大事にしています。また、新規提案へ寄せられた声の実現なども重要と考えています。これらの活動を行うことにより、縮小していく市場であっても弊社の製品やサービスを差別化して選択していただける顧客との関係をより深く創造していけると弊社は考えています。

3.2 顧客からのニーズや苦情への対応
(1)全社員が顧客満足最適化担当者

弊社が顧客からいただく声には、既存顧客からは主に新規商品の提案の要求、注文した製品の納期、弊社が請け負った作業の進行状況、納入した製品に対するお客様のクレーム、消費者である最終顧客からは、お客様相談窓口に寄せられる商品の疑問、クレーム、質問などさまざまな内容があります。潜在顧客からは弊社のサービスについての問い合わせや工場見学への要求、新規顧客からは問い合わせなどがあります。

弊社では、「全社員が顧客満足向上のための推進者であるべし。」という教育を行なっています。

これらの企業顧客からの声について対応の方法ですが、新規商品については開発部門が担当しています。既存製品については製造部門が担当です。いずれの部門においてもそれぞれ「顧客別対応の手順書」を作成しています。これはその目的や趣旨にあわせた手順書にしたがって記録が文書化されています。このルールは、顧客へ迅速に情報の伝達を行うこととその記録を後になっても検索できるという目的のために定められています。

すべての問い合わせが顧客別のファイルとなっており発生時系列でファイルされているので、後検索も容易となっています。これらは社内のイントラネットにて情報を共有されています。これらはなにより正確さが求められます。「クレーム発生後、対応当日、原因究明2週間以内の解決」を目標としています。

また、最終顧客である消費者に対しては「万協お客様相談窓口」を月曜日から金曜日までの午前10時から午後6時まで開設しています。ここでは、自社製品だけでなく、広くスキンケアの質問を顧客から直接受けて、担当の職員ならびに弊社の薬剤師が回答しています。このサービスはすぐにお客様が答えを受け取れることから好評を得ています。

ここでの結果はすべて文書化され、製品別に既存の対応方法がすぐに検索できるようになっています。そのため、回答がしやすく、専門家以外でも対応することができるようになっています。ここでの対応はスピードが大切で、ここでの処理の迅速さがクレームの拡大を防ぐ重要な防護網となっています。

ここでの目標設定は、「当日のお客様回答100%」です。また、この部門は各担当が1クレームにつき1万円までは自由に使える裁量権をあたえられており、このことでよりスピーディで、快適な窓口対応を実現しています。これはお客様アンケートから得られたアイデアです。

また、消費者対応については販売会社の担当者との密接なコミュニケーションが重要と考え、クレームのたびに話し合いの機会をもっています。また、潜在顧客や新規顧客からは電話やインターネットでの問い合わせが多いため、こちらも当日対応を目標としています。

(2)クレームを次のビジネスにつなげる仕組み

日常の顧客接点においては、弊社の各担当部署の責任者が直接、顧客と対話・連絡を密にすることで問題解決の手法を学び、日々に顧客対応への人材育成も行われています。この際に、弊社では旅館やホテルの客室担当者のように自分の意見を主張するのではなく、あくまで顧客の立場になっての考え方や発言ができるよう日常から指導しています。

そのためそれぞれの責任者の下した判断は、可能な限り尊重されています。その分、各担当者の責任も大きいと言えます。もちろん責任者のくだした判断は回覧される文書、ありがとう情報カード、イントラネットによって他部門の意見を取り入れ、よりよい改善ができるようになっています。また、各種会議で担当者が経験した対応の情報交換をおこなっています。

3.3 顧客満足の明確
(1)顧客満足の把握方法

弊社の顧客との信頼関係を確認する方法としては、毎年、顧客満足度調査を行っています。弊社では顧客の満足要因を「新規提案度」「品質」「納期」「接客態度」「情報提供」「快適さ」の6点と決めています。これらは、満足度調査や顧客訪問のなかでその度合いを把握しています。その中で特に弊社は対応の早さ、情報の公開性の高さとの評価を高める努力をしています。

また、顧客との信頼性を構築する方法としては、例えば新規の仕事を始める場合、「相手の会社の内部だけで検討される方法より、自社と万協製薬とで検討することのほうが快適だ。」という状況をつくることを目指しています。ありきたりの定食サービスではなく、いわゆるコンサルティングセールスを重要視しています。これには数値化できない側面もあります。しかしながらこの状態を作るためには目の前の個別記載を重視し、調査表に書かれた不満点から、いち早く解決できるよう全社で取り組み、業務のすばやい改善と調査票の回収率を高めています。

(2)さまざまなサービスの快適さが、継続的なビジネスを生むという確信

顧客が自社以外のビジネスパートナーに仕事の解決を求める際にも、快適さという言葉が重要であると考えます。また、この取り組みの見直し、改善・革新については常にビジネスパートナーとの定期的な面談によって声を直接受け取る努力を行っています。弊社では、一つ一つの仕事においてクレームが0%になるよう全社で努力しています。弊社は製造メーカーであり、まず、日々製造されている製品の納期・品質が守られているかが、最も顧客満足への道であると考えています。弊社の顧客最適合言葉は「相手の担当者を出世させよう!」です。

(3)顧客満足度重要要因の社内での共有

このことをすすめるために弊社では「気づきのある会議」と呼ばれる経営幹部とリーダーが話し合う会議を行っています。また、問題のあるたびに、リーダーは話し合いの機会を持つようにしています。ここでは、起こった仕事上の出来事をみんなで持ち寄り話し合う時間としています。現在は工場が2カ所あり、それぞれが毎日顔を合わせる状況ではないことから、この会議は大変重要です。

総務、製造、品質管理の3部門が、同時に顧客満足の最適化を考えることが、重要な目線と位置づけています。そのため、お客様の声を一堂に会して聞く機会はなにより重要と考えます。これらの結果は翌週、全従業員が文書にて閲覧できるようにバンキョーコミュニケーションボードとそれぞれのパソコンに開示されています。また、クレームは必ず報告書の形に作成し、全従業員に回覧して情報を共有しています。

また、各部門が毎日行っている朝礼とは別に月1回、経営者自らが全社員を集めておこなう全社集会を行っています。ここでは経営者自らが、顧客満足の重要性を従業員に伝える場となっています。このような経営者との対話こそが中小企業でしか実現できない教育、と弊社では考えています。

また、経営者に直接提案できる方法も実践されておりさまざまな形での顧客満足への取り組みが行われています。また、年数回既存顧客に対して、新規提案を行っており、その際の声を集計しています。目標の設定と達成状況の把握については、新規提案について全社よりの回答を目標にしています。

4.戦略の策定と展開

4.1 戦略の策定と形成
(1)将来的な自社のあるべき姿への検討

弊社の戦略目標は開発、製造、品質管理、営業、財務、人材開発の6項目から成り立っています。

戦略は考えるスパンによって、5年、3年、1年の3段階の長さで策定されています。それぞれの戦略策定における考慮されるべき用件は、「経営方針・ビジョン」「社会的責任」「顧客の要望・期待」「市場動向・競合動向」「自社技術」「自社の強み・弱み」「自社の独自能力」「人的状況」「設備能力」「財務状況」「ベンチマーキングの結果」「ビジネスパートナーの能力」「将来へのリスク」などです。

(2)各戦略の内容と策定方法

弊社では、毎年、期首に2社の会計事務所のコンサルタントと社長と経営幹部が5年間の長期計画と3年間の中期計画、1年間の短期計画を策定しています。

5年間の長期計画は、具体的な目標というものではなく弊社が将来あるべき姿の理想系を明記することになっています。3年間の中期計画の内容は、全体的な売り上げ目標や主に工場などの設備計画や製品開発の品目の策定やそのスケジューリングなどです。

毎年立てられる1年間の短期計画は、社長、コンサルタント、経営幹部が月1回集まって開かれる経営者会議で話し合われ、状況をみながら更新しています。この短期計画では、取引先別目標製品別売り上げ、開発製品年度計画推進度、受注品生産進捗状況、人材確保などの採用状況を設定しています。これは既存のデータをもとに社長と経営幹部との話し合いで作成されるものです。

(3)各種情報による戦略策定プロセスの変化

以前はすべての戦略計画の策定にはコンサルタントより、社長と経営幹部の判断が多くを占めていました。これには弊社業務のうち社長と2名の経営幹部が開発・製造・経理を熟知しており特に弊社では、専属のお客様担当の営業員がいないことから、社長、経営幹部が中心となって各種戦略を決めていたことが理由です。しかしながら近年弊社の短年度計画においては、複数のコンサルタント、弊社の課長職が経営幹部とともに戦略の策定を行なうようになりました。

これは各種の推進会議のメンバーの中心に各課の課長が占めるようになったことと、戦略の策定に「顧客の要望」「社員の要望」「ビジネスパートナーの意見」「自社の年度アセスメント」「三重県経営品質賞のフィードバックレポート」「競合他社へのベンチマーキング」などから得たデータを分析、把握するようになったためです。これらの策定には、以前より多くの話し合いが必要となりましたが、このことをおこなうことにより、各組織の連携による戦略策定が可能になったことと、

戦略策定会議が、次世代リーダーの人材育成の場にもなってきています。

4.2 戦略の展開
(1)戦略展開の社内取り組み

①戦略の展開での対話
戦略の展開には、話し合いによる気づきが欠かせません。そのため各部門代表の3名の経営幹部はそれぞれ机を並べて仕事をしています。以前は別々の部屋で仕事をしていましたが、話し合いや情報の伝達に支障をきたすようになり、2004年6月よりワイガヤな井戸端会議経営幹部会議システムをとることにしました。大企業であれば不可能なことですが、全従業員80名の中小企業ならではの方法です。また社長自らが、各作業に深く精通していることもワイガヤが運営しやすい理由です。

最近では経営幹部だけでなく各部署においても従来の机の配置を変えお互いが向き合いいつでも小集団の話し合いが行える配置に変更しました。これらが発展してリーダーを交えた「気づきのある会議」に発展していっています。これらの上下間の話し合いが円滑になることが、戦略の展開には重要であると考えています。

全部門が集まる「気づきのある会議」は月1回ですが、それまでに各部門でまとめて話し合っていますので、対話が戦略展開に効果的につかわれるような仕組みが出来つつあります。

また、これらの話し合いが自由行えるようにフリーで使用できる会議室を年々社内に増やしています。各単年度戦略展開には、各部門のリーダーが定めた数値目標を設定しています。そのため、毎月の会議ではそれぞれの達成度を報告しあい、達成できていない場合は、なぜ達成できていないのか、問題点はどこにあるのかをリーダー間で議論が行なわれています。この場合も会社側が一方的に攻めるのではなく、従業員側の理解と納得によって対話が進むようサポートしています。また、この過程で疑問が生じた目標は期の途中であっても変更することがあります。この裁量も各リーダーにゆだねられています。

②戦略展開のための教育
また、戦略の展開には、各従業員の認識・能力の向上が欠かせません。年度ごとの戦略での単年度計画の数値目標は、経営コンサルタントとの月1回の話し合いで現状確認が行われています。この作業はコンサルタントと社長に加えて3名の経営幹部で行われています。その会議の中で必要に応じて従業員との直接面談も行って戦略計画の実効性を向上させるようにつとめています。また、各種外部講師の従業員養成講座も行われています。

③ビジネスパートナーとの連携
また、戦略の実行展開ではビジネスパートナーとの連携も重要です。情報開示が可能な範囲においてビジネスパートナーとも戦略展開については情報交換を行い討議を行っています。

製造においては6ヶ月先のスケジューリングをビジネスパートナーと共有することで、その整合性をはかっています。これは、パートナーと同じ情報で考えるという点で好評を得ています。自社のビジネスを説明する場合弊社では、よく旅館に例えて説明します。弊社も宿泊するのが顧客の製品であるだけで旅館に業態が似ているのです。旅館であれば、満室になれば宿泊を断ることが出来るのですが、健康創造産業の弊社は基本的に品切れや納期遅れを起こすと、メーカー、流通、小売店、最終消費者まで図りきれない損害を与えてしまいます。他社や業界の動きや変化を見るうえでもこの連携を重要視しています。

④戦略展開の際のリスク
策定された計画についてのリスクは、それぞれに存在しています。もっとも大きいリスクは予定された納期に製造ができないというものです。これは宅配ピザの配達時間と同じく弊社のサービスに重大な影響を及ぼします。これの把握については6ヶ月単位でのスケジューリングに加えて1週間単位の人員配置を含めた細密スケジュールを作成して対応しています。また、万が一の製造設備の故障に対応するため、予備機を準備することを怠りません。これは弊社の工程が、クリーム剤、軟膏剤、液剤の数種類の製造工程に集約されることから機械に兌換性を持たせていることで実現できています。 また、2006年度からはトヨタ製造管理システムのコンサルティングを導入することでプロの目による厳しいチェックもあわせ、戦略展開としての工程改善を行っています。

また定期的な機械のメンテナンスや作業室の環境試験を行うことでこのようなリスクを回避する努力を行っています。また、これらの設備を売上げにあわせて、増床、増築していくことも弊社の重要な戦略の展開として必要です。それぞれの評価は定期的に行われ、そのたびに改善が行われています。各課題の取り組みは毎月のリーダー会議で話し合われ、それぞれに達成時期の確認を行っています。

(2) 戦略の展開とレビューの方法

戦略の展開とレビューについては、年度ごとの経営戦略会議で各項目ごとに設定されています。その際に、新たに追加すべき項目がある場合には、その会議で検討され、追加もしくは修正されています。

各会議におけるレビューのあるべき姿については、万協製薬の理想的な組織に近付いているかどうかを各種理念、スローガンと照らして話し合うこととしています。

このような対話の機会を増やすことによって、経営幹部をはじめとする会社の考え方が、年々浸透してきていることは、毎年実施している従業員満足度調査の結果からも把握できています。

今後は、次世代の経営幹部を育成していくためのより深い、リーダーと経営幹部との話し合いの場を増やしていくことが、次の課題となっています。

戦略展開のための会議

対象者 仕組みの展開 レビューの方法
経営幹部 経営戦略会議
(月1回)
経営幹部、経営コンサルタントと共に会社の長期・中期戦略の作成と展開について実績データに基づき話し合う。
経営幹部 経営者会議
(月1回)
経営幹部、経営コンサルタントと共に会社の短期戦略の作成と展開について実績データに基づき話し合う。
部門長以上 GMP委員会
(随時)
主に製造部門に起こる薬事上の問題について各が集まり方針を決める。
リーダー以上 気づきのある会議
(月1回)
リーダー間における話し合いで組織横断の問題について解決を図る。
サブリーダー、
チームメンバー
朝会
(毎日)
サブリーダー単位での朝会により経営理念の唱和と当日の作業について打ち合わせを行う。
サブリーダー以上 イントラネット日報
(毎日)
社内イントラネットによる各人の当日の業務内容とコメントを記入。他者からの書き込みによりお互いの関わりを深めて連帯を確認。
リーダー、
チームメンバー
品管会議
(月2回)
リーダーとサブリーダー以上のチームメンバーが集まり現在の仕事についてのお互いの意見を交換し合う場所
製造会議
(週1回)
全従業員 新年互礼会
(年1回)
新年の仕事始めに行う神社での祈祷とその後の全体集会での全社の意思統一
全社社員研修会
(月1回)
就業時間中の1~1.5時間を使い経営幹部やリーダーの考えを浸透させる。講師による研修も行う。
成果発表会
(年1回)
会社の経営品質向上活動の取り組みを1日間に渡って各種発表により共有する。
社長室誕生日昼食会
(月1回)
その月の誕生日の全従業員(派遣も含む)を社長室に招待し社長自ら食事をしながらあらゆる質問に答える。
QCサークル大会
(年1回)
工程管理改善活動の成果を発表する会、優秀グループを表彰する。

5.個人と組織の能力向上

5.1 組織的能力
(1)組織能力向上のための経営体制づくり

弊社では、組織能力向上の鍵はすべての従業員の成長にあると考えています。どのような素晴らしい組織が実現できたとしても、それを動かすのは人間です。言い換えれば、組織の中の人間が成長する仕組みがない限り、どのような成長も遂げることが出来ないと考えています。社長のカリスマ的魅力で、リーダーシップを発揮してきた弊社ですが、近年ようやく「万協らしさ」という社風が、従業員の間で、感じられるようになってきました。弊社では、組織の価値観やビジョンに共感し、やる気を引き出すために各部署で朝礼を行なっています。朝礼では全従業員が集合する全体集会等グループごとに行なわれるものがあり、いずれの場合も経営理念、年度スローガンの斉唱を行い価値観の共有をしています。

(2)従業員による価値観の共有

弊社では、経営理念のほかに行動理念として「やる気」×「元気」×「本気」×「人気」を掲げています。これは、会社の中での個人のあり方を表した言葉です。やる気も元気も本気も基本的な社会人として必須の条件といえます。しかしながら、人気がない人は会社という「集団力」を発揮できません。ですからこの行動理念は4つの気を掛け算してこそ能力であるとしたものです。

会社は才能を競う場ではなく、助け合う場であるべきです。また、1年に1回、全社、各部門の年間スローガンを策定します。自分も相手の気持ちになっての「お互いが勝利できる」関係こそ目指すべき社会人の姿であると弊社では考えています。この他にも各課それぞれの年度ごとのスローガンをつくり、各部屋に掲示することで、モチベーションの共有化を図っています。各課の目標はサブリーダーを含めた月1回の報告会で実施状況を確認しています。

(3)各種職務研修制度

また精神面だけではなく、すべての部門での達成すべき仕事の能力を細かく「モジュール化」しています。ここには、それぞれの目指すべき技術や能力の指標を作成しています。これらのモジュールには、呼応する形でそれぞれ従業員が工夫して作った「習熟マニュアル」があり、他部署から転籍になった場合でも、これらのマニュアルを元に学習や教育を受けることが可能です。

弊社は精神面、技術面の両方で社内外の講師による従業員の教育を行なっています。これらの講師は直接弊社に訪問して従業員と直接対話や課題の克服などを一緒に行うことで、大きな成果を挙げています。この方法は、費用はかかりますが、確実にコミュニケーションが取れることから数社の会社に部門ごとに依頼しています。

また、各種講習会へも積極的な参加を従業員にすすめています。これらはすべて各個人別につくられた教育訓練記録書に記入され、従業員の能力として報酬に加算されています。弊社の教育は自社自ら作成したモジュールによるマニュアルだけでなく、先輩が後輩に指導するある種、徒弟制度のような指導を行っています。

弊社では、マニュアルを超える魂の指導を目指しています。そのなかで、自らのやる気を発揮することで、社員、リーダー、部門長という順に昇格できる仕組みになっています。また、社員が社内外の人とよりよい関係を構築するために全社集会、成果発表会、研修旅行、誕生会、自社製造化粧品の販売活動などを通じて組織的能力を高める働きかけを行っています。

(4)やる気のある人材を発掘する現場重視の採用プロジェクト

従業員の採用については、現在全国の大学、地元の高校、ハローワークなどを通じて不定期に行っています。また、派遣会社からの人材も供給を受けています。派遣会社のスタッフも自社雇用社員同様の教育を行い、優秀な人は派遣会社了解の上で、自社雇用に転籍もしてもらっています。定期採用ではなく、会社の規模にあわせて必要なときに必要な人材を集めるというのが会社の考えです。2007年からは企業年金制度も導入し、社員の未来をよりサポートする姿勢を明確にしています。

また、ホームページには弊社の考え方やフィロソフィーを示すようにしています。その中でも、社長である松浦信男の発言などをたくさん載せて企業の歴史、特色や考え方を明らかにしています。弊社の入社を希望する人はあらかじめこういった資料により会社について知ることができます。また、面接の際でも仕事内容を実際に見学して作業を確認し、希望するものは実際の作業に近い試験を行うことで能力や適性の確認を行っています。また、その際に作文を書いてもらい、夢の実現のために自分が会社でやってみたいことを書いてもらいその内容も採用の際に参考としています。入社試験は、必ずグループ別にそれぞれのリーダーを面接に参加させています。この際、リーダーには、できるだけコミュニケーション力を重要視しており、さまざまなコミュニケーション力を会話によって引き出すように指導しています。

また、採用については積極的に女性の登用を行い、育児休暇など働く女性の社会参加のサポートを行っています。これは経営幹部の専務が子育て中の女性であることから出た考えです。配置については現在、総務、製造、品質管理の3部門がありそれぞれの希望や適正を考慮して会社が定めています。最近では会社の認知度が上がったせいか社員の求人には、多くの応募がなされるようになって来ています。このため散発的に行う入社後のオリエンテーションが業務に負担を与える場合があります。そのため弊社は基本的に定期採用は行っていないのですが、将来は採用の一部を定期採用で行うことを現在は検討しています。

(5)コミュニケーションの促進と「知」の共有

従業員の体系はフルタイムの社員(月給制)、フルタイムの契約社員(時給制)、パートタイムの契約社員(時給制)、派遣社員の4つのスタイルで成り立っています。弊社では自社の雇用形態によって仕事や待遇に差はありません。それぞれの意志と実績と評価によって体系の変更も可能です。雇用形態による差別をなくすことは社長の強い思い入れからです。実際に契約社員のリーダーが社員の上に立ち指示することも日常的に行われています。

組織内の協働については全体集会、リーダー会議、従業員研修会などを通じて行われています。現在は、リーダーより下の従業員の意識を高めるにはどうすればいいかが、課題となっています。特に派遣会社は数社から入れ替わり人員が派遣されることが、協働意識を妨げる原因となっています。このことは、現在の弊社の新しい課題です。仕事の量が急激に増えていることから、自社雇用だけでは人員の確保ができないことから、派遣会社からの人が増えています。派遣社員のモチベーションの向上をいかに行うかが弊社の成長のカギとなるでしょう。そういった研修活動を円滑にするために2006年度は研修ホールを新設して100名を超える人数が一度に研修を受けることができるようになりました。各部門のリーダーは三重県が毎月行なっている三重県経営品質協議会の月例会に参加したり、話し合いの場を多く設けていますので、経営品質向上に意欲的です。しかし、それ以下のサブリーダーや他の従業員はまだ、活動の全体像がつかめていないようです。そのため、月1回の全体集会の時間を使って、問題解決のミーティングを行なうようにしています。

(6)評価・改善方法

研修や協働への取り組みの改善は「気づきのある会議」で行われています。3名の経営幹部ならびに総務部のリーダーは常に社長と机を並べていますので、教育の機会が日々あるといっても過言ではありません。しかし、現場のリーダーは日々の製造や開発に追われています。そのため、弊社では現在、このリーダーの数を拡大して3名に1名がリーダーとなるような少人数体制のチームづくりを行っています。責任者になることで、学べることはたくさんあると考えています。そのためすべての人にリーダーとなってもらえるチャンスを増やしたいと考えています。人は他の人のために何かを考えるときに、最も成長するものです。組織能力すなわち人の能力向上であると考えます。このことを理解させるには、現在のリーダーが喜びを持って部下を指導していかなければ、誰もリーダーになりたいとは、思わないでしょう。

目標の設定と達成状況の把握については、従業員の入社資料、キャリアアッププランを通じて従業員が会社に求める姿の調査を行っています。ここでの成果を従来の成果と比較することで、成長を促しています。これらの改善・革新を進める上での課題の発見は主に上で述べた2つの会議で発見されることが多いです。その中で多いのはいかに各部門間の連携を密にしていくかです。それぞれの決めごとをいかに各部署に間違いなく伝達し理解を深めるかが課題です。

5.2 社員の能力開発
(1)教育についての考え方は「人間力」の向上

弊社の教育は、ある意味現場志向であるといえます。社員が仕事を通じて直接顧客と会話し、その関係を考え、学んでいくことこそが本当の能力開発と位置づけています。そのために弊社では、社員の仕事への取り組みの理想形を「学園祭の前日」と呼んでいます。 実際のところ、この言葉ほど弊社の日常を表す言葉はありません。弊社には毎日、こなしきれないほどの仕事が常にもたらされています。経営幹部は常日頃、「私達は、自らの成長のために会社存亡の危機を意図的に作り出す!」と明言しています。社長は阪神大震災から立ち上がったときのダイナミズムをいつまでも持続させたいと考えています。そのためには、大企業やお役所的な計画経済ではいけないといっています。そういった意味で、「学園祭の前日に自分は何をすべきか?」という問いかけを常に行うことで、社員の人間力向上を導き出すようにしています。

組織の目標を達成していくためには、経営理念のより深い理解が必要です。また、そのためには各人がいろんな種類の仕事をこなすことのできる能力と経験が必要だと考えています。また、顧客のことをより理解するには社長や営業部と従業員の対話がもっと必要と考えます。しかしながら、社内外の協力関係を強めるためには、企業人としての弊社従業員の人間的成長が欠かせません。これには不可能を可能に変えるチャレンジスピリッツが必要です。このための状態こそ、不安と期待の入り混じった学園祭の前日状態といえます。あらゆる部門が協力しなければ、乗り越えられない日常、これこそが中小企業における学習ではないでしょうか?それとは別に会社としては、社内外の関係についても企業理念にのっとった自らのみの利を強く否定しています。

(2)従業員の能力開発の方法

従業員の専門性・顧客理解・協力関係を高めるために弊社では、全従業員の心身共の向上を強く願っています。具体的な方法として、弊社では社員の能力を高めるために、次のようなさまざまな取り組みを行っています。

①全従業員オーダーメイドの「バンキョーキャリアアッププラン」

人にはそれぞれ持って生まれた特性や個性があり、なかなか一つにまとめることは難しいものです。しかしながら、会社は個人の能力を集団力に変えていかなければなりません。そのために作り出されたのが従業員それぞれの習熟目標を定めたプランなのです。ここでの具体的な内容は先に述べた「モジュール化」された各部門の仕事内容のそれぞれの達成度で評価が可能です。

これを作成し実践することで、部門間上下間のコミュニケーションがはかられ、各人の努力と成果を客観的に認識することが可能です。ここでの成果は賞与や昇給の重要な資料となっています。年2回の査定の結果は個人面談で知らされますが、その際に自分の点数を知ることができます。キャリアアッププランはそれぞれの従業員にオーダーメイドの個人指導という形で行われますので、自部門での自分の位置やこれから取り組むべき課題についてよく考えるようになります。

弊社では、多くの種類の仕事をこなすことのできるマルチプレイヤーを高く評価しています。このことは、仕事の進めやすさだけでなく他者とのコミュニケーションにとっても重要なことです。言い換えれば、「相手の仕事ができる人は相手の気持ちがわかる人」であるということです。このことは弊社社長がもっとも強調して従業員に伝えようとしていることの一つです。そのためキャリアアッププランの最終面接は、必ず社長を交えて行うことになっています。この際には本人の努力をねぎらうとともに配置転換や転属についても話し合いができるようになっています。

②気づきのある読書感想文

教育訓練については現在リーダー社員以上については、定期的に従業員研修会を実施しています。全従業員においては各部署で行われる朝礼をはじめとする各種ミーティングや全社研修会を開催しています。また会社から社員能力を開発するに適当と考えられる本を定期的に配布し、それについて感想文を書き提出する「バンキョー読書感想文活動」を実施しています。これは、3ヶ月に1冊、1年間で4冊テーマを決めて従業員全員で同じ本を読み、そこから得られた気づきを文章として提出し、1冊の文集をつくり、全員に配布しています。最初は、嫌がる従業員もいましたが、現在では、仕事以外でお互いをより深く知るツールとして認知されています。

その中で会社は「各人のものを考える深さが、会社の宝」と位置づけています。そのためには、知識を自らで汲み取る読書を弊社では「最も大切な研修行為」、「インプットを超えるアウトプットは、この世に存在しない。」といつも力説しています。

③バンキョーフィロソフィー職場体験談論文会

また、その一環として弊社従業員のありかたを諭した「バンキョーフィロソフィー」を題材にした職場体験談論文を1年に1回募集しています。優秀作品は全従業員の前で発表を行いモチベーションを高める発表大会も実施しています。

④「プチコミファミリー」をはじめとする各種コミュニケーション育成システム

毎月1回行われる当月誕生を迎える従業員を社長室に招待して一緒に昼食をとる「社長室誕生日昼食会」や派遣社員も含めて従業員全員が会社の食堂でわいわい食事をする「ワイガヤ食事会」では、直接経営幹部にプライベートも含めて触れあえる機会として好評を博しています。また、入社年度ごとに階層を決め長男、次男、長女、次女、と会社の中に所属を超えた4~5名のグループ、擬似家族システム「プチコミファミリー」を設定しています。これは、社内に架空の家族をつくることで、仕事での悩みを初めとして、仕事以外のことも相談できたり、会社の人間重視の姿勢をより理解してもらいやすくするためです。このファミリーは1年ごとに組み替えられ、より多くの人と触れ合えるようになっています。現在での活動は、食事会、共同改善提案提出、ボランティア活動など多岐に渡っています。活動の成果は、掲示板に逐次報告されています。

⑤各種提案書制度

「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」や「ありがとう情報カード」といった提案書が弊社では社員が直接会社を変えることができる提案制度として重要視しています。社長との直接対話が公開で楽しめるという点では、提案した本人とともに他の従業員にも影響を与えています。

⑥各種セミナーの開催

弊社では感動こそが最高の価値観と位置づけています。そのためコミュニケーションを改善するための外部講師やビジネスパートナーやときには社員自身も講師となり、自らの体験を発表する機会を設けています。人前での発表の体験は従業員にもよい訓練となっています。これらはすべて録画されており欠席してもあとで学習することが可能です。また、会社が所有する膨大な書籍類、CD、DVDなどの音源・映像ファイルを会社設備にて全従業員に公開することで、広いジャンルでの学びの姿勢のすすめを行っています。これらには貸出制度があり社員であれば無料で利用できるようになっています。

(3)従業員の能力開発の目標

明治以来日本人が目指した「個人主義の確立」には「会社での集団力の結集の経験」こそが、最重要というのが弊社の考えです。現在の日本では、真面目に考えることが、重要視されずに享楽を追求する人間こそが、人生を楽しんでいるように言われています。弊社はそのような傾向に、NO!と言います。

「一人の人間の考え方に共感して自分もその輪に加わりたいと思い積極的になっていく」弊社はこの現象こそがすべての会社の原点であるべきと言い切っています。小さな会社が、日本を変えることは難しいかもしれません。しかし、せめて自らの関係する内外の組織はこの思いを伝えていきたいと弊社では常に考えています。会社のみんなと共に人生を考える会社、それこそが従業員が誇りを持てる中小企業の本来の姿ではないかと考えています。2005年度弊社の受賞した三重県経営品質賞奨励賞の授賞式での従業員の誇らしげな顔を見るとき、やはり他社から賞賛される立場になることがいかに重要であるかということを全員が実感しました。

社員の能力開発の目標の設定と達成状況の把握については、各種の会の開催度やその満足度を調査するようにしています。また、集会には十分話し合いの時間を作ると共に、アンケートを取り、そこで出た提案や不満は可能な限り改善するようにしています。従業員の個人の仕事での成果は、大半がキャリアアッププランに集約されています。ここでの成果を従来の成果と比較することで、成長を促しています。目標は前年度10%以上の向上です。

これらの改善・革新を進める上での課題の発見は主に各種会議とキャリアアッププランで発見されることが多いです。その中で多いのはいかに各部門間の連携を密にしていくかです。それぞれの決めごとをいかに各部署に間違いなく伝達し理解を深めるかが課題です。また、多くの従業員がさまざまな研修活動に参加できる仕組みづくりがもっと求められているようです。現在は、さまざまな社外研修をそれぞれの適性に合わせて受講してもらっています。

5.3  社員満足と職場環境
(1)社員満足度についての基本的考え

弊社では「満足度の高い社員が、質の高い顧客満足を実現できる」と規定しています。つまり、「会社が社員を大切に思うことと、社員が顧客を大切に思う気持ちを同じにする。」という意味です。そのためには、①従業員満足度調査の実施 ②満足度向上のための試みの立案 ③満足度向上のための活動の実行、この①~③までをサイクルとして動かすことが重要と考えています。

(2)社員満足度調査の方法

社員が仕事を通じてお客様や社会に貢献できたかについて、弊社では各種の会議や集会を通じて社員に問いかけています。弊社では、社員が満足のいく仕事をするために経営者や上司の支援や組織作りの状況について、1年に1回、「従業員満足度調査」を行っています。これは、キャリアアッププランの従業員面談のあとに行われているものです。ここでは、お客様や社会に対する社員の貢献度に対する会社側の支援が十分であるかどうかについて問いただしています。質問項目も、仕事のやりがい、会社の経営姿勢、職場環境の快適さ、人事評価制度、仕事への意欲などを重要要因と位置づけています。これらの要望について弊社では、従業員満足度調査を通じて、おおむねつかめているものと考えます。

(3)従業員満足度調査の分析・活用

社員満足の目標の設定と達成状況の把握については、従業員満足度調査の数字の向上を指標としています。また、「キャリアアッププラン」と「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」「ありがとう情報カード」のより充実も社員のモチベーションを図る上で、目標としています。具体的には、前者においては、現在、各部門で個別に行われている目標設定や評価を全社統一の基準として評価できる内容を追加することや顧客や社会の理解・貢献といった項目を逐次追加しています。後者については全社員月1件の提案提出を目標としています。

達成状況の把握としては提案件数の把握や従業員満足度調査などを行っています。「社員満足と職場環境」の評価・改善につきましては、キャリアアッププランの評価については、毎年行われる従業員満足度にて行っています。これによって明らかになった課題は、従業員の能力向上意欲や仕事への考え方に差があることです。これらのことについてすべての従業員が同じになることはないと思いますが、会社として求められる従業員の姿勢についての教育を行うべきと考えています。そのことを、キャリアアッププランの中に導入して、また評価・改善につとめたいと考えています。

(4)さらなる職場環境改善への取り組み

職場環境では、人事制度や昇給制度に不満の声がありました。限られた規模の中小企業においてこれらをすべての人に満足してもらうことは大変難しいことと認識しています。しかしながら各部署で本当に「働き手満足」を感じたり、そうでなかったりする要因は大半がコミュニケーションであると近年の調査で分かってきました。そのため、リーダーや社員の配置転換を以前より頻繁に行うようになりました。従来工場のことは工場長が決めるといった風潮がありましたが、そういったことも他部署との話し合いを重要視する方向へ変化しつつあります。また、リーダークラスのコミュニケーション手法について話し合いの機会を増やすようにしています。また会社としても二つある工場の作業連携をより高めるために、ラインを変更したりして、ものづくりの手法を改善しています。社員が仕事を通じてお客様や社会に貢献する意欲を持つことについて、いま一番課題となっていることは、各人の仕事がいかにそれらと結びついているかということへの認識の薄さだと思います。

これは、自身の仕事がお客様や社会に結びつく全体像を描けないと言うことだと思います。この課題を克服するために弊社では、各種の集まりの中でお客様・社会との共存を伝えるようにしています。また、顧客とのミーティングに複数の部署が、参加してさまざまな意見を伺い、コミュニケーションを行うようにしています。社員が満足のいく仕事をするために、会社がなすべきことは、絶え間ない、コミュニケーションとエンパワーメント、適正な組織への定期的な変更だと思います。これについては、各種提案書での会社への従業員からの提案書の内容を重要視しています。

これらの内容を精査することで、社員満足と職場環境の有効性について、「全従業員のやる気とエンパワーメントの同質化」を目標とした改善、革新を行っています。また、経営品質のセルフアセッサーの養成も課題としています。現在のアセッサーは経営幹部及び課長職の5名ですが、現在のリーダーには順次取得を目指したいと考えています。「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」の評価については、提案に対して従来はすべて社長が返事を書いていましたが、最近ではリーダーと経営幹部が話し合い解決の方法を模索できるようになってきて、話し合いの機会も増えています。返した答えを全従業員に公開するとともに、定期的に追跡してその状況も報告しています。 さまざまな決定事項があるため、会社で起こっている出来事や決めごとが十分全社員に伝わっていないことがあります。これについては、新たな伝達方法についてたとえば、社長とリーダークラスとの対話の回数を増やすなどを現在行っています。

6.顧客価値創造のプロセス

6.1 基幹プロセス

※基幹プロセス全体の目標・・・ベストソリューションサービスを目指して

弊社では、会社の長期戦略に掲げられている「日本一のメディカル・スキンケア・アウトソーシング・ソリューション・サービス」の実現を目指して特長のある基幹プロセスを構築、展開しています。

弊社では顧客に、弊社で製造した製品を提供することで直接価値を提供していますので、いわばこのことが弊社の基幹プロセスとなります。この基幹プロセスは、そのため大きく分けて

  • ①製品開発、製造、物流、品質管理、それぞれの部門の担当者ならびに人材教育システム
  • ②「バンキョー生産管理システム」や「開発製品ツアー旅行システム」などの弊社独自の顧客価値満足を提供するサービスの開発により、顧客の視点から業務プロセスを簡素化する。
  • ③さまざまな顧客価値サービスを新たに追加、変更できる改善プロセス

の3点に分けられます。これらのプロセス全般の目標設定は、顧客満足度調査や各担当者が顧客との接点において気づいたことを記録して、収集・分析を行っています。

またそれぞれのプロセスには弊社の経営理念である迅速、確実、安価、快適の4点をクリアすることが求められています。ここには「弊社からみたサービスと顧客側からみたサービスが同じように感じられる、レンタルビデオ店の料金表のような明快なサービスを実現できるプロセスの実現」を目指しています。

(1) 製品開発のプロセス

①急速に変化を続ける業界
現在、弊社では、医薬品中心の開発・製造からより幅広い化粧品も含めた開発・製造の会社へと転換の時期を迎えています。弊社の中心市場である0TC薬(一般小売店での販売薬)は90年代バブル期の1兆3千億円から2006年度では7,000億円弱と急速に売上のパイが小さくなっています。加えて2008年度からは商品を安全性によって3つのクラスに分け薬剤師のいない一般店でも薬が購入できる法律が導入されます。2005年度の製造委託の完全自由化に加えて、販売の自由化は業界に革命的変化をもたらすことが予想されます。弊社としても潜在顧客との接点を深めるプロセスがより重要となります。

それに変わって増え続けているのが、サプリメント市場です。こちらは、従来、健康食品と呼ばれていたものです。これらの食品は、近年特定機能性食品など国が定めた新たな食品の基準によって、より健康や長寿を求める人のアンチエイジング志向をとらえ、急速に市場が拡大しています。病気になってから薬を飲むのではなく、健康を維持するために、自分にあったサプリメントを毎日、服用するという積極的な健康志向は21世紀の先進国の国民に一貫して現れている現象です。

②変化に対応する弊社の取り組み
弊社は数年前から、「人から年齢より若く見られることを望む中高年層の特に女性」に注目していました。こういった女性は、ある程度、出費をしても本当に自分にあったスキンケアを望んでいます。弊社は、以前よりクリーム剤製造で、日本一を目指す!と言ってきました。しかし以前はこのクリーム剤は大半が医薬品を指すものでした。しかしながら、成功している同業他社動向を見ても明らかに治療医薬品から未病スキンケアへと市場の移行が見られます。また、販売方法も従来の店頭販売から、通信販売の市場が増大しています。

弊社では、2004年度から開発し発売してきた機能性化粧品の売上げが好調です。内服薬がサプリメントに市場が移行するように、外用薬も機能性化粧品に移行することが考えられます。外用医薬品では大メーカーとなった企業は数社ですが、機能性化粧品のメーカーでは近年大きく成長している企業がたくさんあります。弊社では、この現象に大きく注目しています。開発に最長10年近くもかかる医薬品と違って、化粧品の開発は1年以内の製品化が多く発売のスケジュールも短いことから、企画・開発・製造とあらゆる分野で、さまざまな変革は会社におこりつつあります。

現在の業務サービス内容では、多種多様の顧客に答えきれなくなる可能性を秘めています。医薬品と化粧品の目指す価値は今後、もっとそれぞれ進化していきます。2007年度はあらたに4品目の化粧品が加わり合計14品目となりました。より高い環境化での製造を求める高級化粧品メーカーから弊社への仕事の依頼もふえ、ますますボーダーレス化が進んでいます。

③製品開発の手順
弊社が手がけているスキンケア製品は現在、医薬品が大半を占めています。安心・安全・安価な医薬品の提供は、日本国民の共通した願いです。これは弊社が手がけているスキンケア製品でも同じなのです。弊社はこのような日本社会で創業以来48年間、この思いを忘れることなく大事にしてきました。以下、製品開発の手順について説明します。

④目標設定のためのプロセス
製品を開発するときの考え方は、「弊社がその新製品を手がける行為が、企業理念にそった内容でありかつ、既存製品との差がつけられるか?」です。日本中のスキンケア製品をつくることはできないわけですから、弊社が手がけるべき仕事については十分な調査や吟味を行います。

製品の開発の初期段階で、確認している情報としては、既存顧客である60社のお客様の意見を最大有効情報としています。彼らは直接、販売店や医療機関に接点があり専門の企画・営業部門を持ちスタッフを抱えています。弊社は自社で販売組織をもっていませんので、顧客からの要望は最優先実現項目としています。これらの顧客の要望を対話によってつかみ、実現していくことが仕事の最初でかつ最大に重要な手法と位置づけています。

また、販売計画についてですが、新製品の売り上げ比率10%以上という目標を設定していますつまり、1割は毎年、新しい製品で業績をのばすことを是としています。また、組織プロフィールで区分けした4つのカテゴリーが弊社の規模の中小企業で維持可能であるかが、今後の重要な戦略であると考えています。この点は定期的に実際のデータをもとにレビューされています。

⑤製品開発への期間工程管理のためのプロセス
目標設定や開発品については、それぞれの工程の責任者と各リーダーが毎日膝をつきあわせた環境下で話し合いをしています。実際リーダーは、部屋は異なりますが、同じフロアで目線が感じられる位置にいます。製品開発の期間管理プロセスとして、スキンケアは季節的変動のある商品であり、1年に1度しか新製品の発売のチャンスがない製品も多くあります。そのため、経営幹部は開発を最重要の部署と位置づけ、自ら,毎日開発部員とのやりとりを欠かしません。ここでの遅れが会社の成長に大きく影響するからです。

(2)開発時の顧客の対応プロセス

①顧客との提案・打ち合わせにおけるプロセス
開発・製造を依頼される顧客との対応は、営業の責任者である社長、総務・開発・製造スタッフなどの各部門のスタッフも参加して行っています。この顧客との全社部門との対話やコンサルティングを弊社は、最も重要に位置づけています。

市場情報については、雑誌、放送媒体、店頭、ビジネスパートナー、インターネットなどから入手しています。技術情報は、定期的に購読している専門技術誌、各セミナー、研究会などから得ています。

自ら保有している技術や情報も含め顧客との重要なコンサルティングに活用しています。また、自社が48年間に実験を繰り返してきたスキンケア製品に関するデータはもっとも、独創性が高く有効な情報となっています。これらは医薬品だけでなく化粧品などの他のスキンケア製品の開発にも有効に使われています。

開発課は品質管理部に(仕事をしている場所は別ですが)所属しています。これは、開発と品質管理の協力なくして製品開発はできないという創業当時の考えからきています。開発当初から、製品化されたときの品質管理のやりやすさを考えた仕事のプロセスを考える助けとなっています。

開発課では、できるだけお客様と直接会って、または電話・文書などで行なうミーティングを大切にしています。自社の持つ能力とお客様の要求や知識が多ければ多いほどよい製品になると、弊社では考えています。このため、打ち合わせ室を4箇所から7箇所に増設して、お客様との対話を円滑に行なえる工夫をしています。

また、これらの自らが保有している知識や情報は、会社の書類は文書保管室に、デジタルデータは自社のコンピュータサーバー上に分類され保管されています。そのため、必要な情報を必要な人間が自由に取り出すことが可能です。

弊社では、既存顧客に開発中の製品情報を開示して、意見を求めることが大変重要と考えています。弊社はこの開発法を旅行社のパッケージツアーの方式を真似て、「開発提案ツアー方式」と呼んでいます。開発初期、中期、後期の3つの時点で、顧客からの声を重視して、既存顧客の意見を取り入れて製品の改善を行います。逆に既存顧客の2社以上の会社の採用予定のない製品は、開発が中止され発売されません。あらかじめ守秘義務を結んだ限定された顧客以外に情報を流しませんので、他社に情報が漏れる恐れがありません。またこの際に互いの技術やノウハウが他に転用されないような秘密保持契約を双方の利益のあるように円滑に結ぶことは、開発時に大変重要なプロセスです。

②顧客との各種開発契約プロセス
弊社は自社で製造した製品を自らの営業を通じて販売することはしていません。自社提案医薬品については、市販先発品を自社でより効果が高く使いやすいものに改良し安価に提供するということに徹しており、まったく世の中にない新しい製品を市場に発売することは、ありません。これらの理由としてはなぜなら、弊社が全国1万店にもおよぶ小売店舗の顧客と直接ビジネスを行うことは物理的に不可能だからです。

また、製品開発については、全く新しい製品を開発しても、中小企業の器で新しいニーズをつくることは資本的に、難しいからです。それよりは大手が開発した製品のリニューアルのほうが市場からの要望が明確であると考えています。これは弊社の競合他社へのベンチマーキングから得た経験則です。

また、これらの方法は、あらかじめ顧客の要求を開発品に盛り込むことにより製品化された際の成功率・成熟度を上げるもっとも効果的な方法と考えています。しかし2004年度から始めた機能性化粧品の業務ではこれまでと違って製品にオリジナリティが多く求められるようになりました。開発は製造を見越した設計でありますので、開発に用する複数年の間に実製産化までの検討を行います。

(3)製品製造時の対応プロセス

※加工価格・納期対応プロセス

①標準工程管理原価表
顧客の開発した製品の受託加工ビジネスでは、顧客の価格要求の実現が最重要課題となります。受託加工といっても、他社の工場で開発・製造されていた製品を弊社で作る訳ですので、実は新規開発と工程は同じです。そのため、既存の製造から作り出された「標準工程原価管理表」を毎年作成することで、素早い見積もりの作成を実現しています。弊社では顧客の注文なしに製品を製造しません。一切、作り置きはしません。見込み生産もありません。このことも弊社の原価を下げ、利益を増やす仕組みです。

②バンキョー生産管理システム
弊社は基本的に製造するすべての製品が、「相手方の求める仕様による受注生産」です。ですから、顧客が、いつ、どのような製品をどのくらいの数量必要かということを知ることが大切です。まず顧客からの受注を前もって6ヶ月先まで、前期の売り上げ実績データを元にして話し合いなどの方法でつかむようにしています。顧客はつねにジャストインタイムの生産を望みますが、弊社の200種類を超える製品を品切れすることなく供給するためには、少なくとも4ヶ月前の予定注文、2ヶ月前の注文確定が必要です。

弊社がアウトソーシングサービスを続けていくために、実は最も重要な仕事が、この製造スケジュール管理システムなのです。これを、弊社では「バンキョー生産管理システム」と呼んでいます。自社で作った製造予定を、コンピュータ上の、一連の細かいスケジュール管理ソフトに落とし込んでいきます。これによって、製造管理が誰でも目で見て分かるようになっています。 この表は弊社の基幹業務コンピュータシステムと連動しており、それ以後の工程の原資材料調達のタイミング、人員の調達や製造機械の管理、出荷のスケジュールなどが関連して作成され、各社員のパソコンで確認できます。

このことは、情報の共有化を容易にしており、また顧客との仕様や納期の話し合いについても重要なツールとなっています。すべての会社の業務はこのシステムの延長線上にあります。商品管理、物流管理、納期対応、製品をつくるときの量・質の確保、コスト管理、在庫削減などもこのシステムを細かく運用することで、改善をおこなっています。これを自在に活用することで、顧客の急な要望にもすぐ対応できるようになっています。弊社では顧客にもこの管理システムの一部を開示することによって近年、顧客どうしが「万協居酒屋の席」のようなスケジュールの譲り合いが行われるようになってきています。場合によっては、ライバル関係にある顧客同士が納期における無理の貸し借りを行う様子は、弊社のアウトソーシングサービスが顧客に理解されてきていることと考えられ、大変喜ばしいことです。加えて各製造ラインの品目ごとの段取り変更のスピード化も利益確保に欠かせません。予定どおりの進行を行えるための設備導入・マニュアル化・作業者教育も重要です。この成果を確認していただくため新規顧客はもちろん既存顧客には、年1回の工場査察をしていただき、指導・改善を行うようにしています。また、他工場の見学を行うことで、それらを進化させる努力をしています。

(4)設備更新時の対応プロセス

「量産化技術は金で買え」というのが社長の口癖であり、開発製品をスキンケア分野に限定することで開発・製造も選択集中が、可能であり弊社の強みとなっています。弊社の製造ラインは、専門業者と弊社とで共同開発したものが多く、製造設備も弊社の独自技術となっています。事業で得られた利益は、よりスマートな量産技術を実現するための製造設備投資に使用されますので、開発品を特化した、専業化の強みがここで発揮されるわけです。

弊社工場での製造設備については予算を決めて各ビジネスパートナーから生産改善のための設備投資についての提案を受けその中から有望なものの順に実現しています。平成7年の地震によってすべての設備を一瞬にして失った弊社には、人一倍機械への思いが強いのです。年々増え続ける顧客の要求の実現には機械による製造が不可欠です。弊社は、いつも「ノウハウやスキルは基本的には個人にしか、宿らない、しかしそれを補い会社の集団力として残す方法がある。それは、人と人の間に機械を入れることだ。」と言っています。弊社ではそのため機械やその工場環境の設備投資に力を入れています。また、できるだけその際も業界で定評のあるメーカーの機械設備を購入しています。つまり、自社だけで仕事の改善を行うのではなく積極的に外部の機械メーカーのビジネスパートナーの意見を入れて工程の改善を行うべきだということです。人の能力はそれぞれです。会社が求める要求を実現するためにはペースメーカーとしての機械と人との調和が必要なのです。機械を使って、仕事をしなければ量産化技術は進歩しません。そのためには、他業種の知恵を借りることが重要だということです。

(5)営業部門の営業対応プロセス

弊社では受注目的での顧客訪問専門の営業担当社員を置いていません。この業務は現在、生産管理課が行っています。相手先が訪問を希望する場合は、社長自らが接客することが多いです。これは、弊社のサービスが自社工場を使って行われるものであることもあり打ち合わせが弊社で行われることが多いことから、専門の担当を作らなくても工場のそれぞれの担当が対応することでスピーディな打ち合わせが可能です。またこのことが、他部門の従業員とお客様の対話の機会となりお互いの気づきを多く生み出しています。見方によっては、新しい顧客獲得には熱心でないといえるかもしれません。それよりも既存顧客に満足のいく製品の提供を重要に考えています。しかしながら経営幹部の企業訪問という形で、既存顧客には定期的に直接訪問を行い、顧客満足度調査での不満点などを直接ヒヤリングをして、プロセスの改善を行っています。

製品の提供には、相手から仕様を決めて、仕事を依頼されるものと自社が開発した製品を提供する2種類があります。自社開発品はその製品が開発の最初の段階から有望であると判断される相手先に情報を開示しながら行っています。販売はすべて相手先の顧客が行っていて、自社では自ら最終消費者への流通に携わっていません。ですから、販売に必要な情報は販売先顧客と製品を販売している販売店での店頭調査から得ています。しかし、2005年度からは弊社開発商品の自然派無添加化粧品の販売を弊社従業員も行なうことになりました。このことにより、お客様のニーズや製品へのこだわりがよりいっそう進化するものと期待されます。

(6)製品における財務管理プロセス

品目ごとに販売するときの売り上げ・利益確保には自社の「製造原価表」を細かく作成しています。

製造原価の売上に対する比率は毎年前年度比1%減を目標としています。これは毎日の生産表と呼ばれる製造時間・製造数量・ロスなどが記載された表から算出されます。ここから導き出される原価や一般管理費を年度ごとに更新することで、実際の工数とコストが釣り合っているかを詳しく調査しています。価格管理については、最終製品が弊社の名前が表示されているものについて、厳しく管理しています。ある1社のもののみが市場で安価に販売されることのないよう弊社出荷最低金額を定めています。広告宣伝・販売促進については、顧客へのダイレクトメール、業界紙への広告、顧客への会議・勉強会の開催などを通じて行っています。

(7)アフターサービスの対応プロセス

製品の販売後のアフターサービス・メンテナンスについては、全製品の使用期限+1年の保存サンプルを自社内に確保することにより、顧客からのクレーム問い合わせや品質上の問題について迅速に対応できる品質保証課を自社に設置しています。また、消費者相談窓口をもうけて最終消費者の質問や相談に専門の薬剤師が電話にて対応を行っています。連絡先は製品のパッケージにわかりやすく表示されています。この結果は、製品ごとにデータベース化されアフターサービスの重要な情報として顧客と共有しています。  また、発売した製品について、顧客から売れ行き、改良点などを評価してもらっています。相手先仕様の製品については、クレームのあるたび原因調査を行い、報告書の形で原因・改善点などを顧客に開示しています。

(8)顧客への工場信頼性向上のためのプロセス

また、従来顧客には、弊社・工場を年1回程度の間隔で査察を行ってもらい、設備・書類・教育などGMPの観点で、改善が行われているかの評価をしてもらっています。これら上記のプロセスについては、そのつど顧客から意見をもらい改善するようにつとめています。顧客満足度調査については、それぞれの企業に年1回行なっています。ここでのクレームも個別に対応して満足度の向上に努めています。これらのプロセスの運営が適切であるかどうかは、それぞれの記録を顧客別に管理することで、確認しています。弊社の組織にとって基幹プロセスの有効性は、顧客別の売り上げという視点から確認することができます。弊社のサービスが不完全で顧客の満足を得られていないならば、売り上げが低下するからです。そういった顧客へは、なぜそのようになっているかを話し合うことで、原因の分析・改善を行っています。

(1)~(8)の目標の確認および展開は顧客満足調査や顧客との面談を通じて確認しています。既存の顧客に「万協製薬に仕事をしてもらってよかった。万協もこの仕事をやってよかった。」という委託側、受託側双方の満足度を上げることこそが、中小企業の規模である弊社の最大到達目標であるからなのです。この既存顧客との親密な関係の維持の先にクリーム剤製造、日本一という究極の弊社の目標到達があると考えています。基幹プロセスの見直し、改善・革新はビジネスコンサルタントと取締役員、経営幹部4名による経営会議、リーダーを含めた従業員研修会を通じて、逐次行っています。

6.2 支援プロセス
(1)支援プロセスの概要

弊社の支援プロセスは、直接製品の供給と接点を持たない業務を支援プロセスとし、その目的と役割の分担を明確にしています。

主要な支援活動は、営業や製造、品質管理の各部門の業務サポートや来客する顧客への接客、そこで働く社員の勤務や納税、企業年金の代行、健康維持などを円滑に進行するための業務です。これらの業務は主に、総務部が担当しています。現在、総務部は第一、第二工場あわせて5名と少人数で運営しています。

弊社の業務の中で、大半の連絡は電話、FAX、メール、各種郵便物などによって行われます。それらはすべて一度、総務部の窓口を経て処理されています。内容によって総務部が単独で対応するものと、他の部門と相談しながら処理するものとがあります。いずれにしても、総務部が、最終的には責任を持って対応しています。

また、経理部門、営業部門、製造部門の一部については外部委託のビジネスコンサルタント数社とコンピュータソフト会社に一部業務を委託しています。

(2)支援プロセスへの要望の把握

これらの支援プロセスの基本的な考え方や運営方法での一番大切にしている考え方は、「スピード」と「確実性」と「経済性」です。その理由は、顧客や弊社の各部門から上がってくる案件は、できるだけ確実に安価で短い時間で処理することを求められているからです。その活動、機能やサービス内容を企画・計画するときも考え方の順番としては、迅速、確実、安価の3条件が満たされているかを重視しています。各部門や顧客から上がってくる要求は総務部と経営幹部との話し合いを経て、仕組みの中に組み込まれます。

また、会社の中にあるコンピュータネットワークや「社長直行便!万協をもっと、良くしよう提案書」も情報開示や意見集約の際に活用されています。このとき、初めの段階で確認すべき情報としてはやはり各部門や顧客からの声です。顧客からの「基幹プロセス」への意見や市場情報、技術情報、自らが有している情報をとぎれなく通し各部署との連携を行うことで活用が容易となるよう努めています。

サービスに必要な要素を準備・用意するときに必要な情報は、それぞれの部署や顧客からの発信に頼っています。それぞれのプロセスの管理・改善、不具合の発見、問題の再発防止についてはそのつど、必要な場合に行っています。

(3)支援プロセスへの改善-より積極度を高める試み

支援プロセスが適切に運営されているかは、顧客満足度調査、外部からの電話の呼び出しコール回数、従業員満足度調査、顧客からのクレームの回数や返答までの時間などで、確認を行っています。支援プロセス自体が5名と少人数の実行によるため、運営については必要と思われる事項の発掘より依頼を受けて行うことのほうが、多いです。

2004年度からは、第一、第二工場と2拠点となったことから、スペースに余裕のある第二工場に支援プロセス本部を移し、第一工場には各部門からサポートメンバーを出してもらい対応しています。それぞれの工場にはイントラネットがいきわたっていますので、あらゆる情報が共通して活用できるシステムとなっています。

支援プロセスの仕事は、「出来て当たり前」と、認識されやすく担当者もつい、受身になりがちです。そのため、総務部では単独の「支援業務における気づきのある会議」を月1回行い、業務効率改善の提言を会社に提言しています。

支援プロセス実行責任者は、弊社の経営幹部と机を並べていますので、打ち合わせや決定に至るまで、スピーディで確実な対応が実現できています。今後とも少人数でスピード、確実性、経済性を兼ね備えた状態の支援プロセスでありたいと考えています。また支援プロセスは、実質上経営幹部もサポートしていますので、改善・革新については十分日々行われています。 最近では、支援プロセスの提案によって基幹プロセスの仕組みが変更になるなど、改善が全社に広がりつつあります。

6.3 ビジネスパートナーとの協力関係
(1)ビジネスパートナーの分類

弊社では、各業務ごとにメインとなるパートナーを選定しています。

弊社が外部に協力を仰いでいる仕事の会社は、次のように大きく8つに区分されます。

  1. 弊社製品の製造・品質・環境管理に必要な原材料の仕入れ先(約20社)
  2. 弊社製品の製造・品質・環境管理に必要な自社設備の仕入れ先(約10社)
  3. 弊社取扱販売品を製造しているメーカー(1社)
  4. 弊社に勤務する社員の福利厚生を目的とする会社(2社)
  5. 社外からの派遣人員を選定し、弊社に派遣する派遣会社(5社)
  6. 弊社の経理・納税事務のビジネスコンサルティング会社(2社)
  7. 弊社のコンピュータ情報部門のシステム会社(2社)、弊社製品や資料をお客様に届ける発送業務を委託している運送会社(3社)
  8. 大学など他の研究機関との研究業務を共同で行う研究委託会社(1社)
(2)ビジネスパートナーの選定基準

これらのビジネスパートナーの選定基準は、「最高の顧客満足を提供する。」という弊社の企業理念にかなっているかどうかということを、第一の選択条件としています。また、企業理念第5条にある「万協製薬は、独創性を持ち迅速・確実・安価・快適であることを最高の価値基準とする。」の条件を満たしているかどうかを重要視しています。そのため単に品質や価格の安さだけでなく会社業績、弊社担当としての姿勢や業務担当者の人格など多岐に検討を行います。

(3)ビジネスパートナーとの要求事項の伝達方法

ビジネスパートナーへの弊社が求めるサービス内容、品質、納期や価格、改善提案については、経営幹部会議、リーダー会議、従業員研修会などで話し合われ、それぞれの担当者から直接、電話、FAX、場合によっては相手の会社を訪問して伝えています。

仕事を迅速に進めるためにビジネスパートナーとの情報共有は重要です。弊社では、ビジネスパートナーとの話し合いには、部署の担当者を同席させています。よって、パートナーはより具体的に弊社の要求を理解できます。また、社外の資材担当ビジネスパートナーメーカー同士が直接連絡をとり連携して仕事を円滑に進めてくれるようにもなってきました。なかには、弊社顧客先に打ち合わせで訪問してくれるパートナーまで出てきています。

経営幹部は、すべてのビジネスパートナーの担当者に少なくとも3ヶ月に1回の割合で面会を行っています。このとき経営幹部自らが、自社の状況、考えについて語っています。

いわば、弊社にとってビジネスパートナーは社外社員なのです。ですから、短い期間での弊社担当変更には、意義を申し立てることがあります。それが、ビジネスパートナーにとって良いことにはならないことを話すようにしています。

(4)要求事項の達成度の把握・評価・改善方法

ビジネスパートナーの提案が、世間的に見て妥当であるかどうかを弊社は、常に知らなければいけません。そのためなるべく2社以上のビジネスパートナーに同じ提案をすることで、パートナー同士良い意味で競合させ、より良い成果を得られるようにしています。

弊社では、 お互いが共存共栄をはかるため、弊社ではパートナーに対して不当な値引きを要求することはありません。あらかじめ、パートナーには、弊社が見積もりを尊重することを伝えて、最初からベストプライスで交渉してもらえるよう伝えます。そうすることで、よりよい提案を相手からしてもらえることを弊社は、経験しています。

弊社の目指すべき主要なビジネスパートナーとの協力関係とは、「万協製薬と取引して良かった。」とすべてのビジネスパートナーから、思われることです。つまり「共存共栄の共闘態勢」こそが21世紀のコラボレーションだと考えているのです。

現在の姿が理想的な関係と考えていますが、折に触れて弊社への要望を聞く機会を個別に設けています。協力関係の見直し、改善・革新については、新しいパートナーにもできるだけ門戸を開くようにしています。新規の業者が訪問もしくは、こちらから調査して話をするときも積極的に会って話をしています。そのことで改善の礎を社内に入れるようにしています。

7.情報マネジメント

7.1 経営情報の選択と分析
(1)より早く、確実な経営情報の構築と改善

どのような戦略を立てても、それが的確な情報のうえに成り立ったものでなければ、絵に描いた餅と同じで役に立ちません。また情報はただ集めるだけでは生きたものになりません。情報の収集には、経営戦略に根ざしたテーマが必要です。よって情報の収集には、経営戦略との重要な関係が、根付くべきです。弊社では、経営情報の選択と分析について、弊社の業績が10年間で40倍の成長を遂げたことから、未来を読み取る、最重要ツールであると認識しています。そのため、弊社では、経営幹部の戦略会議において、必要とされる情報の収集計画を作り、より早く、より確実な情報データベースの構築に勤めています。

(2)各種情報の種類

①組織全体および各部門の業務能力情報について
内部情報について、会社全体としては総売り上げ、取引先別売り上げ、4つのジャンル別売り上げ、各製造ロットごとの製造原価、また、それぞれの利益などの経営指標については、毎月1回試算表という形をとって総務部が作成しています。製造部では、各製品ごとの不良率、製造ラインの稼働率、不良率、製造予定に対する進捗状況等を具体的な数字と金額で把握しています。品質管理部では、製品ごとの試験データ、試験にかかった時間、人件費、製品開発の進捗状況、顧客との打ち合わせのまとめ等を具体的な数字で把握しています。

②事業環境、市場情報などについて
外部情報については、民間の調査会社のデータベースにおける自社の比較という形で把握しています。また、人材や技術動向 については業界紙やデータベースを利用して各部門が、自らの判断で集めた物を各種会議や研修会で話し合って共有しています。競争相手は同じような医薬品を中心としたスキンケアアウトソーシングに特化した会社が、日本で数社しかありません。ですから、選択をせずともそれぞれの会社の動向については、比較的、業界内の情報網によって掴めることが出来ています。

③ベンチマーク企業情報
弊社のベンチマーク対象企業は、大きく分けて5種類に分類しています。

1.スキンケア製品の製造販売を自社ブランドで行っている企業 2.スキンケアで医薬品以外の化粧品などの加工を行っている企業 3.スキンケア以外の医薬品の加工を行っている企業 4.食品工場などの製造工程が近似している企業 5.その他の企業です。上記に競合相手、ベンチマーク先については、選択し、意識しているものの、企業業績や内容を資料によって、掴んでいることと、可能な場合はお互いに工場訪問をして相互に研究・分析を行うようにしています。また他業種ではあっても県内外の優良企業については、積極的にベンチマークを行ったり、受け入れたりしています。

7.2 情報システムのマネジメント
(1)各種情報やデータの分析・活用方法

集められた情報をいかに必要な人に提供するか、情報共有の仕組みや活用のしやすさをいかに実現するかが、企業力の差となります。そのため、情報システム全体をどのように管理するか検討を続けることが重要です。

弊社の医薬品アウトソーシング製造業という職業柄、顧客は必ず、定期的に弊社の工場見学と弊社の管理システムを書類や担当者による査察を要求してきます。

弊社は、2003年にビジネスパートナーであるコンピュータシステム会社に依頼して、「バンキョーイントラネット」と呼ばれる社内パソコンネットワークシステムを稼働させました。このシステムの導入は、ある顧客からの弊社への査察が、原因でした。その顧客は日本で最も大きな小売業のバイヤーだったのですが、「従業員教育訓練の個人別の記録を見せて欲しい。」との要求がありました。その当時、弊社は全体の教育訓練の記録しか持たず、それを見せたところ、個人別の記録がないこと、それがデジタル化されていないことが問題であると指摘を受けました。

最初弊社では、大会社らしい指摘なのだろうなと思っただけだったのですが、面接を担当した弊社社長の松浦は、その理由を聞いてみたのです。すると、「デジタル化されていない書類はないのと同じである。なぜなら、必要なときに必要な人間が閲覧できないと、書類は機能しないからである。」との回答を得ました。弊社では、その後もこの指摘について考え続けました。確かに弊社では、いろいろなマニュアル、手順書、標準書は何百冊もあるのにその書類は1冊しかなく、それらの書類は経営幹部のいる部屋のキャビネットに入っているだけでした。「本当にこれでいいのだろうか?」そういう疑問を抱えるようになった経営幹部が、そののち経営品質に出会いました。

経営品質では「エンパワーメントが必要」といわれます。日本語では、「情報公開による権限委譲」です。弊社経営幹部は、この言葉にいたく感銘を受け、情報システムの構築を始めることとしました。

「すべての書類をデジタル化しよう!」という社長の発言によって弊社の情報システムは始まりました。これが現在の基幹業務システムの基礎となっています。現在は、このシステムが発展し「バンキヨー基幹業務システム」となりあらゆる情報系管理システムが一体として管理、運用されています。システムはそれぞれの社員のコンピュータおよび携帯端末と接続されていて、新しい仕組みを迅速に改善することが出来るしくみを持っています。

(2)情報システム運用体制とセキュリティ

現在、新しく作られる書類は必ず「バンキョーイントラネット」に公開されています。もちろん、セキュリティが必要な書類については、あらかじめ決められた暗証番号を入力することによってアクセスができるようになっています。また、工場間の情報の伝達には、データ送信する際に情報を暗号化することによって外部からの侵入を阻止しています。会社内の情報や連絡がネットに載るようになり、誰がどのような情報を必要としているかが、以前より掴みやすくなり、それに対する情報の提供も容易になりました。ただ、あまりに情報量が増えすぎているため、より利用しやすい情報の体系化が求められています。従業員の社内で使用する携帯電話も会社が一括で管理して情報の漏えいを防いでいます。

情報システムを構成するハードウエア、ソフトウエアの選定や運用規則は、経営幹部と総務部の合同の話し合いで行っています。イントラシステムについては、年間数回のシステム会社との打ち合わせのなかで改善について話し合っています。また、保守契約を結んでおり緊急のサポートについても対応できる信頼関係が、システム会社と構築できています。情報システムには2社のコンピュータソフト会社のデータバックアップやシステムサポートを受けています。1社はこの業務システムをつくった会社、もう1社は、イントラネットを構築することで、システムをすべてのコンピュータに展開して維持管理するシステム維持管理会社です。セキュリティについては、経営幹部による情報倫理委員会を開き運用管理規定を定め評価・改善を行い情報の信頼性、鮮度保持、廃棄手段などの見直しも行っています。

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